18.★王様がただのエロ爺だった件
イラスト頂きましたー!!
文末に差し込んでいます
その日も、大気の魔素濃度を確認する見回りをしていたそうな。
それはそれは美しい乙女に出会い、柔らかな膝の上で至福の昼寝をしていた筈が、目覚めると乙女の姿は無く、自慢の角は根元から切られていたらしい。
「可憐デアッタ。黄金ノ髪ト瞳。スット通ッタ鼻筋……。香シイ吐息。我ヲ誘ウスラリト伸ビタ腕ト、頬ヲ撫デル滑ラカナ指先……」
うな垂れる王様が、ウットリしたような声でごにょごにょと云ってるけど。
要するに、ユニコーンの角(にある薬効成分)を狙ったハニートラップに、まんまと引っかかったって訳で。
ダメな大人だー! ダメな大人が此処に居るー!
しょんぼりと国に帰った王様の顔を見ただけで、全てを悟った女王様の怒りはすさまじく、国全体に張っていた結界に、王様避けの魔法まで追加したそうな。
「2,3年で元の長さに戻ってる筈なのに、王様ってば全然帰ってこないから大変だった!」
ピーちゃんがプリプリしながら詰め寄るので、ますますうな垂れる王様。
角が伸びるまで放浪していた王様は、魔素が濃くなる速度が上がって来た事に気付き、『そろそろ怒りも解けているであろう』と、6年ぶりに帰って来てみれば、森の中の魔素が想像以上に濃くなっていて驚いた……と。
魔素は、森や樹や魔力の多い者に引き寄せられる習性があるらしく、中心に妖精女王が管理する国があるこの森は、魔素の好む二大要素を満たしている。
それでも、結界を超えて侵入してくる程に濃くなる前であれば、特に問題なく暮らせていたらしい。
国の入口前をうろついていても誰も迎えに出てきてくれず、王様避けの結界は悲しいほどに強固で。
途方に暮れていた矢先、女王様の体を癒すアイテムを探しに出てきたピーちゃんに会えたらしい。
ピーちゃんが戻ってくるまでの間、女王の負担を減らす為に、結界をすり抜けて侵入する魔素を減らそうと、それはそれは孤軍奮闘したと云う。
魔素がより濃く溜まっている場所を回っては、浄化作業を繰り返し、あそこまで腐り果ててしまった、と。
確かに、あそこまで腐敗が進んでも頑張ってたのはすごいと思うけど……。
「2,3年で元に戻るのに、6年も帰ってこられなかったって事は、もしかして王様……2本目やっちゃった?」
ヒビキが、王様の触れてはいけない『計算が合わない3年間』を、サクッと暴いてしまう。
「愚カ者! ソコハ気付カヌ振りヲスル所デアロウ!」
半眼で、生暖かく王様に向けられる6つの瞳に。
「ソ……ソロソロ出発セネバ、到着スル前ニ日ガ落チテシマウゾ」
しどろもどろになりながら王様が言った。
◆
温泉と化した池から出たヒビキが、「あっ」と言って停止する。
「どうしたのー?」
「バスタオル……持ってなかった」
「にゃー……」(風魔法とかでパパッと乾かしたりできないの?)
「できないー」
「我モデキヌナ」
雰囲気でなんとなく悟ったらしいヒビキが、空間収納から出したトレーナーで体を拭き始める。
女王様を助けたら、日用品を買いに行った方がよさそうだ。
そういえば、最初に居た丘から街が見えていたな……と考えていると、着替え終わったヒビキが口を開いた。
「お待たせしましたー」
「ウム。デハ我ノ背ニ乗ルガヨイ」
王様がしゃがんでくれるのを待つヒビキ。
王様はしゃがまない。
首をかしげて待つヒビキ。
けれど王様は微動だにしない。
「ドウシタ。早ク乗ラヌカ」
「え。だって王様背が高い……」
暗にしゃがんで欲しいとアピールをするヒビキに向かって、居丈高になった王様が言った。
「アレハ、本来乙女ニシカシテオラヌ。男子タル者、飛ビ乗ル事グライ容易カロウ?」
鞍も無く鐙も無く、もちろん手綱なんかもついてない王様。
王様の体高は、ヒビキの身長とほぼ同じ。
あの高さに飛び乗って座るって、かなりハードじゃない?
絶対イジワル入ってるよね?! 大人げない! 大人げないよ王様!
◆
王様の側面に向かってヒビキが走る。
走る勢いのまま、1歩手前でジャンプして、王様の背中に両手をつく。
そのまま大きく足を開いて、王様を飛び越えた。
……うん、普通そーなるよね。
王様の側面に向かってヒビキが走る。
1歩手前で大きく上に向かってジャンプして、王様の背中に両手をつく。
足を開くタイミングを掴み損ねたらしく、やや曲げただけになった両膝を、王様の横腹にクリティカルヒットさせて、前のめりな感じで向こう側に落ちた。
……うわー。痛そう……。
王様の側面に向かってヒビキが走る。
ジャンプするタイミングを見誤って焦った挙句、なす術もなく王様の横腹に突っ込む。
王様もろとも横倒しになった。
……王様、ざまぁ。
「ヒビキってさー。急に飛んできた王様の飛沫に瞬間的に反応してたからさー。もっと運動神経良いと思ってたわー」
私の頭の上で腹ばいになって応援していたピーちゃんが、あきれたように口を挟む。
「あれは! 気を抜いてたら飛んでくる母さんの『腹筋パンチ』のせいで!」
王様の背後から走り寄るヒビキが叫ぶ。
お尻の上に手を突いて、大きく足を開いた状態でつんのめり、顔面を王様の首の後ろにぶつけた挙句……落ちる。
ヨロヨロと起き上がりながら「体のそばで何かが動くと、腹筋を締める癖がついたんだ……」と呟いた。
「……どんな母親なのよ……」
……すみません。ここにいます。
なんとか背に飛び乗ろうとするヒビキから、結構なダメージを叩き込まれているらしき王様は、「グッ」とか、「フヌッ」とか、息を漏らしつつひたすら耐えている。
男同士の無駄な意地の張り合いに、ちょっと飽きてきた。
王様と正面から向き合って、一歩右にずれた場所からヒビキが走る。
肩のあたりに左手をついて飛び上がり、右足を大きく上げて腰をひねる。
ひねった腰の勢いのまま、王様と同じ方向へ向くと、すとん、とお尻が落ちた。
「乗れたー!!」
パチパチと拍手するピーちゃんと一緒に、私も肉球をポプポフと合わせて健闘を称えた。
筋骨隆々のかっこいい王様にさっそうとまたがるヒビキ!
その肩に嬉しそうに乗っているオカンを描いて下さったのは
茂木 多弥様 https://mypage.syosetu.com/1489201/ です~~!!
茂木様、ありがとうございました!!




