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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
134/253

25 卒業試験④






『ー以上だ』


名を呼ばれたものは喜び、名を呼ばれなかった者は絶望、もしくは怒りをあらわにしていた。

だからこそ納得いかない人たちは先生に苦情を申し立てるために前に出る。


「先生!どうして僕は不合格なんですか!?僕は沢山倒しました!一体何故!?」


そうだ!理由を!と納得できなかった生徒たちが先生に声を荒げながら不合格の理由を求めていた。


ちなみに不合格判定された中にAクラスにはいない。

私もクラスの皆も皆合格である。

みんな優秀だね!


そして不満の声を上げている生徒の中に、知っている顔の生徒がいた。

他の生徒の手柄を横取りしていたずる賢い人。

それを悪いと思ってないのか、私を睨んできたあの人だ。


不満の声を口にする生徒達を、先生は無表情に見下ろした。


『わからないか?』


「はい!」


先生の問いに即座に返す生徒をみて、先生は深く息をつく。


『簡単な話だ。この卒業試験はポイント制ではない。俺たちは生徒の”戦う姿勢”をみていた』


先生は私達生徒を見渡して、そしてゆっくりと話す。


『殆どの生徒は魔道具、オートマトンに対して臆することなく対応していた。だかその一方、他の生徒の”おこぼれ”を預かる者、そして己の安全のみを優先させた者がいたことも事実』


心当たりがあるのか、先ほどまで不満を口にしていた生徒はびくりとわずかに体を揺らす。

だがそれも一部の生徒で不満を口にしたすべての生徒ではなかったことは残念に思う。


「でも!先生は特大サイズのオートマトンから逃げろと言ってましたよね!?」


別の生徒が叫ぶ。


『確かに俺は特大オートマトンには逃げてもいいと言った。

だがそれは周りも避難している状況での話だ。

それに他人の“おこぼれを預かる行為”も悪いことだとは思わない。

見方を変えれば、取りこぼした処理をしていただけだからな。オートマトンでも本物の魔物でも、確実に倒したことを確認できるまで油断してはならない。

さて、話を戻すか。

お前たちはこの学園を卒業したら、どんな職に就こうが他者を守れる力を身に着けていることは確かな事実。

しかしどんなに強くなったとしても脅威を感じれば逃げたくもなるだろう。

だからこそ俺は逃げてもいいと告げたが、それでも今まで共に歩んできたクラスメイトに危機が迫っていた時、お前らは何をしていた?

脚がもつれた生徒に駆け寄り手を差し伸べたか?怪我をした生徒に治癒魔法を施したか?

しなかっただろう。ポイント制だと匂わせたのは俺だが、それでも自分本位ではない、周りに目を向けた行動をとってくれるかを、俺たち先生は期待していたんだ』


先生は一度言葉を区切り、はぁと息を吐き出した。


『以上の理由により、お前たちは合格に値しないと判断した』


以上だ、と終わらせる先生に今度は声を上げる生徒はいない。

それどころか顔色を悪くし俯いている。


この卒業試験は生徒や生徒の両親だけではなく、騎士団などからのスカウト目的で来ている人が多くいるからだ。

そんな人たちの目があるこの場所で、不合格の理由をはっきりと告げられてしまった。

勿論当人の問いに先生は答えただけだが、それでも今後の将来を大きく変えてしまったことを自覚したのだろう。


『じゃあ次は試合に進む生徒の発表だな!』


先程とは打って変わって明るい口調で話す先生に、生徒たちから緊張がほどけ肩の力が抜ける。

うんうん。先生はこうじゃないと。


『じゃあ魔法科Aクラスから、ヴェルナス・レルリラ、サラ・ハール……__』


ポイント制とは言ってもクラスごとで名前を発表した先生に、属性ごとではなかったのだとわかった。

そして先生が読み上げた名前には私の名前も挙げられていて、思わず小さく拳を握る。

やった!と私は歓喜した。


そして先生が試合に薦める生徒の名前を発表し終えた後、一度休憩を挟むことになった。








「やったじゃない!サラ!」


卒業試験で使う闘技場では授業で使っていた闘技場とは違って、待機場所みたいな広い空間の部屋があった。

そこに移動してきた私は、レロサーナに祝福される。


「うん!これでレルリラと戦える!」


瞳に火を灯す様に意気込みながら答える私にレロサーナは苦笑した。

そして「これが最後のチャンスだからね」とエステルが告げる。


そうこれが最後のチャンス。

レルリラと本気でぶつかったのは二学年の時だけで、それ以外は本当に授業の一環だった為に本気でぶつかり合った事なんて全くない。

それにこういう機会でもなければ、レルリラは私を“監督”する立場としてしか接しないから、戦おうとなんてしないのだ。


(レルリラにも知らないところで、密かに風と火属性魔法を学んできた私の真の実力を見せてやる!)


ウヒヒヒと笑っていると、次の試合に進むのが嫌なのか、肩を落としたマルコがやってきた。


「俺は戦いたくない…」


「なんで?」


「嫌だろ」


あんな化け物じみたレベルのやつ…と顔を引きつらせながら答えられる。

化け物って……。クラスメイトに対してなんて言葉を使ってるんだこの男は。


「てか対戦って一対一かな?」


「トーナメント戦とか?」


「それならどうかレルリラとは戦わなくてもいいように組んでほしい!」


そんなことをマルコに続けてやってきたキアとサーが言う。

こいつらどんだけレルリラを怖がっているんだと、私は目を細めて三人の様子を見ていた。


「じゃあ、応援しているから頑張ってね」


「負けたら慰めてあげるからね」


そういって私を激励した二人に私は笑顔を浮かべて頷いた。


「絶対勝つから私の勇姿をちゃんとみていてよね!」




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