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少し近付いて…

更新滞っておりまして申し訳ありません、宜しくお願い致します

マリリカの夢の店長、バードさんが作った季節限定ルーモのタルトの焼き上がりを、今か今かと待つ私…


ルーモって甘酸っぱいミカンとリンゴの間?みたいな果物なんだよね~季節の変わり目に採れる果物なのだ。この世界には四季は無いけど、冬と夏の二季はある。今は冬になり始めの季節なのだが、私の体感的には秋っていう感じなんだけど…秋ですね~とはこちらの世界の人は言わないらしい。


異世界は奥が深い…


「ルーモ焼けたよ~」


「はいっ!」


お店の奥の厨房から甘酸っぱ良い香りがしてきて、思わず微笑みが漏れる。一人分のサイズに切り分けたルーモタルトと奥さん特製のマリリカの夢ブレンドのお茶をお盆に載せて、厨房から店内に足を踏み入れた。


そこはパリのシャンゼリゼ通りだった!(あくまでイメージです)


マリリカの夢の普通のテーブルに肘を置き、マリリカの夢の普通の椅子に腰かけて足を組む。ただそれだけなのに……絵画のような人がいる。


見て下さい!あれがパリの有名な某美術館に展示されている、シュリーデ=プレミオルテの肖像画でございます!


肖像画…失礼、肖像画の如く神々しい美しさを放ちながら、シュリーデが動き出してゆっくりと私の方を見た。


そう……天変地異の前触れか…シュリーデがフラリとマリリカの夢にやって来て、なんとお茶を飲んで帰ると言い出したのだ。


ちゃんとしたお客様として来たのは初めてじゃないかな?


私は一度、呼吸を整えてから微笑みを浮かべ…ジッと私を見詰めるシュリーデのテーブルまで歩みを進めた。


「お待たせ致しました、季節限定ルーモタルトとマリリカの夢特製ブレンド茶でございます」


「…」


シュリーデは無言でこっくりと頷いた。緊張するぅ!!


食器の音を立てないように静かにテーブルの上に置き、ナフキンの上にフォークとナイフを配膳した。


シュリーデさんが研ぎ澄まされた殺し屋のような目をしているのは、気のせいか?


お茶の入ったカップをシュリーデの前に置き、残りのお茶が入ったティーポットをテーブルに配置した。


「ごゆっくりお楽しみ下さいませ」


軽くカーテシーをしてから、シュリーデを見ると置いた茶器を頷きながら確認して、フォークをジロジロと見ている。もしかして食器が手垢などで曇って無いか確認しているのか?シュリーデは何をジャッジしてるのか、思わずシュリーデの手元を見詰めてしまった。


シュリーデの手に給仕実技の採点用紙を挟んだクリップボードが見えた気がした。シュリーデがそこに×や△を書き入れている幻まで見えるようだ。


シュリーデは何度か頷いた後、カップを持ち上げてお茶を優雅に飲み始めた。


「…以前、頂いたお茶とは少し違うな…」


ん?私に聞いているのよね?も、もしかしてこれもテストなの?


確か…以前、シュリーデがお店に来た時に出したお茶は、黒茶だったはず…


「今日お出ししたお茶は、黄茶と花蜜茶を合わせたお茶になります」


シュリーデは何度か頷くと、またエアー?採点をしているような目をしてお茶を口の中に含んでいる。


もうっ緊張するなぁ!


その後、窓際のテーブルのお客様に呼ばれたので、シュリーデにカーテシーをしてからその場を離れた。


その夜…屋敷に戻ってシュリーデの沙汰を待つ…違った、今日の給仕の感想を聞くことにした。


今日はシュリーデは遅くなるという事で、夕食は一人で食べた。


やっぱり一人で食べるのは淋しいな…としんみりしている所へメイドのネリーが手紙を持ってきた。


「リナエルからだわ!」


リナエル=サーガ伯爵令嬢…唯一と言っていいほどの、数少ない私の友達の一人だ。手紙はお茶会への招待状だった。お友達も誘って来て欲しい…と書いているけど、文面の最後で無理しなくても大丈夫だからね。と書かれていた。


お友達…ファンナ様を誘ってみようかな。リナエルは敏いからファンナ様の過去の色々を上手くフォローして他のご令嬢の橋渡しをしてくれるかもしれない。


本当は王女殿下の私が率先して橋渡しを買って出ないといけないんだろうけど、コミュ障でゴメンなさい…


まずはファンナ様にお誘いのご連絡しなくちゃ…


そして夕食を食べ終わった頃にシュリーデが帰って来たので、大人しく今日の評価を受けることにした。


「本日の給仕は如何でした?」


軽めの夜食を召し上がった後、お茶を飲んでいるシュリーデに恐る恐ると聞いてみた。


シュリーデは少し顎に手を当てて考えていたけど、大きく頷いてからこちらを見た。


「そうだね、及第点かな…」


シュリーデに褒められた!なんだこれっめっちゃ嬉しい!


嬉しさの余りに勢いでリナエル=サーガ伯爵令嬢のお茶会に誘われたと伝えると、少し口元を綻ばせながら


「楽しんできて」


と、言われた。


そしてお茶を飲んでいるシュリーデを見ると、ちょっと顔色が悪い。


そう言えば昨日もだけど、今日も帰りが遅かったけど警邏で何か事件?とか起こってるのかな。


こうやって疑問や聞きたいことがあっても自分から聞いていけないのが、コミュ障のダメダメなところだろう…だが、シュリーデと夜のお散歩をしていてマリリカの夢の話になった時に、最近のシュリーデの忙しさの原因が分かったのだった。


お風呂に入った後、中庭をシュリーデとゆっくりと散策している時に聞かれたのだ。


「そういえば…マリリカの夢は大丈夫か?」


「?」


首を傾げてシュリーデを見上げると、シュリーデはちょっと怖い顔をしている。


「最近、宿屋や定食屋に怪しい風体の客が現れて、狼藉を働いたり金品を巻き上げたりする被害が増えている。目撃者の証言からこの辺りでは見かけない輩との線が濃厚だ。王都にそういう輩が流れ込んできている。ローズも気を付けて…」


そんなゴロツキみたいなのが、ウロウロしてるのぉ?それは怖いわ…そうか!そのゴロツキの取り締まりでシュリーデが最近疲れていたのかも?


私の顔色が悪くなったのに気が付いたシュリーデが、私の手をふんわりと握ってくれた。顔を上げるとシュリーデは相変わらず無表情だけれど、ほんの少し目を和らげている…気がする。


前までは気が付かなかったシュリーデの表情の変化が、分かるようになったことで嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちになる。


シュリーデの重ねられた手を少し力を入れて握り返すと、シュリーデも握り返してくれた。


手が温かい…もっと近付きたくなった。でも…拒まれたらどうしよう、そう思ったけれど思い切ってシュリーデの指先に自分の指先を絡めた。


「…!」


指先を更に強く絡めてくれた。


「ローズ…もっとこっちへ…」


シュリーデが繋いだ手を引っ張ったので、引かれるままにシュリーデの体に凭れかかった。シュリーデは私の体を包み込むように抱き締めてくれた。


自然とシュリーデの背中に手を回して、私もシュリーデに抱き付いていた。


やっとこの温かさに包まれた…そんな感じの謎の安堵感が感じられた。シュリーデの腕の中で大きく深呼吸をした。良い匂い…石鹸の匂いかな?


ドキドキとは違う、嬉しさと…何だか泣けてくるような切なさとの後に、不意にシュリーデから口付けられたが、全然嫌じゃなかった。何度も軽く口付けられて合間にシュリーデが


「可愛い…」


「柔らかい…」


とか、ボソボソ言っているのが妙に生々しい…


夜空の下…暫くシュリーデとイチャイチャした後、手を繋いだまま部屋に戻った。周りの使用人達の生温かい眼差しに居心地が悪かった。


°˖✧⁰ ⁰✧˖°°˖✧⁰ ⁰✧˖°


リナエルのお茶会にファンナ様をお誘いすると、すぐに快諾のお返事が来て安心した。


そしてお茶会の当日、ファンナ様のお屋敷にお迎えに参上した。


ファンナ様、今日もお綺麗だな~おまけにお召しのドレス…ベリオリーガお兄様カラーに溢れてませんこと?瞳の色の濃紺色と髪の色の金色…お兄様の贈り物でしょう?


そんなファンナ様と馬車に乗り込んだ。馬車の中では王太子妃教育疲れるねぇ~とか、婚約式の準備怠いわ~みたいな話で盛り上がった。


私もファンナ様もそれほど多弁な方ではないけれど、暑苦しいベリお兄様の話題に…大いに盛り上がった。


「私…こういうお茶会に参加させて頂くの久しぶりで…」


そしてファンナ様はサーガ伯爵邸に着いてからは、そればかりを口にしている。


「私も久しぶりですが、リナエル様は快活でお話し上手なご令嬢ですので、きっとファンナ様もすぐに仲良くなれますわ」


こんな陰キャと長年友達してくれているのだから、絶対ですよ!


ファンナ様とふたり、出迎えてくれた侍従に案内されて中庭に到着した。


するとスカイブルー色の綺麗な髪を揺らして、妖精のようなリナエルが優雅に近付いて来るのが見えた。


「ローズベルガ殿下、ファンナ様、本日はお越し頂いてありがとうございました」


リナエルは今日もお人形のようなカワイイ顔だ。ファンナ様を見ると嬉しそうに破顔している。


「ローズ様、もうすでに気後れしていらっしゃるんじゃない?実はね…最近舞踏会でお会いしたご令嬢がね…ローズ様とは親戚で何度かお話しして、気心が知れているから是非茶会にご一緒したいと言われてね、今日ご招待しているのよ?」


「…え?」


親戚…?会った事のある方?


従兄妹は辺境に住んでいるし、今の時期は王都に遊びに来ていないんだけどな?と、思いながら周りにいるご令嬢を見まわして、ある令嬢を見て血の気が引いた。


「お久しぶりでございますわ、ローズベルガ殿下」


そこにいたのは、好戦的な微笑みを浮かべたララベル=ミューデ子爵令嬢だった!おまけに…ララベル様の後ろにはアエリカ=ラナウェル伯爵令嬢が立っていたぁぁ!?


中ボスとラスボスが一堂に会している!!


私の横でファンナ様が息を呑み、体を震わせているのが分かったので急いで手を握って肩を抱き寄せた。


ララベル様の後ろに立っていたアエリカ様はニヤリと笑うと一歩前に出てきた。


捕食者(ララ&アエ)と捕食される小動物(ローズ&フェンナ)の間に……なんと


妖精リナエルがスラリと立ち塞がってくれた。


「あなた…アエリカ=ラナウェル伯爵令嬢ですね?」


ひえええっ!?どうしよう?ボス戦に突入?どうしたらいいの!?シュリーデーー助けてぇぇ!?



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