畳の上で死にたいとは言ったけど
短いです。
今年最後というのに申し訳ありません。
そして中途半端です。
年明けに加筆します。
前回までのあらすじ。
友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、後の石田三成である石田佐吉になっていた!
紆余曲折を経て史実通り秀吉に仕官した佐吉は、馴染み始めた矢先に奥方お手製劇薬に斃れ―?
前略。
あれから三日寝込みました。
虎之助は一日で復活したようです。
……耐性がついているのかな。
冗談はさておき。
いつの間にか布団に寝かされていた私の置かれた部屋の中。
顔すら見たことがない大人たちがひしめき、私が目を開けるなり、起きた――と驚きを隠せていない声で叫んだ。
失礼な。
確かに異常なほど身体は重いし頭は痛いし若干身体が痺れている気もするが、別に命に別状はない。
はずだ。
ちょっと不安になってきたが、いきなり新入りに毒を盛るような人達ではないと信じて、疑惑は脇においておくことにした。
あまり広くない部屋にこれでもかと人が詰めているのを、その半数が眼に同情を浮かべているのを見て、頭を抱えそうになった。
そんな見ず知らずの人達にまで同情されるくらい有名なのか。
うーん、と呻きながら身体を動かそうとすると、
「佐吉ー!」
涙目の市松であろう巨体が伸し掛かる。
本人は抱きついたつもりなのだろうがいかんせん体格差というものがある。
まして身動き一つ取れない重体の人間相手だ。
まぁこうなるだろう。
重さで再び彼岸に渡りそうになっているとは思えないほど冷静な。
自分の脳裏に、数日前の光景が蘇る。
……っお前のせいじゃないか!
多く見積もっても半分くらいは。
思わず手を伸ばして、ぎゅうぎゅうと締め上げる市松の頭を引っ叩いてやろうと手を動かそうとしたところで、入り口付近が騒がしくなった。
モーゼの海割りのように、人が左右に分かれ、奥から足音をたてながら、城主夫妻が現れた。
「佐吉ぃー!」
流石親戚、そっくりだ。
呼びかける声が。
どうでもいい気づきを得ながら、手を下ろして秀吉を見上げる。
「…秀吉、様?ねね様も!?」
仕官したばかりの新人の見舞いに城主自らって大分珍しくないか?
と割とどうでもいい疑問が私の頭を駆け巡る間に、紀之介に引きずられるような形で市松が引き剥がされ、見ず知らずの事情を察した大人たちは入れ替わるように去っていく。
残ったのは未だ布団に転がされたままの私と、秀吉様とねね様、市松と市松を宥める紀之介と虎之助、計六名。
以外のすべての方々が去り、障子が閉じられる。
若干困惑している私に、いきなり畳に頭をぶつける勢いで頭を下げる秀吉。
え?と深まる困惑に、あげそうになった声を抑えて、変わりにまだ若干痺れの残る身体を起こす。
……本当に毒でも入っていたんじゃないだろうな。
などと余計な疑惑を頭に浮かべる私に、すまん!と頭を下げたまま詫びる秀吉様とねね様。
いきなり主君に頭を下げられても困る。
下げられるほどのことがあった覚えもないし。
おろおろしながら取りあえず頭を上げてくれと言いかけると、部屋の隅から市松が代弁する。
本を正せばお前にも責任があるんだぞ、と言いたいのを、主君とその奥方の前であるという事もあって抑え、改めて頭を上げてくれるように伝える。
しかし……と頭を下げたままの秀吉様とねね様に何とか頭を上げてもらうなり、秀吉が唸るように呟く。
「死んでしまうのではないかと思ったぞ。なにせ如何に死にやすいか、お主の父と兄に散々説かれたからな……」
何してくれてるんです父上に兄上!
ここに居ない二人に向かって心の中で盛大に突っ込む。
口に出しては一応主君とその奥方の前だから、遠慮……というかちょっとやりづらいのでやらなかったが。
自分がやってきたことを考えると無理もないとは思うが、一旦棚に上げて拗ねてみる。
いくら何でもそりゃ無いだろう。
親というのは子どもを信じるのも仕事だ。
それが成人しているのならなおのこと。
などと考えていると、困り顔に手を当てたねね様がこれまたボソッと呟く。
「最長でしたものねぇ……。」
ナニが?!
寝込んだ日数ですか?
そうですか!
ショックだ。
もうちょっと皆さん寝込むものかと。
いやよく考えれば目を覚まして驚かれたのだから当然か。
やっぱり体の構造が根本的に違うのだろうか。
私本当に関ヶ原まで生きていれるのかな。
……ってそうじゃない。
どう考えてもそうじゃない。
死んでもおかしくないと思われるレベルの代物を何新入りに食べさせているんですか。
いやそれに関しては市松改め阿呆松のせいでもあるけど。
そもそもの食べ物が食べ物じゃないことについてはどう……
と思わずしおらしい顔の城主夫妻に問おうとしたあたりで、紀之介に後ろから軽く服を引っ張られた。
思わず紀之介の顔を見れば、目線で強く、聞くな、と訴えてくる。
何故聞こうとしたことがわかったのだろう。
それ以前にそんな聞いちゃいけないものなのか。
一周回って聞きたくなってしまうな。
蛇では済まなそうな藪だが。
聞こうかどうか迷っている間に、ねね様が再び口を開く。
「ごめんなさいね、今回は大丈夫だと思ったのだけど。」
……あれで?
失礼ながら欠片も大丈夫と思う要素なかったと思いますけど。
あと今回はって。
“今回”はって。
何で複数回あったのに辞めないんですかねね様!
仮に自分が大丈夫と思ったとしても人が倒れたことがあったのに堂々と新入りに食べさせる理由にはなませんけど?!
「寧々……気にせんでいい。失敗は誰にでもある」
気にしてください?!
死にかけた新入りがいる以上気にして下さいよ秀吉様!
そしてねね様が辞めない理由あんたか!
口に出したくとも出せないツッコミを心の中でしながら、ちらりと紀之介たちの方を見れば、揃いも揃ってまたか…という顔をしていた。
あぁ、うん……そうか、そんな慣れる頻度であるのかこの一連の流れ。
多分間違えたな仕官先。
流石に本の取り扱いで決めたのは早計だったかもしれない。
今さら後悔したところで同仕様もないのだが浅慮であった自分を悔いながら、どうにかこうにか口を開く。
そもそもあれが食べ物かと言う質問はあまりに深藪過ぎるので脇において。
ひとまず料理の材料と調理法を聞いてみることにした。
特に変わったところのない返答に首を傾げ、実際に調理しているところを見てみることになるのだが、それはまた、別のお話……
作者「ハッピーメリーニューイヤー!もうすぐ新年ですね。10月から初めて実質2ヶ月、お付き合いいただき誠にありがとうございます。」
三上「何か混じってるな……まだ3ヶ月なのか?」
三成「時の流れとは残酷だな。のんびりしているとすぐ引き回しの日を迎えることになるぞ。」
三上「斬新な脅し方だな!」
作者「というもう板につき始めているコントは脇に置きまして。」
三上「置くなよ付いてないよ無関係のフリするなよ!」
作者「今日は戦国時代からの年越しについて……しようと思ったのですが、何故か正月についてしか出てこないので正月早々不運に見舞われた武将についてです。」
三上「あのな……」
三成「不死鳥か。」
作者「その通りです。小田氏治、生涯通算九回居城を落城させた、戦国最弱の大名と言われることもある人物です。」
三上「年最後の話題がそれで良いのか……?」
三成「まぁそれでも私が生まれるよりも前に生まれていたが私より後に天寿を全うしているがな」
三上「やめろやめろ、ナチュラルに傷を抉るな私にも効く!」
作者「ついでに言えば一応全部奪い返していますからね。なかなか凄い人だと思いますよ。」
三上「あんまりフォローになってないと思うぞ?」
作者「さて、そんな小田氏治ですが、正月の宴会、または大晦日の連歌会の際に襲撃され、居城を失ったとされています」
三上「ついてない人だな…」
作者「……もっとも、当時の記録を見ると実際はそうだった可能性は低いそうですが。」
三成「居城を数回落とされ、その度に奪い返したのは事実だ。私よりもよっぽど戦国武将しているぞ。」
三上「何だよ戦国武将してるって。……泣いてもいいんだぞ?」
三成「……」
作者「という訳で今回はここまで。年明け、冬休み中にあと2回ほど更新を予定しています。今年いっぱいお付き合いいただき、本当にありがとうございます!来年もどうぞよろしくお願いします!」




