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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
ダンジョン実習編
20/67

ネームドモンスター

二次創作お待ちしております。よろしくお願いいたします。

「水城! 水城!」

「馬鹿! お前まで死にたいのか!」


 ドワーフの教師が必死に抑える腕の中で、リタが泣きながら地面の大穴に向かって吠えていた。俺だってそうだ。飯を奢ってもらえそうになったビースティア程ではなくっても、あいつには入学に関しての恩がある。だからまだ返し終わっていないって言うのに、こんなことにあるなんて思ってもいなかった。


「でも、水城が、水城が!」

「今は諦めろ! それより自分が生き残る方が優先だ!」

「嫌にゃ! 諦めたくなんかないにゃ! 水城を助けに!」

「これ以上は授業妨害で単位剥奪するぞ! それでも良いのか!」


 その言葉が効いたのか、リタさんは信じられない物を見るような顔をしながら教師を見ていました。ですが、確かに今の彼女は大多数の生徒からしたら授業妨害をしている生徒なのでしょう。

 生死不明の生徒のために時間を無駄に使っている生徒だから。

 それが私たちのチームリーダーの様な人でなければ、いくらでも言いたいことはありましたが。


「でも、水城が」

「良いかお前ら! まずはこういう時は生き残る方法を考えろ! 全員死亡と一人生還では未来は大きく話が変わる」


 教師はそう言いながら、こういう緊急事態の時の対応を教え始めた。焦る自分の思いを押さえつけながら、俺は話を聞いた。


「まだ幸い俺達は浅い場所、入り口付近で事故に遭った。これは不幸中の幸いだ。何故なら、イルミシャ・サリア、鬼嫁の巫女の監視範囲内で事故に遭ったから地上では既に事故は知られているはずだ」


 その言葉に、私はある種の感動と恐怖を覚えました。ダンジョンさえも安全のための監視範囲内にある。それが鬼嫁の巫女の力。どんな力を使っているのかは知らないですが、本当なら救助隊の準備が始まっているかもしれないと。だから私は。


「とりあえずまずは地上に戻ろう」


 俺はリタを泣き止ませつつ、俺自身も落ち着かせた。


「水城さんならきっと大丈夫です。まずは私たちが生き残ることを最優先に、そうじゃないと水城さんだって悲しみますよ」


 最悪の状態も想定はしつつ、私はリタさんを慰めながら優しい言葉をかけた。


「ありがとうにゃ。そして、ごめんなさい。地上に帰りますにゃ」

「おし! お前ら緊急時の警戒陣形は知っているな! こういう時の帰り道は行きより何倍も危険だぞ!」


 教師の声を聞きながら、私は心の中で謝罪した。ごめんなさい、水城。後で絶対に、迎えに行くから、死なないで。




「いてて」


 体感落下した高さは10メートル程度、しかし痛みを和らげるためにどうやら『草編姫』が勝手に能力を行使したみたいだ。地面には洞窟らしからぬ草が生い茂っており、天然のマットを作っていた。式神が術者の了解を得ずに能力を行使するとしばらく顕現出来なくなるから勘弁してほしいが、それでも助かるためにやってくれたのだから今度褒めるべきか。


「さて、これからどうするか」


 洞窟の中で、孤立無援。それに救助のための安全領域と呼べる様な、何か目印になる場所は存在しない。


「動かない方が得策か」


 下手に動けばその分体力も消耗するし、喉も渇く。空腹や飢渇をごまかすには、出来るだけ何もしないのが一番だ。

 もちろん、場所が分かっていれば地図を頼りに移動してより分かりやすい場所に行くことも出来たかもしれないが、今はそんな余裕はない。


「とりあえず、このまま様子を」


 ザシュ!


「!」


 敵影あり! それも間違いなく右頬を攻撃されて傷を負った。最悪だ、もし敵の攻撃に毒とかがあったら今の攻撃で致命傷になりかねない! 


 フォン!


「‼」


 別の敵影⁉ しかし暗くて何も見えない!


「クソが!」


『お前さんが全力を出さない時、死ぬのはお前さんかお前さんの大切な仲間だ。それがダンジョンという場所だ』


 さっきの言葉が脳裏に浮かぶ。教師の言葉がこうして自分に返って来る。

 それを実感しながら、俺は何とか呪符を取り出すと霊力を込めて火を灯した。


「! こんなにいたのかよ!」


 それは間違いなくモンスターだった。ウォークシャドウ、ゴブリン、未知の二足歩行をした人面犬、他にも沢山のモンスターが俺を狙って囲んでいた。


『ウがアアアアア!』

「此畜生!」


 そう叫ぶと、俺は呪符を大量に取り出して霊力だけを込めて投げ放つ。


「! 嘘だろう!」

『ウガアアアアアアアアア!』


 だが、モンスターは止まらない。ただの霊力を込めただけでは倒せないようだ。


「チッ!」


 なので、霊力を操作して火を付けたり、水を出現させたり、岩に変えたり、とにかく何でもした。攻撃に使えるような手段はすべて使って、攻撃をした。そして、霊力を使って身体能力を向上させれば、それでも戦えると知っているため。


「おりゃあ!」

『グギャア!』


 格闘術も使って戦った。モンスターは攻撃力が強いが、それを逆手にカウンターをすれば有利に立ち回れると気が付いたので、利用させてもらう事にした。


「!」


 だがその時、初めて気が付いた。


『クケケケケケケケ!』


 四メートルはありそうという、白骨に黒い布をかぶせただけの様な、羊の頭骨からぎょろりとした目玉がのぞいているような巨大なモンスターが自分を見つめていることを。


 それは後に、ネームドモンスターと呼称されるモンスターの一種である『誘いの牧羊神父』という危険なモンスターだと教えられた怪物との邂逅だった。

結構ネームドモンスターアイデアいっぱいあったんですよ。『黒衣の魔女』とか『禍の蝸牛』とか。まあでも最初位は攻撃滅多にしない代わりに、他が厄介だから強いモンスターにしようかなって。

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