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転成記〜市中引き回し回避録~  作者: たぬきつねこ
大河ドラマ様々だ

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7/25

天下人のヒケツ…?

友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、後の石田三成である石田佐吉となっていた。

何やかやあって気せずして三献茶RTAを果たしてしまった佐吉を小姓にしたいと後の豊臣秀吉は佐吉の父、正継と話をしにきたが—?

「儂の目にはそう見えん。」

 うちのこそんな子じゃ無いですよと言い募る正継に、それでも秀吉は諦めない。


 そしてなぜどいつもこいつも本人の意志を確認しようとしないんだ。

 大人の間で勝手に決めて、もし本人があとからそんなの嫌だと言い出したらどうする気なんだ。

 —言わせないのかもしれないが。


 報連相はしっかりしないと後々禍根になるからしといたほうがいいよと心の中で呟きながら、様子を見る。


「あの子は儂によう似とる。」

 …なんかヤダ。

 というかそれが理由になると思っているのか。

「しかし…親として自信を持って送り出せるほどのものと思えませぬ。」

 …なるの?!


「先日も一人家を抜け出し賊に襲われたばかり。」

 そういやそうだった。

 今の私ではないけど。

「…えっ。」

 さすがに驚いたのか小さく声を上げる秀吉に、正継はたたみかける。


「今目を離せば何をしでかすやら、皆目見当もつかぬ。そんな子供を羽柴様の小姓になどとても勧められません。」

 気持ちはわかるし立場もわかるし有り難いけど。

 …もうちょっと言い様ってのがありませんかねえ。

「何と。」

 それから気に入ったってならもうちょっと反論しましょうよ。

 絶句されたらもう誰も味方がいなくなるんだよ。

 初めから居るのか分からないけどさ。


「…なるほど、今すぐと言うのは無理があったようじゃ。それでは逆に、何時ならば良いかの?」

「何時、とは…」

「これほどの人材を諦めるわけには行かん。何時からならよいのだ?」

 高く買ってくれてるとこ申し訳ないが、結局どこを気に入ってどう買ってくれてるのかが分からない。

 お茶を出しただけで気に入られるほど甘くないと思うのだが。

 戦国時代と言うのは。



「っそれは…」

 逆にカウンターを喰らった正継が、言葉に詰まる。

 逆転し、畳み掛ける秀吉を、必死だなあと見ていた私に白羽の矢が立つ。

「本人の意志を確認しない事には…」

 …やっと?

 いやこれだけ人がいて本人の意志を聞こうとしたのが二人だけって。

 しかも一人は半ば切羽詰まって苦肉の策でって。

 どうなのかなあ、人の意志ってそんな軽いものだったかなあ?

 現代人の感覚が残る私にはどうにも受け入れられない。

 思考にはまりかけていると、襖越しに呼びつけられる。


「佐吉。」

 今入ってしまえば間違いなく後悔する。

 かと言って断る理由も覚悟もない。

 心の中で文句を言いながら返事をした。

「…はい。」

 失礼します、と断って部屋に入るなり、逃げ出したくなった。

 大の大人二人が無言の圧をかけてくる。

 しかも方向性が違う。

 …普通の子供なら泣いてるぞ多分。

 話聞く限り普通の子供じゃなかったみたいだけどな。

 佐吉少年と言うのは。



 無言。無言。無言。

 呼ばれたのはいいが、誰一人口を開かず、沈黙が支配し大の大人が無言の圧を子供にかける。

 どうにか状況を打破しようとは思うものの、下手な発言をすれば未来がない。

 …仕方がない。腹を括るか。


 よく回る頭を全力で回した末に私が出した結論は、馬鹿になることだった。

 ついでに空気を読まずに子供らしくする事だった。

「何のお話でしょうか、父上!」

 なるべく子供らしく、無邪気で空気の読めない甘ったれを意識して。

 面食らいながらも一足早く回復した父、正継の言葉を待つ。


「…お前は…いや、いい。手短に行こう。お前はこの、羽柴様の小姓になりたいと思うか?」

「…っ父上!」

 締め忘れた襖の向こうで悲鳴のような声を上げる正澄を手で制して、真っ直ぐな目が向けられる。

 一瞬小姓ってなんでしょうとボケようとして、飲み込む。


 真っ直ぐな目と、邪な気がしてきた細められた目を前に、言い淀む。

「私は…」

 いや、言えることがなかった。

 何をしたいわけでもない。

 確かに市中引き回しは回避したいが、今ここで逃げたところで変わるかはわからない。


 そもそも私はどう生きるべきなのだろうか。

 戦国時代に転生してしまった現代人として?

 あるいは天下分け目の戦いを起こす石田三成として?

 未来を変えるべく生きるべきなのだろうか。

 その覚悟が私に持てるだろうか。


 本来の彼が辿ったものとは違う道に進みかけているのは確かだろう。

 それがどんな結果を及ぼすのか。

 入り口が違うだけで行き着く先は同じになるのではないか?

 そもそも私が武士ではない道を選んだとして、歴史は変わるのか?


 私が織田信長とか豊臣秀吉とか徳川家康とか天下に直接関係のある人物ならともかく。

 歴史に名前が残っているとはいえ、大した役回りのある人とは言えないだろう。

 私が石田三成として生きなくても、きっと歴史は変わらない。

 検地には他の人が関わるだろうし、関ヶ原は起きないかもしれない。

 あるいは誰かが起こすかもしれない。


 今断って、寺で坊主にでもなれば、きっと市中引き回しは回避できる。

 今度こそ畳の上で人生を終われる—はずだ、多分。

 私—現代を生きた三上正成—からすれば、それがまずまずの選択ではないだろうか。

 危険を冒す必要も義理もない。

 なぜなら私は石田三成ではないのだから。

 私が石田三成として生きる道を自ら断てば。


 …決めなければならない。

 私が何者なのかを。

 どう生きるのかを。

 二人の大人の目線にさらされながら、いずれ向き合う問題を前に、言葉を紡ぐ。

「まだ、生き方を決めきれていません。」

 間違いなく武芸には縁がない。

 戦国時代を生きるなら致命的だ。

 かと言って坊主が天職とも思えない。



 どうする。


 歴史を変えるには、今ここで話に乗るか、乗らずに武士以外の選択肢を選ぶべきだ。

 もしここで承諾、あるいはそれに準ずる答えを出せば、史実通りの人生の布石を打つことになる。

 それは私の望むところではない。

 そう、私の、なのだ。

 この世界の、この世界で彼と関わる人々の望みではない。

 歴史に残るような話ではなくとも、私が石田三成として生きる道を断てば、変わってしまうことはある。

 その変化が、良い事ならばまだいい。

 思い上がりだとは思うが。

 その変化によって不幸になる人がいたとして、私にその責任をとれない。


 嫌だ。

 死ぬのは。

 ましてそれが碌でも無いものなんてのは。

 嫌だ。

 市中引き回しは。

 嫌だ。

 私の選択で、また人を殺すのは。

 私の行動で、誰かが不幸になるのは。

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 不幸な人生を送るのは嫌だ。

 それと同じくらい自分のせいで不幸になる人がいることが嫌だ。



 くそったれ、どうしてこうも私ばかり悩む必要があるのだ。

 もうやめだ。

 考えるのも、悩むのも。

 私は私だ。

 腹を括れ。

 今の私は誰だ?

 石田佐吉、近江国石田村の村長、石田正継の息子で石田正澄の弟。

 ならば私は。

 石田佐吉。

 後の、石田三成。


 私はこの時代を生きる、石田佐吉だ。


 まだ十四歳の、甘ったれで先日も一人で出かけて死にかけた—というか死んだ—、一人の子ども。

 そして、何故だか新領主の羽柴秀吉に気に入られてしまっている。

 まだ身の振り方の定まっていない子どもは、どんな結論を出すか。


 唇が震えているのは気のせいだろうか。

「今安易に頷いて、後で悔いるのは嫌です。」

 正直な、一人の子供が知恵を絞って出した結論。

 これから先、どの程度続くかもわからない人生の根幹を、今決めるわけには行かない。

 大人に、他人に流されてはいけない。

 細められた鋭い眼光にさらされながらも、思考を整理して言葉を選ぶ。

「貴様っ!」


 発言を深読みしたのかいきり立つ背後の武者を、手で制して秀吉が続きを促す。

「よい。…それで?」

 読めない男だ。

 恐ろしい、と思いながら促されるまま言葉を続ける。

「私はどう生きるべきかをもう少し考えていたい。ひょっとしたら商人になることが最善に思うかもしれない。坊主が性に合うかもしれない。」

 一つ、大きく息を吐く。

 迷いとともに息を吸い込みながら、選んだ言葉を紡ぐ。


「やっぱり武士として生きる道以外ないと、思い至るかもしれない。」

 無言で聴き入る秀吉が、微かに笑みを浮かべる。

「…。」

 どうでしょう、と手に汗を握って対峙する。

「私が生き方を決めるその日まで、待って頂く…と言うのは。」


 可能でしょうかと言う前に口を開かれる。

「…どれほど待てば良い。」

 本人の意志を聞こうとしなかった割には話を聞こうとしてくれるらしい。

 初めからそうしてくれたら良かったのに、と思ったのが顔に出ていたのか、背後でお供の一人が声を荒げる。


「殿っ!」

 どうも気が短いらしい。

 大人しく待てができない部下をなぜ側においているのか。

 傍に控える青年に小声で諌められるのを見ながら、頭の中で計算する。


「…そうですね、五年ほど」

 多分そのくらいのはずだ。

 本来の石田三成が士官するのは。

「五年…か。」

 うーん、と悩む素振りを秀吉が見せる。

 やっぱり無理があったかなあ、と心の中で反省する。


「…はい。」

 と、場を面白そうに眺めていた青年が徐に口を開いた。

「もし…五年経ってまだ決め兼ねる、となったときはどうする?」

 多分この場では限りなくまともな青年が、的確な指摘をする。

「紀之介?」

 思わぬ横槍を入れられながらも、咎めないのは度量か、それとも。


 青年の指摘を受けて、口を開く。

「そうはならないようにする…と今は言えますが、先のことは私にもわかりません。」

 正直な思いを語る。

 どれだけ綿密に計画を立てても計画通りには物事が進まないように。

 人生に絶対はない。

 この一月ほど痛いほど理解している。

「それで?」

 興味深い、といった顔で青年が言葉を待つ。

「そのときは…」







 何とかお呼びでない御一行を見送ったあと、正継が近づく。

「良かったのか。」

 何がだろう。

 最後の言葉か、子供じみた態度か、これからか。

 …困ったな。思い当たる節が多すぎる。

 今日一日、どころか半日もない間の事なのに。


「…どこの部分がです?」

 正直に言えば、少し呆れた顔がこちらを向く。

「…全てだ。」

 ソウデスカ。

 そうですよね、うん。

 反省は多いにしている。

 が、後悔はない。

 最善かはわからないが。


「わかりません。」

 向けられる視線を、真っ向から見返す。

「…。」

「でも、今の選択が間違っていたとは思いません。」

 ややあって、ゆっくりと正継が口を開く。

「私は…お前がどんな選択をしようとその選択を尊重しようと思っている。」


「…!」

 良い人だ。

 親の鏡のような。

 …現在基準で、だが。

「だが、その選択の責任を取る事までは出来るか判らん。」

 なるほど、正澄が言っていたのはこういう事か。

 確かに甘い。


「えぇ、それは…」

 佐吉少年は、少なくとも少年の頃は恵まれた、暖かな環境で育まれたのだろう。

 —少し、羨ましいと思ってしまったのは。

 肉体に精神が引きずられたからだと心の中で言い訳する。

 目尻を和らげて、からかい調子で正継が言った。

「だからどうか寿命を縮めるような真似はしでかしてくれるな。」

 寿命が10年は縮んだぞと言われては、謝るしか無かった。

「それはもうホント、ごめんなさい!」







 石田正継

 ??~1600


 近江国坂田郡石田村の地侍。

 秀吉の前に京極氏に仕えていたともされる。

 言わずと知れた三成の父。

 領民からの評判が良く、

 学問の志深く和漢に通じ風流心を持つ才人。

 …まぁ要するに凄い人。

 ちなみに三成に寺から借りた60巻の書籍を読ませようとした事があるとかなんとか。

 秀吉に小姓として仕えた三男ばかり有名になったが、生年不詳であったり、分からないことが意外と多い。


 三男が割と異例な出世を果たしたために堺奉行や佐和山城代を務め、関ヶ原の戦い後、西軍裏切り組を中心とした東軍に攻められ、自刃。


 実は和睦交渉が成立していたのに内外から裏切り者が出、城内の多くの人が犠牲となったのだが、あまり語られることはない。

作者「という訳でなんとかかんとか更新できました作者です。」

三上「いつの間にか三献茶RTA完遂した三上です。」

三成「四百二十五年前の今日が命日の治部少輔です。」

三上「自分で言うなよ…。」

三成「それにしてももうそんな季節か。どおりで近ごろ冷え込むと…」

三上「そうそう、ちょっと前まであんなに暑かったのが嘘みたい…ってそうじゃない。もう少しなんかあるだろ。」

三成「…?」

三上「もうほんとやだ。もう知らない。

…それで?湿っぽいというか珍しく真面目よりな話だったのはそのせいか?」

作者「え?」

三上「ん?」

作者「偶然ですよ。」

三上「…」

三上「まぁそうだよな、いつもギリギリに仕上げているなら偶然だよな…」

作者「あはは…余裕を持ってできるようにしたいですね。」


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