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23 ウン十年ぶりの受験でしたー筆記編ー

騎士学校はジュドール王国の武を担う、若手高級幹部を養成する学校だ。11歳で受験し、合格すると、いきなりハードな学校生活にスムーズに馴染むように、入学まで学校から渡されるガイドに沿ってそれぞれ自主鍛錬し、13歳で入学。4年間学び、17歳で卒業。卒業後はそれぞれの希望や特性によって軍や近衛隊、警備隊、治安隊等に配属され、いきなり小隊長だ。


5歳の魔力検査で〈上級〉〈普通級〉判定だったものはほぼ100パーセント魔法学院に進学するので、騎士学校はほぼ〈魔力なし〉100パーセント。なぜ「ほぼ」か?それはイレギュラーな私の存在と、魔力検査後に魔法を覚醒するタイプがたまーにいるからだ。ヒロインもコレね。もし私が魔力持ちだとバレたら、この設定で行こうと思う。私は女優!



〈魔力なし〉であっても少しでも優秀な人材を取りたいってことで、騎士学校は平民ドントコイ!受験も合格後の生活も基本タダ。


なもんで今年の受験も体力自慢の子供たちが国中から集まってます。そんななかの一人が私。騎士学校は王都の西部の海岸沿いにある。タイムテーブルは午前筆記、午後実技。


「セレフィーちゃん、そんな固くならないで?いつもどおりで大丈夫よ」

卒業生であるおばあさまが付き添いだ。


「だっておばあさま、ペーパーテスト対策全然してくださらなかったんだもん。こーんなにたくさんの人が受けるのよ?絶対私よりも賢い人50人いるわ…………」


今年の定員は50人だ。

「セレフィーちゃん、ちゃんと身についているから大丈夫よ。ふふふ、おばあさまを信じなさい」

「でも……お前みたいなバカが来るな!場違いだ!って視線をビシビシ感じます」

さっきから私、すごく指さされたりヒソヒソ噂されてる、くすん。みんな同じ〈魔力なし〉だからそれでバカにされる訳ないし。


「うーん、場違いではあるわね。こんなカワイイ女の子がどうして?って思ってるのよ。試験の結果で皆手のひら返すわよ」


私が小さいってこと?毎日ミルク飲んでんのに……やっぱルーが頭に乗っかるから背が伸びないんじゃないの?


『ケーキの食べすぎじゃないか?セレ、野菜も食べないと!』


ああん?お前だけには言われたくねーなー!


『エルザ』

幻術バリバリ被ってるルーが一声かけてサッと私からおばあさまの肩に飛んだ。さすがに試験会場に付いてはこない。勘のいいおばあさま、聞こえないものの呼びかけられたと認識し、肩を選ばれ感動で目が潤んでる!


「ルー様!光栄です!うううっ……」

えー!肩乗りルーが泣くほど嬉しいの?待ってる間、お菓子クズでドレスザラザラになるよ?

なんか一気に緊張が解けた。


「では、行ってきまーす!」

「セレフィオーネ、健闘を祈りますよ」

『セレ!冒険者への一歩だ!頑張れ!』

そうだ、私の夢を掴まなくちゃ!


私はこくんと頷き会場に入った。




指定された席につき、そっと会場を観察する。うーん。やっぱり女子は1割ってとこか。まあ魔力もないのに国防に就こうって女子が思う世界観じゃないからしょうがない。魔力があれば別だけど、女性の仕事は家庭で家事か、平民なら商売くらいしかパッと思いつかない。こんな自由させてくれてるお父様に感謝だ。


「おい!」

「はい?」

急にとなりの男の子に声をかけられた。


「お前お貴族様だろ?」

「まあ、はい。」

まあ、ちょっと身なりがいいよね。今日は白シャツにラッキーカラーのルーの青のスカート。華美ではないと思うんだけど浮いてるのかな?実技でズボンに穿き替えるために女性の服がワンピースしかないこの世界をトップスとボトムに分けたのはこの私よ!オホホホ!


「〈魔力なし〉だからって騎士学校遊びで受けるなよ。迷惑だ」


えっと……この私が冷やかしで騎士学校受けてるって言いたいの?

…………このクソガキぃ!こちとら()()()ための唯一の選択肢として、この八年血反吐吐きながら鍛錬してんだぞ?こらあ!?


決めた。そういう目で周りが見てるとわかった以上、もう遠慮しない。全力で行く。悪目立ちしないようほどほどに作戦消えた。ラルーザ式、力で組み伏せろ作戦で行きまーす!


「お気を悪くされたのならごめんなさい。でも、お互い頑張りましょう?」

私は彼に手を差し伸べた。

「お、おう」

彼はポッと頰を赤らめて私の手を握る。


さんはい!

ギュッーーーーーー!

「ギャーーー〜!」


握力70パーセントで握りしめてやった。利き腕じゃないほうにしてやったんだから感謝してね?


私はにっこり笑って筆記具の準備をした。



◇◇◇



ペーパーテスト、結局おばあさまのおっしゃる通りだった。


数学と物理もどきは大砲の着弾距離の計算や、角度の設定。戦闘の規模による兵站の量を求めるものが多く、前世の中学レベルの公式で解けた。


生物と地理もどきは実地で家族に知らず知らず叩き込まれていた。人間の急所、救護法、山のどの辺りに陣を張るのがいいのか、その理由。国内の地形、各地方の天候と土質。我が家の演習で繰り返し繰り返し検討し、既に使用中の知識のみ。


おばあさま、お父様、お兄様、最後に道真公、ありがとうございます!庭に梅の木植えて奉ります!


私は綺麗に二礼二拍一礼して、マツキさんの(おじょうさまガンバ!)とケチャップで書いてある合格弁当カツ多めを食べて、実技に備えた。







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― 新着の感想 ―
[一言] 出てこないのにマツキさんがいい人すぎるww
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