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「更新完了。っと」そういって霧島はスマートフォンを投げ出して澪のベッドに転がって見せた。
彼は澪のただ一人の友人だが小説では師匠と言える。
彼が更新するからと称しては勉強中の澪の隣でスマフォをいじっている姿は水鏡家ではよく見かける光景だ。
霧島は勉強が出来る。東大に余裕で入れるレベルらしい。本当に色々出来るやつだ。
スポーツも出来るしスタイルもいい。顔がちょっと不味いだけで。
余談だが彼の名前。『和人』と澪が呼ぶとカップルと誤解されるため、
暗黙の了解で澪は霧島を下の名前で呼ばない。意識して呼び捨てにしている。
「霧島ァ。 人の家でなろう書いてるんじゃねぇよ」
自分が更新したいなんて絶対言えない澪。とはいえ、更新は更新でも『最後の更新』のつもりであるが。
『小説家になろう! 』ではこまめに分けて各話として掲載することが出来るほか、作者の意思で完結設定に変更することが出来る。完結済みの作品は半日はトップ頁に掲載され、最後の耳目を集める仕組みだ。
「いいじゃん。あと、その補助線はイマイチだな。幾何学ってのはアイデアと美的センスなんだぜ? 」
マメに勉強も教えてくれる霧島。なろうばかりで自分の勉強はどうしたというと澪のノートをコピペしている。
授業中に黒歴史ノートにアイデアを書き溜め、後で澪のノートに頼る。
重要ポイントは「わからない所があるんです! 」と職員室に行く。教師達との仲も良い。実に要領のいいヤツだ。
あとで勉強は澪に教えているので深夜まで澪の家に入り浸り。
なろうを書きまくって飯を食って帰っても澪の両親は何も言わない。むしろ塾代不要で大歓迎。
そんな要領の良さが澪には気に食わないときもある。
「うわ。ブ男の非モテが言ってくれるよ」「お前は外に出ろ。 決 闘 だ 」
本当に仲がよい。ちなみに、霧島は性格もいいので実は女子に人気がある。
霧島がモテナイのは女子から見ても可愛いすぎる澪と一緒にいるせいだ。その事を二人は知らない。
「こうみえても、俺様の逆お気に入りユーザー様には女子中学生もいるんだぞっ? 」
「うっわ~。引くわ」澪は酷い事を言う。
ちなみに、活動報告(割烹と略される)にレスしてもらったことのない澪は大いに嫉妬している。
「やかましいっ! 可愛いんだぞっ! こうっ! 話作りに詰まって御互い相談したりだなぁ」
「人様の活動報告はチャット会場じゃないんだぞ。皆が閲覧するんだから自重しろよ」
うがああああああああああああああああああああ(作者悶絶)。
「うわああああああああああああっ????!!!!!!!! 」
何気なく自分のスマフォを確認した澪は奇声を放った。
それを見て霧島は思わず。「? どった? 澪タン? 」友人を心配して何が悪いのだろうか。
霧島は澪のチョップを食らって「俺だけ澪タンといって殴られるのは理不尽だ」とぼやいた。
はじめてみる、赤い、小さい。それでいて目を引く文字。
「ここここ、これはっ??!! 」
澪のユーザー頁の上部に見慣れない小さな小さな赤い文字が表示されていた。
「おい。澪。どうした。なんかあったのか」
霧島が性懲りも無く澪のスマートフォンを覗き込もうとするので華麗にかわし、
霧島の背後に回り、足親指カンチョーを決める澪。多芸な男である。悶絶する霧島。
しかし澪は別の意味で悶絶中である。
澪の母親が見たら同性愛の事後と誤解してもおかしくない状況だが二人はいたってノーマルだ。
澪の驚きと戸惑いを説明したいところだが、作者の筆では説明しがたい。
このコミュニティサイトでは個人への感想、メッセージ、活動報告へのコメントが行われたという告知はユーザー専用ページの上部に逐次告知される仕様だが澪はそれを見たことがないのだ。
そして、それは澪が望んでも得られなかった『感想』では無かった。
澪こと「Mio」のユーザーページの上部を飾っている赤い小さな文字とは。
06月16日 16:06 書かれたレビュー一覧が更新されました。




