93.王様の3本目の角を持って行ったのは……君だったのね!
碧色の地底湖は、ランプが入口にしかない事もあって、どこまで続いているのかわからないけれど、かなり奥行がありそうだ。
湖畔から、湖の奥に向かって白い橋が架けられており、橋の先には白い祠がある。
橋を渡り祠に近付くと、祀られている白い大理石で作られた石像が、赤い女神様とそっくりだと気付く。
「これって……」
「「女神様だよね」」
猫耳娘達のピアスから、赤い煙がふわりと舞い上がり、お馴染みの女神様の姿になる。
(この場に来るのは……久しいの)
美の女神様に助けられて、出来たばかりのキプロスの町にたどり付いたお祖父さんは、初代の領主様にかなりお世話になったらしい。
産まれたばかりの赤子を抱えて途方に暮れていたので、大層恩義に感じていたらしい。
領主様の助けもあって、町で工房を構えつつ、鍛冶に必要な材料を探してであるく内に、この洞窟を見つけたらしい。
幻想的な地底湖を見て感動し、お導き下さった女神様の祠を祀ろうと思ったそうな。
出来上がった女神様の像を初代領主様に見せたら。
あまりの美しさに、ひとめぼれした領主様は、この祠に日参し祈りを捧げ続けて。
あわれに思った女神様が自身の分身体を作り、赤い煙な女神様を遣わした……という経緯らしい。
「お祖父さんと、産まれた男の子は今どこにいるのですか?」
「爺さんは、寿命でな。ドワーフは長命ではあるが、エルフのように不死に近いわけでもねえからな」
「……そうですか……」
「産まれた男の子……俺の親父――は事故でな」
孤独で人嫌いなルフェさんの半生を慮って、皆が無口になる。
「お袋は、キプロスの町の娘でな。混血児の苦労を身を持って知っているから、恋愛なんざしねぇと突っぱねる親父に、押しかけ女房になるような、太っ腹なひとだったんだが……」
なんと声を掛ければ良いのか判らないので、口をつぐむ私達に構わず、ルフェさんの独白は続く。
「俺は双子でな。妹がいるんだ。妹はエルフ側の血が濃く出ちまったみたいで、魔力は強いわ見目の美しさが尋常じゃないわで、町で目立ちすぎてなぁ……」
「なんどか外から来た行商に連れ去られそうにもなったりで、お袋と三人でエルフの森へ行ったのさ」
「人間避けの結界にな。何度弾かれても向かっていくお袋の熱意に負けて、妹とお袋だけ森に住む許可が下りたんだ」
「もしかして、おっちゃンの妹ってフローラ?」
「ん? なんでカイが俺の妹の名前を知ってるんだ?」
「だって、俺が町でお金稼ごうとしてたのって、フローラに贈り物したいって言ってた友達の為なンだ」
「身ぐるみ剥がされてお宝も奪われた……とか云ってたな。お宝ってなんだ?」
「ユニコーンの角だよ~」
フローラさんは”混ざりもの”と云われて、エルフの里から少し離れた所で一人で暮らしているらしく。
カイ君のお友達のエルフの男の子は、お母さんに連れられて森に来たフローラさんに一目惚れをして、なんとか仲良くなったが……。
お母さんが寿命で無くなって消沈しているフローラさんに、昔聞いた欲しがっているものをプレゼントしようと考えたらしい。
人里でしか入手できそうにないうえ、出来たとしてもかなり高価な物なので、まずはお金を手に入れる為に……と、一計を案じた結果。
最近エルフの森で時々姿を現すようになった、ユニコーンの角を人里で売りさばく事を思いついたらしい。
カイ君が、売りさばく役をかってでて、そのお友達がユニコーンを誑かす役をしたという事だった。
「王様の角、もって逃げたのはアンタなの?!」
「うン? あのユニコーンって王様だったン?」
「でも、王様は不思議な香りのする乙女って云ってたわよ?」
「あ、うン。そいつさ、姉ちゃんの脱ぎたての服を着てたら、姉ちゃんの残り香でユニコーンを騙せるンじゃないか? って云っててさ。これが、大成功!!」
王様……。
眠くならないのに、寝たふりまでして角切り取られて……。
男の子のひざまくらだった、って知ったら……。
また女王様の電撃攻撃しこたま貰えそうだね……。
ヒビキが苦い半笑いの顔で尋ねる。
「身ぐるみ剥がされた時にさ。 その、エルフのお友達に相談しに行かなかったの?」
「いやぁ~。行ったんだけどさー。取り戻すまで顔見せるなー!! ってエライ怒られちゃったンだー」
……そりゃ……怒られる……よねぇ……。




