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81.最後の一体

「女神様、僕達は町を出た後しばらくダンジョンに籠りますが、良いですか?」


 アベルさんが大事な確認をしている。

 ヒビキが次に行くのは、王都か『賭博の街』のどちらかだろうから、色々見て回りたいって女神様のご要望は叶えられそうだけど。

 魔物がわんさか出てくるダンジョンって……観光には不向きだよねぇ……。


(かまわぬよ。人以外の生き物を見られるのも楽しそうじゃしな)


 ミアちゃんとソラちゃんが顔を見合わせて、こくりと頷きあい、屈託のない笑顔を向けた。


「「女神様、よろしくね!」」


(か……可愛い!!!)


 おでこに手の甲を当てて、くらりと仰け反る女神様。

 ちょっと感情の起伏が激しいけど、滅多に宝石からでて来ないのなら、大丈夫……かな?


「では、女神様。最後の一体がどこにあるのか教えて頂けますか?」

(よかろう。町の南東にある工房じゃよ)


 露天風呂に入浴件修行をしに行くときに、いつも見えてたあの家かと、すぐにピンと来る。

 タローさんのおばさんのお店で売ってなかった、鉄製のフォークや包丁などを買いに、その内行くつもりで後回しになっていた所だ。


「領主様、今から行きますか?」

「もちろんです!」

(待て。今から行って、奥方の石化解除で館に戻ると二度手間じゃ)


 二度手間……?

 って事は、館に戻ったあと、また工房に行く用事があるのかな……?


「女神様、ここに移動させて頂けるのですか?」

(ふふん。可愛い獣娘達やヒビキと旅に出れるのじゃからな。一刻も早い方がよいわ)


 女神様の体がふわりと広がって煙状になると、ヒビキの手の平に乗っている指輪の宝石へ、吸い込まれるように移動する。

 指輪の中央にある赤い宝石が、鈍く点滅すると……。


「うわ!」

「「ひゃっ」」

「おぉ!」

「なんと!」

「……!」


「あばにゃにゃなばにゃ!!」


 私の足元から、奥様の石像がにょきにょきと生えてきた。


 なんで! 私の足元からっ!!

 

「ひいいいぃいい!!」


 私の頭の上で寝そべっていたピーちゃんも、飛び立つ事も忘れて悲鳴を上げている。


 いや、もう種明かしされているから、怖くない筈なんだけどさ。

 お化け屋敷と一緒で、本当の危険はないってわかってても怖いわけで!


「みぎゃあああ!!!」

「ひいいいいい!!!」


 奥様石像の頭の上にしがみ付くような体勢で、どんどん視線が上がってゆく。

 ちょっと本気で泣いても良いかな。


 さっと近づいてきたアベルさんが、両手で持ち上げて助けてくれた。


「オカン。こんな時でも結界発動できませんでしたね……?」


 あっ。忘れてた!

 いや、でも、ビックリしたり、何かがそばを通る気配がしただけで、結界の発動ができるヒビキとアベルさんの方が、おかしいんだと思うの!

 だから特訓でおかしな水かけるのはやめてー!!


 ”不意に降ってくるアベルさんの水攻撃を、結界を張って躱しましょう”な訓練を、未だに続けているんだけど。

 いつまでも成功しないからか、水が時々冷たかったりピリピリと電気を帯びていたり、目の前数ミリの所でわざわざ停止してから弾けたりと、バリエーションを増やされているのだ。


 その内熱湯攻撃になりやしないかと、ヒヤヒヤしている身分としては、今回の失態は非常にやばい。

 

 心配性のヒビキからも、「万一の時、結界張ってくれた方が良いから」と、水のバリエーションアイデアを、出されてる始末。


 自分の特訓が順調だからって、余裕ぶっちゃってさ!

 いいよね! 努力した分めきめき成果がでるって。そりゃ楽しいよね!

 私が捕食された時の姿を思い出す事で、怒りの感情で発動解除な火の魔法も使えるようになったしね!

 今では、アベルさんみたいに、花火も打てるようになってるもんね。


 私を抱えたアベルさんが、そっとヒビキの隣に立って。


「オカンの特訓の成果、全然でしたね」

「そうですねぇ。これはもうちょっと厳しくした方が良いですね」


 ……恐ろしい話し合いをされている……。

 ミアちゃんとソラちゃんが、じりじりと後退し、私達から距離を取り始めた。

 

 ……スパルタを経験している娘っ子達は、特訓の事を考え始めたアベルさんから距離をとり、視界から隠れ、「そうそう。二人もこれから○○の特訓をしましょうか」と言われるのを避けているのだ。


 ヒビキが良いペースでこなしていくものだから、当然アベルさんは次の特訓方法を考えるわけで。


 次の特訓を考え始めたアベルさんの視界に、うっかり入ってしまった時の娘っ子達が、「そうそう」といって連れ出されるのを、笑って手を振って見送っていたしわ寄せがー!


 一人で心中大騒ぎしている合間に、奥様の石像は足先まで生え終わったようだ。


 指輪を返された領主様が、そっと石像の指にソレを嵌めると、前に見た時と同じように奥様の石像が足元から床に沈んで消えて行く。


 以前と同じく、頭の先まで消えた後には、指輪がキラリと煌めいて残っていた。


「旦那様……」

「セバス……」


 床で煌めいていた指輪を拾い上げた領主様が、感無量と云った感じで執事さんと見つめあい、おもむろにヒビキ達の方へ向きなおして、深々と頭を下げて云った。


「ヒビキ、アベルさん。本当に感謝する!!」


 では、いよいよ奥様本体の呪いを解きに行きましょう!!


 そして、そのまま祝賀会とか開こうよ!

 そしてそして、そのままお泊りしようよ!

 そしてそしてそして、今日の特訓は無し! ってどおかな?!

 


いつも、お読み頂きありがとうございます。


悩みまくっていたタイトルも、本日の修正で一旦落ち着こうと思います。

コロコロ変えていたのに、あきれず、見放さずお付き合い頂きありがとうございました。


第二章も残すところあと数話となりました。

これからも、どうぞ宜しくお願い致します。


少しでも、応援しているよ! と思って頂けましたら、広告の下の☆を押して頂けると嬉しいです!

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