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11.森へ

 妖精女王の体が腐り始めたのを知って、女王が無理に取り込んだ分の魔素を、少しでも浄化できそうなモノを、ずっと探し回っていたらしい。


「ピーちゃんも、無意識での浄化ってやつ、してるのか?」

「これでもそれなりの魔力を持ってるから、しちゃってるのよ」


 魔素が濃くなる前であれば、取り込む量と放出する量にバランスが取れていたので、身体に異常をきたす事はなかったらしい。


 ただ、魔素が濃くなってからは、無意識に放出するだけでは、濃くなった分の魔素が体内に残ってしまうのだと言う。

 さらに悪いことに魔素が残った状態だと、徐々に体が腐ってしまうとの事だった。


 体内に残った魔素を、意識的に清浄な空気にして放出する為には、魔力を過剰に使わなければならず、その結果身長が縮んでしまったらしい。


 それが、ヒビキの『職業:生き物使い』の『名付け』によって、縮む前に戻るどころか、さらに4センチ程成長した上に、保持していた魔力が倍に増えたという。


 異世界の名づけってすごいな。

 私に翼が生えてきたのも、『オカン』と名付けられたからかな、と納得する。


「無意識で浄化してしまうなら、意識的に取り込まないようにできないのか?」

「持っている魔力を体の表面にまとってたら、できない事もないんだけどね。ずっと魔力を放出し続ける事になるから、長時間は無理なのよ。」


「そっか……。急に魔素が濃くなったって言ったけど、原因はわかってるのか?」

「浄化できそうなモノを探すついでに、原因も探してたんだけどね。全くわかんなかったわ。外の世界の事を色々教えてくれた女王様にも、その辺りの話はいつもはぐらかされてね……」


 このまま縮み続けて消滅してしまうのか、志半ばで森へ帰るべきなのかと、半ば諦めかけていた時。

 強い魔力の反応を感じて駆けつけてきたら、失われている筈の世界樹の匂いまでしたので、喜びすぎておかしなテンションになってしまったのだそうな。


 おかしなテンションと面倒くさそうな性格は、きっと生来のモノだろうと思いつつ、ヒビキの肩によじ登り、しょんぼりしているピーちゃんの頭をポフポフと撫でる。


「にゃー」(一人で頑張ってたんだね。えらかったね)


 止まっていた涙が再び大粒で零れ落ちたピーちゃんが、私に抱き着いてきて大声で泣き始めた。



「あのさ……。オカンはいいんだけど、ピーちゃんは飛べるだろ?」


 現在の私の居場所は、旅人のマントを羽織ったヒビキのフードの中に足を突っ込み、上半身はヒビキの左肩にのしかからせて、ぶらぶらと両腕を揺らしている。


 ピーちゃんは、ヒビキの頭の上に胡坐をかいていて、手綱よろしく髪を掴んでいた。

 行く先は、3キロほど先に見えるうっそうと茂った広大な森。


「なんでオカンはいいのよ」

「オカンは、少し左足引きずってるから。ピーちゃんは、ずり落ちそうになる度に俺の髪の毛引っ張ってバランスとるから、地味に痛い。何本か確実に抜けてるし。」

「ひいきだー!!」


 ぷりぷりと憤慨しながら、ヒビキの右肩に移動して、ちょこんと腰かける。

 ここなら文句ないでしょと言わんばかりに足を組んだピーちゃんに、苦笑いで「しかたないなぁ」と返すヒビキ。


 妖精女王が張った結界の入口は森の中心にあるらしく、取り急ぎ向かってみようと移動し始めた時に、少しぎこちなく歩く私の足に気付いたヒビキが、抱き上げてくれた。


 何が起きるかわからない異世界で、両手が塞がっているのはマズかろうと、するりと肩に移動して、ここに落ちついている。


 自分で歩かなくても移動できるって、すっごい、楽ー!!

 人間だった頃より高くなった目線も新鮮で、ニマニマしてしまう。


「腹筋パンチといい、足といい、お前ほんとに母さんみたいだね」


 優しく微笑みかけてくるヒビキにギクリとしながら、お茶を濁すように「にゃー」と返事しといた。


「そーいえばさ。ヒビキってなんでオカンの言葉がわかんないんだろうね」

「え?」


「『生き物使い』は、すべての生き物の話してる事がわかる筈よ?」

「本当に?! オカン、もう一度何かしゃべってみて??」


「にゃー」(この場所気に入ったー)

「……わかんないや」

「『この場所気に入ったー』って言ってるよ」


 通訳してくれるピーちゃんに感謝しながら、「なんでだろうねー」と三人で首をかしげる。


 ピーちゃんに頼んで、私が母だと伝えて貰おうかと一瞬考えたけれど、何と無く言いたくなくて。

 まぁ、いつでも言えるしね、と自分自身に言い訳をして、しばらく様子を見る事にした。


 ふと、足元を歩く蟻に気付いたヒビキが、しゃがみ込んだ。


「蟻さんこんにちは。一匹で何してるの?」




 苦笑いをして立ち上り、再び歩き始めたヒビキに、ピーちゃんが「なんて言ってたの?」と尋ねる。




「働きたくなくて引きこもってたら、蟻の女王様に『餌見つけてくるまで帰ってくるな!』って、巣穴から追い出されたんだって」


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― 新着の感想 ―
[一言] これピーちゃんに翻訳してもらえばお母さんだという事を伝えられるのでは!?
2020/09/23 18:44 退会済み
管理
[良い点] オカン目線が新鮮で面白い! [一言] こんにちは。 とりあえずここ迄読んでみました。 普通に面白いですよ? まぁ自分は例え『気になるところ』があったとしても、面白けりゃ気にならない人ですけ…
2020/06/16 18:48 退会済み
管理
[良い点]  おかん可愛いですね。肩に乗っているところを想像するとにやけが⋯⋯。  それに最初は憎たらしかった妖精が可愛くなってきました。 [気になる点]  題名で猫目線であることとか,生き物使いであ…
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