43.『勇者』の噂と領主様のお館
「2番目の勇者も3番目の勇者様も、神様から竜王を倒す為に呼ばれたらしいぜ」
ん? タローさんの物言いに、なにか含みがある気がしたんだけど、どこだかピンとこない。
『勇者』が竜王をってのは、女王様から教えて貰ったし……なんだろ。
「3番目は勇者様なのに、2番目は勇者って敬称無しなのはわざとなのですか?」
そこだ! ヒビキ良く気付いたー!
「3番目の勇者様はなー。美味いもん生み出したり、『賭博の町』にすごい装置作った英雄なんだ。でもなぁ……2番目はなぁ……」
「2番目はねぇ……」
うえぇ~と苦い物を食べた時のような顔になる、タローさんとピーちゃん。
「なんせ、千年ぐらい前の人だから、どこまで本当かは判らんけどさ。とにかく我儘で癇癪持ちで、贅沢好きだったらしいぜ。竜王倒す前から、当時の王様に取り入って爵位を貰ったとかで、王都には子孫がいるし」
「妖精の国に落ちてきた人らしいんだけど、言葉を覚える勉強を全然しようとしなくて、大変だったらしいわよ。2番目の勇者の話になると、女王様未だに電気パリパリしだすもん」
王様の”3本目の角の懺悔タイム”の時に出てた静電気かぁ……。
女王様が静電気出すぐらいだから、相当性格に難ありの人だったんだな。
今回登場する筈の、4番目の『勇者』は良い人だと良いなぁ、と思っていると……。
「タロー!」
ガシャガシャと鎧の音を立てながら、長身の男性が駆け寄ってきた。
「カール!」
カールさんと呼ばれた鎧の男性は、領主様のお館の警備をしていて、タローさんの幼馴染らしい。
「ここで会えて良かった」
「どうしたんだ?」
「領主様が、『動物使い』様を、お館に招待したいと仰ってるんだ。お前も一緒にどうぞって事だぞ」
「うおー! 本当か? やった! ヒビキ、いいよな?」
なんだか、どんどん厄介事が積み重なってきてる気がする。
お断りしたい所なんだけど、タローさんの喜びようを見ると、ヒビキは断れないんだろうなぁ……。
「どうして領主様が俺を?」
「表向きは”ミニヨン”探しを正式に依頼したい、との事です。他の思惑があるかは、自分には判りません」
「……判りました。お伺いするとお伝え下さい。時間は指定されていますか?」
「『動物使い』様を見つけ次第、自分がお連れするようにと、言い付かっております」
「タローさん、どうしよう? このままお伺いしても大丈夫ですか?」
「悪い訳あるか、大賛成だぜー!」
「では『動物使い』様、タロー行きましょう」
鎧のカールさんの後ろに付いて歩き始めた矢先。
【イター!】
電子音が混ざったような声が、上空から聞こえたかと思ったら、バサバサっと羽音がする。
みんなで上を見上げると、真っ白な体に黄色い冠羽のついたオウムが、降下してくる所だった。
【女神様が夢の中デ、オレに云っタ。領主様助けテくれる人ガ現れるッテ! 本当だっタ!】
「……俺が?」
【羽の生えた猫ト、妖精を連レた方が、助けてくれるッテ云ってタ】
「何を助けるのかな?」
【奥様!】
「……助けられるかは判らないけど、今から領主様のお館に行くから、ミニヨン君? だよね。君も一緒に行こう」
【わかっタ!】
「君、家出したってみんなが心配してたよ」
【ン? ナンデ? オレ助けてくれル人探しに行ってくるカラ、心配しないデって言っタ!】
「……それ、人間の言葉で言ってみて?」
「オレ」「チョット家出ル」「探ス」「心配シナイデ」
……そりゃ駄目だ。
◆
3区画と2区画の間にある大通りを、北に進んで領主様の館を目指す。
カールさんが断ってくれるので、町の人達からの”うちの子相談”からは、逃れられているのだけれど。
町の大通りにも、奥様の石像が至る所に生えているので、大層歩きにくいのだ。
通りのド真ん中に、三体横並びで道を塞ぐように建っていたりすると、軽くイラッとする。
領主様のお館は、クリーム色の煉瓦で作られた、3階建ての華麗な建物だった。
鉄柵に囲まれた門を入ると、常緑樹でできた生垣で区切られて花壇が作られ、その後ろには桜のような木が並んでいて、とても上品で華やかな雰囲気を醸し出している。
旅行雑誌で見た、プティ・トリアノン神殿に似てるー! 凄い! 素敵!
……石像さえなければ。
そう。所せましとひしめいている奥様の石像が、すべてをぶち壊している。
乱雑にあちこちを向いて生えている奥様の石像は、いまにも一斉にこちらを向きそうで、せっかくのお屋敷が、ホラーハウスになっていた。
何を想ってこんなに作ったんだ、領主様……。
本当に魔除けの効果、あるのかな。
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