77:近衛騎士団の影
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「お前らがこの周辺の村々を襲って人を狩り集めている連中か?」
外套を目深に被った俺は、目の前の男にそう尋ねた。
「なんだ、お前は? いつの間に現れたんだ?」
声をかけられて俺の存在に気付いた男が、怪訝そうな顔をして問い返してくる。
男の人相は悪く、また森の切れ間で切り株に腰かけて休息している奥にいる男たちも冒険者とは思えない風体をしていた。
「悪いが俺の質問に答えてくれるとありがたい。お前らがこの周辺の村を襲って人を狩り集めている連中か?」
「ああん? 外套を目深に被りやがって気味の悪い野郎だな? お前に答える義務はねえよ? さっさとここから立ち去りやがれ」
剣に手をかけた男が、俺を威圧するような目で立ち去るように促してくる。
やっぱり、こいつらっぽいな。
ディモルで上空から見つけた時は判断しづらかったけど。
人を運べそうな荷馬車も連れているし、人相も雰囲気もかなり悪い。
あとはあの荷馬車を確認してるシンツィアからの連絡次第か。
俺たちはデボン村で一夜を明かすと、人狩りをしている集団を探すため、数日かけて周囲の村をいくつか回って捜索を続けていたのだ。
そして今日、ついに森の中で休憩している怪しげな連中を見つけ、今は本当に人狩りの連中なのかの確認作業をしているところだ。
「おい、聞いてるのか? 怪我したくなかったら立ち去れ!」
奥で切り株に座って休憩している連中に俺を近づけさせないためか、男は俺の身体を突いて押し返してくる。
その時、荷馬車から飛んで出てきたシンツィアがクルクルとその場で旋回しているのが見えた。
当たりか。
村人たちがこの辺りには冒険者もあまり来ないと言ってたしな。
「悪いけど、お前らが俺の探していた連中らしい。すまないが捕えさせてもらうぞ」
俺がそう言うと、男の顔がスッと引き締まり剣を引き抜いていた。
「黙って立ち去っていれば死なずに済んだのにな。自分の愚かさを呪え」
男はそう言うと、手にしていた剣で素早く俺の頭部を刎ね飛ばしていた。
飛ばされた自分の頭部だった物が地面を転がっていく。
わりと剣の腕はいい奴だな。
あっさりと俺の首を刎ね飛ばしてくるとは。
俺は転がった自分の首を見て、相手の実力を見抜いた。
「おわっ! なんだ、こいつ! 土になったぞ――ぶふぅ!」
首を飛ばしたところで、身体の形が崩れ土塊となった俺に驚いた男の不意を突き、俺は背後から当身を食らわせて気絶させた。
意外とゴーレムは偵察に役立つようだ。
身体さえ隠せば、声も聴覚も視覚も共有できるしな。
俺は男を新たに作ったゴーレムに担がせ、後方で待っているノエリアたちに送り届けさせると、切り株に座って休憩している連中に向けて近づく。
見張りを立ててることで油断してるようだな。
これなら睡眠の魔法で一気に眠らせて制圧できそうだ。
休憩している連中は、下卑た笑い声をあげながら酒を飲んで浮かれている様子だった。
「いや、マジでこの仕事は稼げますね。あいつらを鉱山に届けたら数ヵ月は遊んで暮らせる金が手に入る」
「村の連中も黙って協力してれば大金が手に入ったのにな」
「あいつらが逆らってくれたから、オレたちが稼げてるんだろ。連中には感謝しないと」
「でも、あいつらは鉱山送りでしょ?」
「ああ、鉱山で大量の水晶を掘らされてる。それとは別にどこかへ連れていかれる連中もいるみたいだが、最近はそっちの方面に行くのはなくなったらしいぞ。問題が起きたそうだ」
酒の入った雑談の中で、中央に座るリーダー格の男から、これまで捕まえてきた村人たちの行く先を話し始めているのが聞こえてきた。
鉱山と別の場所は、鉱山に行ってた村人が証言してたもっと稼げる場所のことだろうな。
今は送られてないのか。
そっちは鉱山を占拠してる連中に聞き出さないと分からなさそうだ。
「まぁ、オレらには関係ないっすからね。人を集めてこいって連中に言われてるだけですし」
「ああ、そうだ。それにしても自警団も近衛騎士団の連中から頼まれたとはいえ、汚れ仕事をオレらに押し付けるとはな」
「この依頼って近衛騎士団経由なんすか? 自警団の連中が鉱山の連中に頼まれたって聞いてたんですけど」
「表向きはそういう話ってだけだ。鉱山を占拠してる連中は近衛騎士団から金を調達してる。つまりは鉱山の連中は近衛騎士団の手先ってことさ」
「マジっすか!? 近衛っていうと二年前にインバハネスの領主になったジャイル様が騎士団長を務めてるはずですよね。少なくとも鉱山の連中はもっと前からあそこにいたと思うんですけど」
「それ以上は詮索するな。命がなくなるぞ。オレらは汚れ仕事だけして金を貰えればそれで十分だろ?」
リーダー格の男はそれだけ言うと、まだ若い獣人の男に口を閉じるような仕草を見せていた。
近衛騎士団が関わってきてるのか……。
鉱山の連中とジャイルは長い付き合いとなるのか……。
それとも、近衛騎士団が付き合ってきたのか、どっちだろうか。
にやけた顔をしてアルフィーネを見ていた大貴族である男の姿を思い出すと、どうしてもこんな大それたことをしでかす人物とは思えなかった。
でも、インバハネスの近衛騎士団が関わっている気配があるのは確認できたな。
アビスウォーカーの捜索のつもりが、えらい事件を引き当てたかも。
けど放っておくわけにはいかないんだよな。
ある程度情報収集を終えた俺は、まだ酒を飲んで騒いでる連中に向け、魔法を唱えることにした。
『眠りを誘う雲となり、周囲に発現せよ。睡眠の雲』
薄い雲が切り株に座って休憩していた連中の周囲に広がると、眠って意識を失った連中がバタバタと地面に倒れていった。
その後、俺が倒れた連中を捕縛し終えると、ノエリアたちも到着し、荷馬車に捕らえられていた村の人たちを救出することに成功した。
宣伝ばかりで本当に申し訳ありませんが、できれば多くの方に書籍版が出ることを知って欲しいので後書きスペースだけはお許しください。
特典付きの対象店再掲しておきます。
店舗特典付き
店舗特典は3000字のSSが付きます。
アニメイト、虎の穴、ゲーマーズ、メロンブックス、COMIC ZIN秋葉原店で付く予定です。
アニメイト、虎の穴、ゲーマーズ、メロンブックスでも『付く店舗』と『付かない店舗』があったりなどするみたいなので、必ず店舗にて特典SSが付くのか確認してからご予約して頂ければ幸いです。
多大なる応援を頂いているWEB版同様、書籍版も皆さまと一緒に作品を作っていければと思っております<m(__)m>







