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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ブレメーンシリーズ

1週間前、ドンブラ湖のちょうど真ん中で起こった出来事について

作者: NiO
掲載日:2020/04/20

 さて、王よ。


 貴方は今、『最期に何か言い遺すことがあれば、言ってみるがいい』とおっしゃった。


 『何かひとこと』ではなく、『言い遺すことがあれば』と。


 つまり私に言い遺すことがあれば、無限にしゃべり続けても良い、ということだな?


 ハハハ、もちろん無限にしゃべり続けるつもりなどはないさ。


 私はこう見えて口下手でね。


 ホラ、魔女ってのは、基本的に引き籠りだからさ。


 他人とまともに会話したのなんて、今回を除けば、もう何千年も前になるんじゃあないかな?


 なあんちゃって、ジョーク、ジョーク。


 魔女のジョーク、魔ジョークさ、大爆笑だろ? アハハハハ!


 おおっと、話が飛んだようだ。


 えーっと、どこまで言ったっけ……そうそう、『無限にしゃべり続けるわけじゃない』の下りだった。


 そりゃあ、無限にしゃべるワケじゃないけどさあ。


 ただね、こっちだって、言い遺したいことは、たっくさんあるんだ!


 時間にすると、そうだね、多分、10分か20分、もしかしたら30分くらいになるかな。


 長いけど、ちゃあんと、喋らせてくれる、と。


 王様、そう言う事だね?


 うん?


 よし、言質は取ったよ。


 それじゃあ、話させてもらおう。


 さあて、私の斬首刑見たさに集まった賢明なるドンブラ国国民の皆様!


 私は、裏の森の最奥に棲む、魔女である。


 ドンブラ国とは、浅からぬ縁があってね。


 50年前、この国にぐるりと巨大な防壁を作ったのは、私だ。

 40年前、疫病から国を救ったのは、私だ。

 30年前、国の大半をしめる毒土を栄養たっぷりの腐葉土に変えたのは、私だ。

 20年前、不治の病にかかった王妃を治療したのは、私だ。

 10年前、大量発生したイナゴを滅ぼしたのは、私だ。


 そして今年、干ばつに苦しむドンブラ国に、雨を降らせたのは、私だ。


 大いに感謝されて、しかるべきじゃないか?


 もちろん、タダではない。


 毎回、対価を貰っている。


 今回は、1億ゴールド出すなら雨を降らせる、と王に話をし。


 王は『雨を降らせることができたなら、1億ゴールド出す』と約束をしたんだ。


 なのに王と来たら、約束通り雨を降らせたのにも関わらず、やれ『たまたま偶然降っただけだ』だの、やれ『金額が高すぎる』だの。


 結局『詐術を使い、人心を惑わせた罪』とやらで、私はこうして、斬首刑にされようとしているわけだ。


 ……なに?


 『確かに助けてくれたのはありがたいが、いくらなんでも値段が高すぎる』、だって?


 ああ、賢明なるドンブラ国国民の皆様!


 言っておくけど、私、魔女の中ではゲロ甘に優しい方だからね!


 だって、魔法の対価が、ただの、お金だよ?


 呪いもかけないし、命も取らないし、人間を小鳥にしたりもしない。


 ドンブラ国には少なからず思い入れがあるから、お金を取るだけにしてあげてるんだ。


 それを……ぐあッ!



 ちょ……なんだよオイ、人が話している最中だぞ、勝手に斬りつけるなよ。


 ああん?


 私の首が斬れるわけないだろ、魔法で硬くしてるんだから。


 どうしても斬りたければ、この首と同じ太さの鉄が斬れるヤツを呼んできたら良いよ。


 

 なぁ……あのさぁ、王よ。


 さっき、言い遺したこと、喋っても良いって、言ったよね?


 また、約束破るのか?


 まぁ、良いや、斬首したくたって、この辺の兵士では無理だからね。


 私は私で、勝手にしゃべらせてもらうさ。


 さて、どこまで話したっけ……ああ、そうそう、『魔法の対価が高い』のところだったね。


 だってさぁ、雨を降らせるのって、要は、餓死から多くの人々を救ったってことだぞ?


 あったりまえじゃん、高いのなんて!


 いや、1億ゴールドっていうお金にしてもさぁ。


 ホントのこと言うと、手間賃すら取ってない、ボランティアなんだよ?


 今回、雨を降らせるのに集めた材料は、モチロン無料(ロハ)じゃない。


 いくつか挙げていくと……えーっと……ペンギンの風切り羽に、カエルの臍のゴマに、ホヤの手足に、アノマロカリスの肉片に……。


 つーか、ぶっちゃけ、アノマロカリスの肉片だけで、末端価格1億ゴールド余裕なんですけど!


 2億取っても、余裕で赤字ですわ!


 私ってば、マジでゲロ甘すぎ!



 ……さて、というわけで、私がなんでこんなに怒っているのか、賢明なるドンブラ国国民の皆様は、理解してくれたかと思う。


 そして。


 当然私は、おとなしくここで殺されるつもりは……ぐえッ!? 


 ……。


 ……。



 ……うっわー……えー……すっごい……マジで驚いたわ。


 まさか本当に、斬鉄できるヤツがいるなんて、なぁ。


 ああん?


 なんで死なないかって?


 首を落とされただけで死ぬわけがないだろ?


 私は魔女なんだぞ?


 ったく、毎回毎回、話の腰を折ってくるなよ、なぁ、王様?


 ……おいおい、どうしたんだよ、そんな青い顔をして。


 まさか本当に、『ドンブラ国の森の魔女』を殺せると思ってたのかい?


 なるほど、これがキングのジョーク、ジョーキングか、大爆笑だね、アハハハ!


 ……さてと、何を話そうとしてた(・・・・・・・・・)んだっけ。


 ああ、そうそう、思いだした(・・・・・)


 そんなわけでさ、流石の私も、この国に、ほとほと愛想が尽きかけていたのよ。


 だから、ちょっと、こんな復讐を、考えてみたんだ。


 せっかく、今回の魔法を使う材料でペンギンの風切り羽に、カエルの臍のゴマに、ホヤの手足に、アノマロカリスの肉片なんかが余ったからさ。


 この国に、大雨を降らせてやろうとおもっていたんだ。


 まずは魔法で防壁の門を固く閉ざす。


 国の外へは一人も逃がさない。


 そんな状態で、海をひっくり返したような大雨を、七日七晩降らせよう。


 雨だけじゃ、つまらないかな。


 (あられ)に、(みぞれ)に、雪崩(なだれ)も降らせちゃおう。


 溺死なんて、生ぬるい。


 この国にある固形物質は、欠片も残さない。


 家も。

 田んぼも。

 城も。

 王も。

 防壁も。

 そしてもちろん、賢明なるドンブラ国国民の皆様も。


 一人残らず、一つ残らず。


 みんな仲良く、藻屑(もくず)に、なるんだよ。  


 

 ……なあんちゃって、ね。


 そうは言っても、やっぱり私はこの国に思い入れがあるし、多分世界で一番ゲロ甘な魔女だ。


 私の条件を聞いてくれれば、今回のことは、全部なかったことにしてあげようと。


 そんなことを、考えていたわけだ。


 フフフ、どんな条件か、聞きたい?


 それはね。




 私の罪状を取り消して(・・・・・・・・・・)斬首をしない(・・・・・・)、というものさ。




 ……ん?


 どうしたんだい、王も、国民も、皆でぽかんとして。


 え、既に、私の首と胴体は、離れているだろう、って、言いたいのかな?


 あ、ちょっと、何か勘違いがあるみたいだから、言っておくね。


 私、言ったじゃん? 


『……さてと、何を話そうとしてた(・・・・・・・・・)んだっけ。


 ああ、そうそう、思いだした(・・・・・)』って。


 うん。




 斬首される前は(・・・・・・・)、『私の罪状を取り消して(・・・・・・・・・・)斬首をしなければ(・・・・・・・・)復讐は行わない(・・・・・・・)って思ってたのさ(・・・・・・・・)


 『斬首される前は(・・・・・・・)そんな話を(・・・・・)するつもりだったなぁ(・・・・・・・・・・)って(・・)思いだしたんだよ(・・・・・・・・)



 ……ん?


 まだ分からないって顔をしている人もいるね。


 まあいいや。


 それでは、賢明なるドンブラ国国民の皆様に、最期に(・・・)教えておこう。




 今から、1週間後。



 つまりは、来週に。



 この場所にあるのは(・・・・・・・・・)国ではない(・・・・・)





 おおきな(・・・・)おおきな(・・・・)……湖だ(・・)

ホラーいろいろ書いております


短編 赤い救急車が、来た話

https://book1.adouzi.eu.org/n3674fq/



中編 ようこそ裏野パークへ!

https://book1.adouzi.eu.org/n9433ec/


中長編 ブレーメンの屠殺場

https://book1.adouzi.eu.org/n9431ct/

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― 新着の感想 ―
[良い点] クビチョンパされたら死ぬでしょうねぇ、普通。魔女ってすげぇや。
[良い点] ドンブラ湖の名前。読み終わった後に温度差で風邪引きました。 [一言] 怒らせちゃったかぁ………。 このあと反乱とかされたりして大いに荒れるだろうけど、王様、ドンマイ!
[一言] いやはや、何度も国を救ったのに斬首とは...。 魔女様が不遇すぎてちょっと涙出てきた。(;ω;) でも、最終的に丸く?おさまってよかったです。 今回も面白い作品をありがとうございます!
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