二次創作が好きな男の子 エピローグ
大きな宇宙に対して小さな青い星がある。
其の星に、『人類』は70億いるという。彼らが幸せか。不幸せか。それは。知らない。
この物語は、青い星の上に住む、二人の少年の物語。
……。
……。
「『ふはははは~~~~~~~~!
この俺様が、簡単な悲劇で終わらせると思ったか~~!』と……」
川島美幸は大笑いしながら、
荒れに荒れまくる自作の感想欄に返信。
PCを前にゲタゲタ笑っている。本当に、本当に。性格が悪い。
これでそこそこの読者さまに支えられているんだから更に始末が悪い。
「おーい。美幸~! サッカーいこうぜ~! 」
川島家のマンションのドアが開き、隣の家の住民である里中家の長男、
義樹が入ってきた。美幸の親友でもある。
……そしてため息。
「お前、またソレかよ。こりねぇなぁ」
「俺様が、削除ごときにひるむと思うかあぁぁぁぁ~~~~~~~!
ほかが撤退した今! 新作のチャーンス!!! 」
そういって笑いだす美幸を義樹は可哀相な子を見る目で見ている。
「アイム ナンバー ワーーーーーーーーーン!!!!! 」
「一回で良い。マイナージャンルでいいから。……一位取ってから言え。
……お前、また勝手に人を作品にだしやがって……」
そういってため息をつく里中少年は。
チト背が高いものの、『女性も羨むほどの美少女。もとい美少年』だった。
そして、何故かボロボロの女性物の服を着ている。
まるで変態だが、彼曰く「凄く大事なもの。だったと思う」だそうだ。
彼自身はノーマルな性癖なのだが、かなり良く誤解されている。
なおもゲタゲタ笑う美幸に呆れる義樹だったが。
「あれ? まったまった! プラウザおかしい! 」「へ? 」
06月 16日 00時 31分 書かれたレビューが更新されました
「は? 」「は??!! 」
「……これって」 泡をくってその赤い文字を何度もクリックする美幸。
『……』二人は呆然としている。そして『ククク』と笑い出した。
『いぇぇぇぇぇいいいいいいいっっ!!!!!!!! 』
御互い、パァン! とハイタッチを交わす。
「俺様の作品を評価するやつが遂に現れたな」
「いいなぁ。俺もサッカーで実力を発揮したいよ」
里中はレギュラーを目指しているが、いかんせん女装趣味(?)が災いしてレギュラーになかなかなれない。
「そのキモイカッコウを辞めれば」「なんでだろう。すっごく大事なものに感じるんだ」
そういいながらサッカーボールを持って駆け出す二人。
……里中少年の脚が。止まった。
「どうした? 」美幸が問うと義樹は「この、街角の電柱。すっげ~大事な気がする」と答えた。
美幸も見てみるが、普通の電柱に過ぎない。「頭でもうったか? 」
「かも……」まぁ、女装している時点で正気を疑うが。
「……」「……」気がつくと、電柱の横に凄い美少女が立っている。年齢は二人と同じくらい。
「まさか。……アイドルの桃衣美玖!!! 」「 ……誰? 」
義樹は自分の美貌にしか興味を示さない。残念な子だ。
「今をときめくジュニアアイドルだよっ! 12であの国民的グループに入ったんだっ! 」「へぇ 」
「ちょっと。そこの変な格好したコ。私を知らないの? 」「知るわけないじゃん」
義樹は堂々と胸を張った。その容姿は少女に負けていない。恐ろしい女装子っぷりである。
桃井美玖は冷たい目で義樹を睨んでいたが、ふと柔らかい表情になった。
「……」「……」
駆け寄ってきた桃井は、女装子の義樹の唇に優しくキスした。
「お、おまっ??! 」「?????!!! 」
慌てふためく美幸。
「おまえ、俺というヤツがいるのにっ! 」「誤解を受ける表現を使うなっ! 」
「童貞王に俺たちはなるって誓っただろうがっ!! 」「どうやら、俺は今ニ次元に目覚めたようだ 」
「目覚めるなら三次元だろうがっ?! 桃ちゃんのキスッ! キスッ! 死ねぇぇぇぇぇっ!! 」
大騒ぎする二人の中学生を尻目に、美玖は近くの車に乗った。
「……出して」「いいのかい?」青年は美玖に微笑む。
「……私が、アイドル。みゆきちゃんが脚本家。そして、ヨシキが、監督」
約束、まだだから。そういって少女ははにかんだ。
「それまで、私の服、預かっていてね。ヨシキ」
「いいなぁ」助手席のポーとした美少女が微笑む。
其の様子に運転席の青年が「俺がいるだろ」と膨れた。
――― その車には、「フラワー事務所」という社名が書かれていた。 ―――
「またあいましょう。私の……ヨシキ。みゆきちゃん」
其の呟きは軽自動車のエンジン音で消えてしまうほどの小さな呟きだった。
……夢だったのか。
美幸の描いただけの物語だったのか。
いや。決してそんなことはない。
あのときの皆の記憶は……消えたが。
美幸の、義樹の心にはあの勇気が。優しさが息づいている。
勇気と優しさだけではない、傷ついた心も。
その心を癒すほどの大きな、大きな力も。
二人の夢を支えた『マーチ』は消えたが。
二人が。『あなた』が。勇気を。愛する言葉を思い出す限り。
『マーチ』は何度でも蘇ります。
そして。二人が。皆さんが輝く日が。いつか。きっと。
~ 二次創作が好きな男の子 おしまい ~
(次回予告)
「私は、悲劇が書きたいのにっ!!!!! 」
沸き立つ感想欄。「チンポチンポイェーーーーーイ! 」
次回。「悲劇が書きたい女」
御期待ください。




