桶屋が無けりゃ風は吹き損
友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、後の石田三成である石田佐吉となっていた!
本が読み放題であるという理由で後の豊臣秀吉である羽柴秀吉に仕えることにした佐吉だが―
大変短いです。
散々お待ちいただいておいて申し訳ありません。
しばらくこのくらいの文量になると思います。
どうかご了承ください。
「なんだ、ひょろっちい奴だなぁ」
しばらくここで待っておいてくれ、と言われ。
決して狭い訳では無いが広い訳では無い部屋で、足の痺れを気にしながら一人正座していると、元気いっぱいわんぱく小僧、といった声が隔てた障子の向こうから響いた。
「こいつが、親父様の新しいコショウ?」
「……っおい、市松。勝手に……」
見ればぴったりと閉じられていたはずの障子をこっそり開けて、隙間から日に焼けた少年が覗き込んでいた。
目が合うなりがらりと障子を開き、身を乗り出す少年の後ろから、慌てたように走ってきた少年よりいくらか小柄な子供が声をかけた。
少年は名を市松というらしい。
縁起が程よく良さそうな名前だなとぼんやり考えながら二人を見返すと、市松のほうがわりかし無遠慮にじろじろと見つめてくる。
「こんなひょろっちい奴のどこが良いんだ?」
……失礼な。
これでもそこそこ欠かさず鍛錬はしていたつもりだ。
確かに市松と呼ばれる少年に比べればずっと細いが。
身を乗り出す、では済まないほど踏み込もうとしてくる市松少年を、後ろの子供が必死に引き止める。
「……またおね様に怒られるぞ、いいのか?」
おね様。
少年の母君だろうか。
だとすればなぜ様付けなのだ。
キラキラと輝く瞳でこちらに踏み込んでくる市松少年と、必死に止める子供。
「……えー、と。」
なぜこんな状況に私は置かれているのか。
子供の相手をしたくない一心で私は少し前までを思い返す。
前略。
私は現代、三上正成という名でしがない研究者として生きていたが、いろいろあって今は戦国時間、後の石田三成である石田佐吉としてなんやかんや過ごして何だかんだで後の豊臣秀吉に仕えることになった。
小姓として。
ああ、小姓と言うのは香辛料のほうではない。
では何かというと、
「だいたいコショウって何だよ?」
……おお、同士よ!
「そこからか市松?!」
あっけらかんと市松少年から飛び出した言葉に思わず意識が引き戻される。
ぶっちゃけ私もよく分かっていない。
少年の後ろから、引き止めることをあきらめた子供が説明する。
「紀兄と同じような……」
紀兄。
ひょっとしてあの青年だろうか。
脳裏に一人の青年を浮かべていると、先ほどよりも一層瞳を輝かせた市松少年の顔が近くに迫っていた。
……近い。近すぎる。
「へぇー!凄えなお前、俺より年下のくせに!」
唾が飛んだらどうs,
「……えっ」
てっきり言動から年下と踏んでいたのだが。
ひょっとして彼のほうが年上だったりするのだろうか。
そんな馬鹿な。
絶対私のほうが年上だ多分。
というか三上正成として生きた年数を足していいならぶっちぎりで私が一番上だ。
などと若干の現実逃避をしながらゆっくりと座ったまま身体を後ろに引く。
「……あぁ、えぇと……まずは名前、いやもういい、いややっぱり……」
というか未だ名前も名乗らずに好き放題と言うのはどうなんだ。
せめて名乗れ自分の名を。
と思ったのが声に出ていたらしい。
せっかく開けた距離をまた詰めて、市松少年が近づく。
「んだよ、何ごちゃごちゃ言ってんだよ」
若干粗暴な年下に迫られる。
何だこの状況。
救いを求めて子供の影を探すが、市松少年の立派な体躯に視界を遮られてわからない。
諦めて市松少年に向き合う。
決して怯えているわけではないが、語尾が消えていく。
いや決して断じて怯えているわけではない。
年下なんかに。
「えーと……だからその、つまり自己紹介を」
自己紹介何て概念が通じるのかな?という一抹の疑問を抱えつつ。
限界まで身体を後ろに引きながら見上げるようにして問えば、
「俺、福島市松!後ろのこいつが加藤虎之助!」
以上だ!と胸を張る市松少年。
……乙女ゲームかな。
ゲームの攻略キャラクターのような自己紹介に少々面食らいながらも、名を名乗る。
「始めまして。石田佐吉と申します。若輩ですがなn」
本来なら礼の一つでもすべきなのだが、いかんせん今身体を起こせば事故が起きる。
うーん、と悩みながら一応最低限の決まり文句を言いかけると、後ろにつくことで体を支えていた左手を掴まれ、引き起こされる。
痺れた足がふらつくのを何とか抑えながら極めて変な体勢で立つ。
と、掴まれた左手を強く引かれた。
「んな堅苦しくなくっていいんだよ。男なら拳で語り合うもんだろ?」
――野蛮人!
そのまま外に連れて行こうとする市松少年。
そんな一昔二昔前のヤンキーでもあるまいし。
踏ん張って抵抗しようとする私の努力はコンマ9秒で無に帰した。
「おい、市松っ!いい加減に」
外から―恐らく虎之助という名の子どもの声が響くが、気にかける様子はない。
縁側にまで引っ張られ、困惑する私に眩しい顔で市松少年が語る。
「っつーわけで取りあえず」
ゴンッ!
恐らく庭で殴り合おうぜ、と続けようとした市松少年の頭に拳が落ちる。
「……市松。」
低く、嗜めるような声。
何処かで聞いたことがあるような声に記憶を探っていると
「紀兄っ!」
薄っすらと涙を浮かべながら市松少年が声を上げた。
痛ってぇ……といいながら頭を押さえて市松少年が蹲ったおかげで見晴らしが良くなった。
呆れた顔で握った拳を解く青年と、だから言ったのに…と言った顔の子供――虎之助。
青年のほうが紀兄と二人に呼ばれる人物だろう。
秀吉に会ったあとこの部屋に案内した張本人。
何処かであった気がする顔と、唇を尖らせ不満を表現する少年、少年より遥か大人びた子供。
三者三様の顔を交互に見ていると、
青年が呆れた声で市松少年に向き直る。
「虎之助に呼ばれて来てみれば。何をしているんだ。いやこんなことだろうとは思ったけど。」
思ってたんかい。
作者「更新遅くなり申し訳ありません、何とか日付変更線から逃げ切りました作者です。」
三上「愉快な少年団に囲まれていた主人公です。」
三成「今回登場した人物の半分は後の敵、石田三成です。」
作者「という訳で今回は桶について」
三上「なぜに桶。」
三成「桶屋の息子が出たからな」
三上「…どこに。」
三成「そこに。」
作者「ぶっちゃけそんな活躍の記録はないけど猛将扱い、福島市松君は桶屋の息子として生まれました。」
三上「ちょっと酷くない?そして桶屋の息子紹介になってない?」
三成「まあまあ。」
作者「そんな市松少年の実家で作られる桶は、現代では考えられないような使い方をされることが多くありました。」
三上「現代の使い方が限られすぎてるとも言えると思うけどな。」
三成「流石に首桶は無いだろう?」
三上「首ッッッ!」
作者「まぁ食品を除けば首以外入れるものなんてそんなありませんしね。」
三上「物騒すぎる!」
三成「よく出てくる首の塩漬けはだいたい桶に入れるときの保存方法だな。」
三上「蕪の浅漬けみたいなノリで言うなよ。」
作者「まぁ冗談はここまでにしておいて。」
三上「心臓に悪い冗談だな!」
作者「桶はお酒や、味噌や醤油といった調味料を作る際に重宝します。これはあまり現代と変わりませんね。」
三上「意外と古くからあるんだな。」
作者「そうですねぇ、味噌は古くは飛鳥時代の頃からその原型があったとか。」
三上「そんな古くから?!」
作者「ひょっとしたらお米より味噌のほうが日本人にとってはソウルフードなのかも知れませんね。」
三成「兵糧としても活躍したからな。」
三上「うーん…最近食べていなかったことが悔やまれるなあ…」
三成「安心しろ、これより先は嫌になるほど味わえるぞ。」
作者「舌の肥えた現代人には少々つらいかも知れませんね。それはそれで。」
作者「ちなみに味噌と言えば、戦国時代の有名な武将に関する話があるのですが。」
三成「…あぁ…あれか。」
三上「…?敵に送るんだっけか?」
作者「それは塩ですよ。まぁ逸話の範囲を出ませんが。」
三上「…私も知っている人物か?」
三成「間違いなく知っているぞ。」
作者「まぁいずれ出てきますし、時間もありませんしその時にでも。」
作者「という訳で今回はここまで。次回は20日頃更新予定です。どうかお付き合いください。」




