4 初めてのパーティー仲間
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「え……?」
クエストを終え、ギルドに報告の為に戻ると、そこには別れたばかりのマイクとパーティー仲間が待っていた。
いや、表情を見るに待っていたのはマイクくらいだろうか。
失礼だとはわかっているが、私はマイクのパーティー仲間をみてげんなりとした。
マイクのパーティーはマイクも含めて四人いた。
一人は当然マイク。そして昔からマイクの面倒を_同い年の為その表現もどうかとは思うが_見ていたリクスに、残る二人は女性。
エルゼとフィナという女性だ。
別の町から越してきたのか、この二人は私にとっては本当に初対面だ。
それにしてもリクスは成長してもマイクと一緒にいるのね。
パーティーとしても一緒だということに驚きながらも納得する。
「あの、私が本当にパーティーに入ってもいいの…?」
ちらりと、今もなお私を睨むフィナという女性に視線を向けながらマイクに尋ねると、マイクはにっこりと笑った。
「ああ!皆快く承諾してくれたんだ。早速手続きしよう!」
絶対“快く”承諾してないよね!?
ウキウキと受付に向かうマイクの後ろで、はぁとため息をつき頭を抱えるリクスと、私を睨みつけるフィナに私は内心叫ぶ。
ちなみにパーティー間の事情をあまり深く考えていないのか、もう一人の女性であるエルゼは私に対してにこやかに微笑んでいる。
個性豊か過ぎじゃない?
「……ねぇ、ちょっと」
私はリクスの腕を掴み、女の子二人から距離を取った。
マイクは私のパーティーへの加入の為受付と話をしている状態なので、リクスと一対一で話すにはいいタイミングでもある。
「本当に”快く”承諾したの?」
こそこそと内緒話するようにリクスに尋ねると、リクスは首を縦に振る。
「え、なんで?だってあのフィナって子、マイクのこと好きでしょう?なのになんで私の参加にオッケー出すの?」
私は不思議だった。
マイクとフィナって子がどれぐらい進展しているのかまではわからないけど、あそこまで私に敵対心を向けているのだ。
まだ片思い段階なのだろうと推測すると、新しい女性で、しかも過去に交流のある女性の参加なんて絶対に嬉しくないだろう。
いや、全然マイクに恋愛のれの字も持ってないことは確かだから、そこは本当に誤解してほしくはないけどね。
「あいつ、マイクにお願いされたことは拒否しないんだ…」
「……」
そこは反対しなさいよ。
私の顔に書いていたのか、リクスが続ける。
「俺もパーティーの雰囲気が悪くなることは避けたかったが、フィナも受け入れた手前、それを理由に拒否するのが難しくてな。俺自身、小さい頃だけどお前のことは知ってるし、だから尚更反対することは難しかった」
「そこは…嬉しいけど」
流石にリクスとも幼馴染だった私としては、拒否されるより受け入れてくれた方が断然嬉しい。
だけど人様の恋愛事情に巻き込まれたくないというのも事実。
「おい!サラ!こっち来てくれ!お前のサインが必要なんだ!」
リクスと話していると受付にいたマイクが私を呼ぶ。
どうやらパーティーに参加するためには私のサインも必要らしい。
「巻き込んですまないな。でもサラが嫌じゃなかったら俺たちとのパーティー、考えてみてくれ」
リクスにそう言われ、結局私はマイクたちのパーティーメンバーとして加わることが決定したのだった。
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「サラはまだFランクなんだな」
手続きの際、私のランクを確認したマイクがそう口にすると、フィナが嘲笑うように笑う。
その反応はどうなの?と思いつつも、私はマイクに対して気軽に答えた。
「昨日冒険者登録したばかりだからね。
でもあと何個かクエストクリアできたら、ランクが上がる筈だよ」
Bランクまでは依頼の達成数と成功率、そして累計報酬金額によってランクが変化する為、私はあと二、三個かな?と指を曲げながらランクアップ迄のクエスト数を教えると、マイクが驚きながら質問する。
「え!?Fランクってクエスト内容も報酬もしょぼいだろ?なのになんでそんなに早いんだ?」
「ポーションを買取してもらってるからだよ」
「ポーション作れるのか?!」
何故か目をキラキラさせて体を近づけさせるマイクに私は後ろに後ずさりながら頷いた。
興奮するのはいいけど、フィナの視線が痛いんで近づかないで欲しい。
そう口にするのは不味そうなので、私はマイクから距離を取るだけにしておいた。
「うん。学園で習うからね。アラさんにもランクを上げたかったらポーションを納品することをお勧めされたし」
でもポーションの納品だけでランクは上がらない。
累計報酬金額が基準点に達していても、決められたクエスト数の依頼を達成していなかったらランクが上がらないからだ。
アラさんに教えてもらったことだけど、最初の頃にはランクアップのための依頼達成数は多くはなく、反対に累計報酬金額の基準点が高い。
これは未熟な冒険者たちの安全性を守るための処置として決められており、冒険者として成長していくと今度は依頼達成数の基準値が大幅に増えていく。
最後のSランクで国王の承諾を得るほどまで基準点が高められているために、Aランク以上の冒険者にはより多くを経験してもらいたいというギルド側の配慮なのだ。
「へぇ、サラがいればポーションに困ることはないってことだな!」
へらりと笑ってマイクがいうと、リクスがそんなマイクの頭を叩く。
「いてっ、なにすんだよ」
「人を搾取しようとすんな」
「してねーだろ」
「そんな風に聞こえた」
「なら何て言えばいいんだよ」
リクスは少し考えると口を開いてマイクに答える。
「“俺にも教えてくれないか?”だな。勿論他人に知識を教えることになるから、サラにメリットなんてないが…」
「メリットとか気にしなくていいよ。ポーションがあればその分助かる人もいるのは事実でしょ?
それにポーションの買取価格も結構いい値段だからね。覚えておいて損はないよ」
「なら教えてくれ!ポーションの作り方!」
目を輝かせるマイクに私は「わかった」と承諾すると、マイクだけではなく他のメンバーの表情も明るくなる。
(あ、意外とイイ感じかも……)
フィナとの仲がどうなるのか不安だったけれど、この調子ならこのパーティーメンバーとしてやっていけそうな気がしてきた中でマイクが言う。
「でもさ俺たちDランクパーティーだから、サラもFランクのクエストだけじゃなくDランクのクエストまで受けられるようになるぞ」
「それはめちゃくちゃ嬉しい」
不安とか言っている場合じゃなくて、是非ともこのパーティーに溶け込まなければと決意した瞬間だった。




