50.御前会議の主役は王ではない
ドラゴンに向けて大砲を撃つ。鉄球がない空砲だろうと、ドラゴン側にしたら攻撃だった。怒り狂うかと思えば、銀竜は冷静にと呼びかける。
くるくると周り、攻撃の準備をしていた赤いドラゴンは、口から炎がチラチラ覗いていた。
止めてくれなかったら、あの炎が王宮を包んだかも。リュシーの前に出て、庇う所作を見せた白い竜が氷の矢を作り始める。正確には鏃のみだった。降ったら、雹害どころの騒ぎじゃないわ。
ドラゴンを怒らせた伯父様にちくりと嫌味を送る。銀竜は「おっと、尻尾が当たってしまった。この王宮の庭は狭すぎる」と言い訳しながら、門を吹き飛ばした。絶対に爆音の腹いせだと思うわ。音がした瞬間、ビクッとしてたの……見ちゃったのよね。
リュシーと舞い降りる私より、城門の瓦礫を越えるお父様達の方が早かった。
「兄上、お久しぶりですな。皆も揃ったことですし、『御前会議』とまいりましょう」
口調は友好的だけれど、声は尖っている。ドラゴンに向けた空砲、もし鉄球が装填されていたら……落ちた先にいるのは民よ。伯父様の最大の失態は、ドラゴンに武器を向けたことじゃない。国民へ敵対行動をとったことなの。
ご本人はまったく理解しておられないけれど。ある意味、ヴァレス国王と同レベルね。
御前会議とは、国の行く末を占うような重要な議題のみを扱う。御前の部分が適用されるのは、国民だ。ルフォルの教えの根幹にあるのは、王侯貴族は民の代表であるが主役ではない、というもの。
国という形を成し、方向性を定めるのは民の権利であり義務だった。貴族は執政権を預かるために、難しい学問を収めて特殊な仕事に就く。その対価として多少豪華な生活を約束される。あくまでも国の主役は国民なのだ。
伯父様はここを間違えている。王族同士で争うなら、王族をすげ替えればいい。それを判断する国民を置き去りに、民から人気のあるお父様や叔母様を大陸から追い出した。民の良き隣人であるドラゴンと契約する私を、利用しようとした。
言い訳や申し開きが通用する段階を越えたことを、伯父様だけが理解していない。
「お祖父様の教育の失敗ね」
「このレベルなら、躾だろう」
教育と呼ぶ前の段階だ。冷たく言い放つレオに、伯父様への敬意はカケラも感じられなかった。私も同様なので、反論せずに肩をすくめて笑う。
壊れた門の瓦礫は、お父様の後ろの若い騎士が片付けていた。彼らは貴族としてこの場に立ち、御前会議の主役である民を通す道を作る。役目を果たす彼らに、漁師のおじさんが協力し始めた。重い物を運ぶのなら慣れていると、農夫も手を貸す。
民と協力して国を維持する。正しいルフォルの姿がここにはあった。睨みつける伯父様には、まったく響いていないけれど……退席する方に鞭打つのは、私の役割ではないわ。お父様、しっかり叩きのめしておやりなさい!!




