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17.チームレベッカ結成


「タカマサ君! 私と班組んでくれないかな!」

「いや! タカマサ君! 私と」

「いやいや、タカマサ! 男同士で組もうぜ!」


 ベリーと話を終えて、実技棟に戻ると、突然、話したことも数回しかないクラスメイトの熱烈な勧誘を受けるタカマサ。

 

 レベッカを圧倒したタカマサに、男子は憧れ、そして女子は興味を抱いた。

 この世界において戦闘能力というのは非常に重要な要素であるため、その能力が非常に高いタカマサは魅力的に映ったのである。

 しかも、次の実地演習は魔物との戦闘が必ず行われる。レベッカは軽そうに言っていたが、それはレベッカだかであって、他の生徒からすれば、魔物などいくら弱体化されていようが恐ろしいのである。


「いや、えっと…」

「いいよね! タカマサ君! 私と同じ班でも!」

 


 クラスメイトの急激な変容にタカマサは驚きと戸惑いを隠せないでいると、タカマサの前にすっと、ある人物が割って入った。


「まあまあ、みんな、タカマサが困っているから、ね? ちょっと落ち着こう」


 その人物は興奮気味のみんなをなだめる様に、手を上下にさせながらそう言った。

 そんなタカマサを助けるべく、動いたのやはりこの人である。


「ア、アルフォンス…」

「そ、そうね! 確かにちょっと騒ぎすぎたかも…」

「そう…だな、悪い、タカマサ」


 彼の求心力は以前のままの様で、皆が落ち着いていく。

 

 イケメンで優しいというのはそれほどまでに有効なのだろうか。

 そんな風に考え、見ているとアルフォンスがこちらに振り返った。


「タカマサ、みんなさっきの戦いを見て頼りがいがあると思ってるんだ」

「あ、ああ。悪気がないのはもちろん分かっているよ。でも、俺、レベッカと組んでるから、レベッカにも相談しないと」


 タカマサがそう言うと、クラスメイト達は再びざわざわし始める。


「タカマサくんと、レベッカ様が…?」

「やっぱりそうなのか…!」

「いや、まだ判断するのは早いぞ…!」

「グフッ、尊い、尊い」


 そんな声がそこかしこから聞こえてくる。

 タカマサはなぜそんな反応をするのか、その意味が分からず、首をかしげている。


 するとタカマサにアルフォンスが近づき、小声でささやくように言った。


「タカマサとレベッカ嬢が少し前まで一緒にいたのをみんな知っているからな、もしかしたら好き合っているのかもなんて考えているんだよ」

「…ええ?」

「実際、男子からの誘いなんかは、良い感じに誤魔化して一切行っていないらしいしね」

「面倒だからだろ」

「君の為になんて噂もあるくらいだ。一部の男子達は嫉妬に燃えているらしよ」


 そう言いながら、アルフォンスはニヤニヤと笑い始めた。


「…嫉妬」

「そう、嫉妬。王太子の婚約者を続ける可能性が低いから、狙っている男子は多いのさ。君はそんな彼らにとっては嫉妬の対象になるんだ」

「うわあ、すごく嫌だ…」

「ま、仕方がないね。大変だろうけど」

「…」


 アルフォンスは引き続き、ニヤニヤとしている。

 俺の状況をそれなりに楽しんでいるようだ。


 そこでふと、思い立つ。


「なあ、アルフォンス。俺とレベッカの班に入らないか?」

「唐突だな…、でも、僕が入るのはレベッカ嬢が嫌がるんじゃないか?」


 アルフォンスはいじめの実行係でもあった。

 そんなアルフォンスとしてはレベッカの班に入るのは少し気が引けていた。

 しかし、タカマサとしてはそうは考えていない。彼はあくまで被害者だからだ。

 そしてレベッカとしても。


「いや、多分大丈夫だ。アルフォンスの事情はレベッカも知っているだろうから」

「しかし…」

「大丈夫だ。それにアルフォンスが入ってくれないと班員が足りない…」


 実際今のところ、班員はレベッカとタカマサのみである。レベッカも他の人の誘いはあるが断っており、タカマサも知らない人と同じ班になるのは少しためらっていた。その点、アルフォンスならば知っており、レベッカも面識があるはずだ。


「な、頼むよアルフォンス。それとももう誰かと組んだか?」

「…分かったよ。まだ僕も誰とも組んでいないから、よろしく頼むよ」


 良かった。あと一人、班員を集めればチームレベッカが完成だ。


「ありがとう、アルフォンス。こちらこそ頼む」

「まあ、レベッカ嬢とタカマサがいるなら安心だし、こっちも助かるよ」


 未だにざわざわとしている生徒達を横目に、アルフォンスはそう言って軽く頷いた。






 ***




「んうぅ…」


 昼休憩中の医務室。

 ベッドに横たわるレベッカの横で、本を読んでいると、ベッドからうめき声が聞こえる。

 本をパタンと閉じ、視線をベッドに向けた。


「起きたか? レベッカ」

「タカマサ……?」


 体を起こしながら目を擦っている。


「大丈夫か? 痛いところやおかしな所は?」


 医務室の先生に任せていたから大丈夫だとは思うが、それでも少し心配にはなっていた。

 自分の攻撃で怪我をさせるなどあまり望んではいない。


 レベッカは心配そうなタカマサを見て、少し微笑んでいた。


「大丈夫よ。特におかしな所はないわ」

「良かった」

「それにしても、あんなにコテンパンに負けたのは久しぶりだわ」


 これまで強者と呼べる生徒と戦ったことは数回しかない。

 さらに、ここまで全力で挑み、足下にも及ばないと思ったのは2回目だった。


「本当に強いのね、あなたは」

「…ま、これが編入試験満点者の実力ってことだよ」


 誇らしげに微笑んでみる。


「ふふっ、そうね」


 冗談だと分かったのか、レベッカもにこやかに笑っている。



「あ、そうだ。実地演習の班なんだけどな」

「誰か誘ったの?」

「あ、うん。アルフォンスを誘って、一応了承を貰ってる。どうだ?」

「…アルフォンスって、アルフォンス・アイリーンのことかしら」

「あ、ああ」


 レベッカの顔が曇る。

 大丈夫だとは思ったが、だめなのかもしれない。


「いや、レベッカが少しでも嫌なら…」

「え? いや、全然構わないわよ」 

「無理してないか?」

「アルフォンス君が気まずくないのなら。むしろ、彼とはあの一件以来話せていないから、いい加減、関係を修復しなければならないしね」


 思っていたよりも、しっかりとした言葉が返ってきた。

 レベッカはもう、気にしていないようだ。アルフォンスの内情も知ってのことだろうが、それでも関係を修復するとまで言える彼女のその精神には改めて関心せざるを得ない。


「そう、だな」

「残るはあと一人ね」


 この話題は終わりとでも言うように、レベッカはアルフォンスの話題から再び実地演習の話へと移った。

 その顔は本当にアルフォンスのことは気にしていないと言うような顔であり、取り繕っている様には見えない。


「誰かいるか?」

「う~ん、一人、いるにはいるけど…」

「良いじゃないか」

「その子、少し引っ込み思案でね。良い子なんだけど、運動とか苦手なほうなの」

「なるほど。レベッカ、アルフォンス、俺の中に入ってうまくやっていけるかどうかってことか」

「ええ、どうかしら?」

「…う~ん、アルフォンスがいるから大丈夫だと思うが、分からないな」

「そうね。…今から戻って話してみようかしら。あなたも彼女と話してみて」

「それが一番良さそうだな」


 レベッカは、ベッドから出て体をほぐす様に伸びをし始めた。

 靴を履き、寝てたせいで少し乱れた服を整えながら、同時に髪を梳かしている。


 タカマサもそれに呼応するように移動できるように準備をした。



「じゃ、行きましょうか」


 



 ***




「…と言うわけで、アイリスさん。どうかしら?」


 目の前の少女にレベッカは優しく語り掛ける。

 黒色の髪を目元まで伸ばし、小柄な少女は手をせわしなく動かしながら、チラチラとこちらを見ている。

 アイリス・アイリーン。Aクラスで一番と言って良いほど戦闘能力が低いが、学力は非常に高い。生来は研究職にでもなるのだろか。


「……でも、私、足手まとい…」


 聞き取れるか聞き取れないかくらいのか細い声でアイリスは呟いた。

 気にしているのは自分が入ることで、俺たち三人の順位が下がることだった。この実地演習は指定された魔物を倒すスピードを競う。そしてそれは成績にも大きく影響する。


「アイリスさん。初めまして、タカマサです」

「うぇっ…は、はじめまして」

「足手まといなんて、そんなことにはならないから気にしなくていいよ」

「で、でも、みんな、つ、強いし」

「大丈夫よ、アイリスさん。成績を気にするような人達じゃないわ」

「でも…」

「お願いっ! アイリスさん。じゃないと私、女子一人になっちゃうの…」


 わざとらしく、レベッカは言葉を崩してお願いをする。

 自分の魅力を理解しているのか手を合わせながら可愛げにお願いをする。

 

 それを見ていた生徒は男女問わず、固まってしまう。

 そしてそれを間近で受けた当の本人であるアイリスも顔を真っ赤に染めて固まっている。


「う、うぁ…」

「ね? お願い!」


 真っ赤にして先ほどよりもせわしなく指を交差させ続けている。

 

「わ、わかりましたっ……!」

「ありがとう!」


 レベッカはにこやかに笑い、アイリスの手を取り、間近でアイリスの顔を見た。

 いつものレベッカとは違い、可愛さが倍増している。

 そんなレベッカを見て、タカマサは唖然としていた。それは可愛さからではない。恐らく計算のもと、彼女はこういったことをしているからだ。思っていたよりも自分を正しく理解し、自分の武器を知っている。ただの魔法が得意な可憐な美女ではないと言うことを改めて認識した。


 

 


 しかし、こうしてタカマサ達は実地演習のメンバーをそろえることが出来たのだ。


 

 

 



 














 

 


 

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