Review(レヴュー)!! 藍色の炎 プロローグ
「きたあああああああああああああああああああああああぁぁっっ 」
逢坂美和は思わず絶叫した。
日刊ランキング。ファンタジー部門99位。
意味が解らない方に軽く解説。『文章』『ストーリー』の五段階評価はPとして計上される。これにお気に入り登録数一件につき2pが追加されるのは以前述べた。これら総計Pの習得数は『日刊』『週間』『月間』『四半期』『累計』でそれぞれ計上される。累計はそのままの意味だが、日刊はその日もっともPを稼いだことを意味する。
即ち、『最も勢いがある』。それが日刊ランキングである。
その日刊ランキングは更に細かくジャンルごとに分類される。
他ジャンルの日刊ランキングの100位以内というのは実はそれほど難しくはない。
試しに今日、何か学校で有った事を「学園」で投稿してみて欲しい。たった2pでランキング末尾に入る。
「学園」は4,378作品(2012/6/16現在)。誰かが支持してくれれば、それだけで4000人以上の中の特別な100人だ。おめでとう。
「思えば長い道のりだったわ」
『初投稿』というタグをつけた。『拙いですが許してください』と書いた。
ファンタジーで闘うのは無謀だと知ったら速攻でジャンルを「戦記」に切り替えた。
美和はかなり現実主義者だった。
ファンタジーは30,211作品。戦記は1,364作品だ。
2P取ったら日刊ランキングに入るのだから、何とかなるというのが美和の考えだった。
まずは実績つくりだ。人目に触れなければ見てもらうことすらままならない。
そう思ったら「楽じゃないか?! 」と思うのだが。それを毎日やれるかというと、また別問題。
マイナーなジャンルというのは当然読者さまも少ないのだ。
其の中で、毎日2P以上をとり続けるとしたら、それは凄くいい作品といわざるを得ない。
『普通』を常に続けることが出来るなら、それは優秀な人間と言われる。
そして、美和は『普通』を続ける程度には優秀であった。
最初は誰もがファンタジーを書くのだ。そして感想がもらえず絶望する。
美和の場合、『お気に入り』が増えるごとにこまめにジャンルの違う話を書いてジャンル設定を変えていた。
いわゆるジャンル詐欺という書き方である。実際はファンタジーなのに『VRMMO』と銘打ってみたり、コメディなのにホラー。学園なのに推理。枚挙に暇が無い。
「ワン●の作者だって、野球の話書くなら野球の島を出すっていってるし! 」黙れ。美和。
「小説家になろう!」の小説情報上は推理要素がまったく無くても「ミステリー」ジャンルに設定はいつでも可能だ。事後から変える事も簡単だ。マイナージャンルからはじめ、徐々に、徐々に読者を増やし、やっとファンタジーにジャンルを戻したのである。色々と、お疲れさまである。
やってはいけないとは言わないが、褒められたものでもない。
「そして、やっとファンタジー日刊99位っ! 総合ジャンルで76位っ! やった~! 」
ファンタジーの日刊100位と言うのは、統合日刊ランキングに乗ったのと同じである。
それくらい、それくらい。ファンタジーは層が厚い。その投稿作品。実に30,211。最大勢力である。
愛想よく、丁寧なレスを心がけている美和には『逆お気に入りユーザー』も多い。つまり、美和自身を気に入っている人々であるが。
「このまま、勢いにのって、1位とか行っちゃったら!! 」
既に彼女の頭の中はバラ色の妄想爆裂中である。どうしてくれよう。この娘。
「書籍化とかぁ?」
妄想に駆られた美和は高潮した頬を押さえてPCの前で「キャ♪ 」と恥じらいの声をあげる。
「桜美先生! サインください! とか?! 」
キラキラの美少年に囲まれてサインをせがまれ、戸惑う自分を想像して「キャー! 」と思わず立ち上がる。
「どうしよっ! どうしよっ! 」
思わずPVとユニアクを何度も確認してしまう美和。マトモに考えて二時間に一回しか更新されない。
「小説家になろう!」の通信環境を悪くしている原因の一端だが、わかっていても辞められないというやつだ。
F5を思わず連打してしまう美和。
「感想ついてないかなっ! 」「メッセきてないかなっ! 」「活動報告にレスないかなっ! 」
さらに、仲の良いユーザーさんの活動報告にレスをつけるべくチェックしだした。
ちなみに、最短10秒でレスした読者さまや友人の作者にレスをかいている。
気持ちはわかるが、落ち着くべきである。
「ランキングタグをつけて、別作品、特に短編版へのリンク先を作るといいすよ」
知り合いの作家がそういって、「他の人も役立つ情報ですので」と丁寧なランキングタグの設定の仕方を活動報告の返信として書いてくれている。
「ああっ! そうなんだっ! 長編をみて長さに躊躇するからお試し短編版っ!?
お試し短編版を見て長編版を見たくなるっ?! すごいっ!! そうしようっ! 」
イマイチ、ランキングタグ設定の存在意義が判ってなかった美和だが、タグ自体は理解していた。
というか、Web関係の仕事をしていてCGIを知らないなんてありえないだろう。
知りすぎるがゆえに、一部だけ制限解除している理由がイマイチ判っていないというヤツだ。
「えっと。えっと……。『凄いっ! はじめてしりました! ありがとう! 』とっ! 」
本当は知っているけど、タグ制限があるので忘れていたとか面倒だった程度の理由だ。
でも、長編を短編版にまとめる能力を読者様に見せるということが出来るのは目から鱗だった。
だから、ウソではない。たぶん。
「『ハル・リヴァ』さんって。皮肉屋な作風で下品だけど、紳士的♪ 」
「美形だったらどうしよう!! 」どうもならん。知らない人だし。
「だめだめっ! 私っ! あああんっ?!」
顔を赤らめ、全ジャンル日刊に乗った喜びに悶える美和。
コレでも32歳である。 おちつけ。
「書籍化しちゃったら、会社になんといおう?
仕事好きだしっ! でも小説も好きっ! 『小説を書くために仕事は要らないだろう』とか言われたらどうしようっ!
春川君とか、私がいなくなったら仕事できるかなっ? 不安だっ! 不安だよっ! 」
……他人の心配はいいから。
さ っ さ と 更 新 し ろ よ 。
あと二時間で普段美和が更新している時間になってしまう。
時間を決めて投稿し、1秒でも遅れたら活動報告で謝罪する美和はとてもマメだった。




