ボッキンボッキン 脂肪とフラグ(さお)
「はぁい♪ 今をときめくスーパーアイドル。鏡●リンちゃんの慰問だよ~♪ 」「死ね」
翌日、病院にやっぱりキモイ中学二年生が某楽器ソフトのコスプレをして登場した。
勿論、義樹だ。マジで空気読まない。自重しろよ。
……何故リン。レンにしろよと読者さまも考えるかもしれないが、
どっちにせよムキムキのコイツでは似合わない。
「二年前までは超似合っていて写真撮られまくりだったのに~! 」
それ、変態。
中学生の成長は早い。一年で十センチ二十センチ伸びるのはそんなに珍しくはない。
特に彼の場合。「ラグビーなんかやるからだ」ラグビー部の皆さんごめんなさい。
「相撲部よりいいじゃないかっ! 」
ちなみに、当時の義樹は今では信じられないほどの美少年だった。
なぜ強いのに相撲部に入らなかったのかと言うとどうみても女の子の容姿だったので入部拒否されたからだ。
ふんどし姿の貧乳美少女にしか見えないとかありえんから。
ちなみに、相撲部の部活動はフル●ン標準装備だ。
神事である相撲と神聖な土俵の周りで部員も先生も生ボッキンボッキンになってしまうのは問題がありすぎる。
中学生は第二次性徴真っ只中だ。
胸が擦れたら痛さと謎の嫌悪感に悶絶し、チ●ポの皮がめくれだして激痛と嫌悪に悶絶し、
首に息をかけられたら悶絶し、勃起が始まれば死を意味するのに30分間勃起しまくり。
オ●ニーを覚えればサルのように七連発とか余裕すぎでした。
イタイイタイ痛い痛いキモイキモイ なにこのキモイ感覚。でも辞められない!
くやしいっ! 赤本で抜いちゃうなんて! (ビクンビクン)
トイレで大便をすることは死を意味する。
まして、勃起しながら大便器に駆け込めば、
「アイツ、ボッキンボッキンでウ●コいったぜwww」「ヤダー! キモーい! 」と噂になること火の如し。
(あとは中学生なので口に出して言いません。聡い子は「アイツアレだな。アレで入ったな」とかいってます)
閑話休題。
「ちょっとカッコよくなろうと思ったら、
適度な運動とバカ食いとマッスルマッスルスクワットで気がついたらこんなでかく野太く」
そういってマッシブポーズを決める義樹。3年前までの義樹の渾名は「美樹チャン」である。
文字が似ていたので、本人も『美樹』と書いて全問正解なのに0点を取る偉業をなしてからの渾名だ。
そんな義樹を冷たい目で眺めていた美幸は、義樹の様子がおかしいことに気がついていた。
……ハイテンションなのは変わらないが。
「……あいつの服だよな」「……うん。お母さんが遺言だから受け取ってくれって」
サイズが合わなさ過ぎて所々破れまくっている。
「……間に合わなかった」
「いや、俺も知らせなかったんだ。悪かった」
あの子は、このバカが好きだったのだ。黙っておけといわれたので墓場まで持っていくつもりだが。
何処の思春期の女の子が。
頭が禿げ上がって骸骨のようになり、全身に器具がついた姿を好きな子に見られたいと思うだろうか。
……ましてや死に際の最も苦しむ瞬間を。初恋の、一番好きな子に。
「……あれだ。元気でお前とバカやってる時の姿でお前の記憶に残りたいっていってた」
肩を震わせて泣く義樹の尻に。
――― ブスッ! ―――
「ぎゃああああああああああああああああ!!!! 」
勝ち誇る美幸。
「これが必殺の六本指カンチョーだ。終に、終に習得した! 」
胸を張る美幸に義樹は「コイツ、女だったらなぁ」と嫌味を言うので、
「お前は、ダイブすると世界中が性転換する鏡に突っ込んで首を切って死ね」と返す美幸。
「アイツは、人々に希望をもたらす、アイドルとして生まれ変わったのだ! 」
そういって憚らない美幸に苦笑いするしかない義樹。
「どこの転生トラックだよっ! 」「手間が省けたなっ! 」
仲間相手に酷いことを言うが、そうでも言わないとやってられない。
「……そうだ」「ん? 」
「アイツと俺が踊ってる最後のビデオ。編集したんだ。見るか? 」
むしろ見てくれ。と義樹の目は語っていた。




