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10.神様からの贈り物

 そっと反時計回りに手を動かし、空間収納を閉じる。

 神様からの、嫌がらせとも思える贈り物に、がっくりとうな垂れていると、ヒビキのお着替えが終わったようだ。

 脱いだ服をきちんと畳んで、開きっぱなしだった空間収納に入れている。


「……あれ? まだなんか入ってる」


 そっと取り出したモノは、30ml程度の液体がはいった小瓶だった。

 透明な液体の中に、金粉のようなモノがキラキラと反射している。


「それだーーーー!!! やっぱアンタ持ってるんじゃない!」


 突然叫んだピーちゃんの声に、ビクッと肩を上げながら、手の中の小瓶を見ている。


「これ、神様から貰ったんだ。俺が『必要だと思った者に飲ませるのじゃ』って」

「ふぅん。って事は、ワタシが貰って飲ませても効果はなさそうねえ……」


 空の上で、神様が横たわるヒビキに話かけていたのはこれだったのか。

 神様がヒビキに与えた”使命”とやらが、ビンの中の液体を飲ませる事なのかしら。


 答えの無い疑問を、ぐるぐると考えていると、ピーちゃんがガバッと空中で器用に土下座した。


「お願いします! 少しだけでいいの! 少しでいいから、ソレを分けてください!」

「いいよ」


 全く思案する様子もなく即答で答えるヒビキに、顔だけ上げたピーちゃんが、ポカンと口を開けた。


「いいの?」

「いいよ」

 

「アンタ、それがなんだか判ってるの?『世界樹のしずく』よ?」

「うん。神様からもらった時は、これが何かは知らなかったけど、空間収納から取り出す時に、名前出てきてたから判ってるよ」


「……世界樹は、枯れてしまっているから、現存する最後の『世界樹のしずく』かもしれないのよ?」

「うん。いいよ。必要なんでしょ?」


 ピーちゃんの瞳から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。


「ホントにいいの?」

「助けたい人が居るんでしょ?なんとなく分かるよ」


「~~~~~~!!!! うわあぁぁぁぁーーーん!!」


 真一文字に引き結んだ唇がワナワナと震えた後、耐えきれなくなったように空中で突っ伏して大泣きするピーちゃんを、どう慰めれば良いのか思い浮かばないのだろう。


 ヒビキが、助けを求めるようにこちらを見てくるが、私だって全く事態を呑み込めていないんだもの。首をかしげながら見つめ返すしかなかった。



 しばらく大泣きしていたピーちゃんが、上半身をゆっくりと起こし、ぽつりぽつりと事情を打ち明けてくる。


 2000年前、暴走した竜の息吹で世界樹が焼かれ、怪我や病気に効く効果を持つ『世界樹の葉』や、身体の欠損を含め全ての身体的薬効を持つ『世界樹のしずく』が失われた。


 世界樹は、薬効成分のある『葉』や『しずく』を生きとし生けるものに与えるだけではなく、大気中に含まれる『魔素』を取り込んで、清浄な空気にして吐き出してくれていたという。

 『魔素』は、あらゆる生き物の負の感情からできるているらしい。


「じゃあ、今は魔素が増えるいっぽうなのか?」

「魔力の強い生き物が、無意識に空気の浄化をしているから、生活に支障がでないギリギリで、均衡は取れてたんだけどね……」


 可愛らしい眉間にしわを寄せながら黙り込んでしまったピーちゃんを、じっと見つめるヒビキ。


「……ここ十数年で、大気中の魔素濃度が急に濃くなってきたの。正常な空気がないと生きていけない魔力の弱い妖精たちは、妖精女王が張った結界の中で生活していたんだけど……。結界の中にも魔素が入り込むようになってきたから…」


 スカートの裾をぐっと握りしめながらうつむいたピーちゃんが、絞り出すように言った。


「入り込んできた魔素を、妖精女王が無理に取り込んで浄化するようになって…」


 うつむいたまま、涙を流して肩を震わせている。


「無理に取り込んだらどうなるんだ?」


「……腐り落ちるの。体が」

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― 新着の感想 ―
[一言] ティターニアさま!!!!(´;ω;`)ウッ…
[一言] この作品、出てくるアイテムがやっぱりドラクエだw 世界樹が枯れていると聞くとロトの紋章を思い出しますね(知ってるかな
2020/09/09 19:07 退会済み
管理
[良い点]  10話,読みました。まさか世界樹がここででてくるとは。驚きです。 [一言] これからも更新頑張ってください。
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