2番目の男
***BL*** 僕は二番目の男。彼には地元に彼氏がいて、遠距離恋愛をしているから。ハッピーエンドです。
彼には彼がいる。
遠距離恋愛。
相手は高校の同級生。
大学進学で彼が上京、彼氏は地元に残った。
大恋愛で、彼が上京する時は大変だったと聞いた。
長期休暇が楽しみで、地元に帰り、ギリギリまで実家で過ごすと言っていた。
大学の夏休みは長い。
早々に地元に帰り、短期のバイトをしながら、毎日デートをする様だ。
それが、僕の友達。で、好きな人。
だから、僕は長期休暇が嫌いになった。
大好きなあの人がいない世界。
連絡しても返事が無い。
早く帰って来れば良いのに、、、。
そればかり考えているから、時間は止まった様に遅い。
大学が始まるとやっと彼に会える。
それからは、毎日昼食を一緒に摂り、時間が合えば一緒に過ごす。
ただ、僕の気持ちは彼に届かない。
好きだと思うのは、俺ばかり。
*****
彼が熱を出して大学を休んだ日。助けてって連絡が来た、僕は彼のマンションに行った。
ワンルームの学生用のマンション。
入り口でインターホンを押し、暫く待つ。
彼は寝ているのか出なかった。
もう一度押す、、、。
出ない。
もう一度、、、。
仕方が無いからスマホの通話ボタンを押した。
出る気配は無い。
彼から連絡があったから、色々買い出しをしてきたのに、、、。そう思いながら、ため息を吐いた。
漸く彼から、「インターホン押して」とSNSが来た。
部屋番号を押して、呼出ボタンを押すと無言で自動ドアが開いた。
部屋を探して、ドアのインターホンを押す。
返事は無い。
玄関の前で20分は待った、、、。
僕は仕方が無いから、玄関先に買った物を置いて、SNSで連絡をしてマンションを後にした。
*****
本当は彼の様子が心配だったけど、インターホンを押してもSNSで連絡しても返事が無ければ、僕に手立ては無かった。
外は冷たい雨が降っていた。彼の玄関先にコンビニで買った物を届けただけでも、感謝して欲しかった、、、。
*****
翌日、金曜日、僕は案の定、寒気と闘っていた。
大学に行き、夕方には気分も悪くなった。
早々に家に帰り、布団に潜り込んで、全てをシャットダウンして寝まくる。
アイツからは一切連絡は無い。
僕は寝た。兎に角寝た。ひたすら寝た。たまにウトウトと目を覚ましたけど、直ぐに寝た。
金曜日の夜から日曜日の昼過ぎまで、ご飯も食べずに寝た。
日曜日の朝方、スマホの充電が切れている事に気が付いた。
何とかスマホを充電器に乗せ、そのまま寝た。
夕方、少し元気になってSNSを見たけど、彼からは何も連絡は無かった。
僕はそう言う存在。
*****
それでも良かった。だって彼が好きだったから。
どうせ僕は付き合って貰えない。
彼には大事な恋人がいるから。
春休み、高校の友達と旅行に行った。夏休みと冬休みにバイトをして、貯まったお金で海外へ。
彼は実家に帰るだろう。
僕は彼の事を考えたく無かった。
初めての海外旅行、高校の同級生五人の旅は楽だった。
計画を立てるのが好きな友達が、色々提案してくれた。
気遣いが上手いヤツもいる。
時間の潰し方を知っているヤツ、、、。
僕は何にも考えなくても、何とかやっていけた。
でも、旅行から帰ると、アイツの事を思い出す。
連絡のない日々。
大学二年生になった一番初めの日に、彼は
「よぉ!」
と言って、近寄って来た。
「彼氏とデート、沢山出来た?」
僕はにっこり笑って聞いた。
でも、次の瞬間には返事を聞きたく無くて
「海外旅行に行ったんだ。はい、お土産!」
と言って、彼に渡した。
「何処に行ったの?」
と聞かれて、旅行の話しに花を咲かせた。
そして、いつもの日常が帰って来た。
*****
夏前の、少し肌寒い夜。
昼間は半袖で過ごせるのに、夜は薄手の上着が欲しいそんな時期。
僕と彼は二人きりだった。
僕は、叶いもしない気持ちを伝え、自分の恋を諦めようと心に決めた。
、、、それなのに、まさかの
「良いよ、、、。付き合おう」
だった。
僕は、頭が回らない。
何故、彼は「良いよ」と言ったんだろう。
いきなりキスをされた。
不意打ちで涙が出た。
嬉しい気持ちと同時に、彼の彼氏に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ごめんなさい、、、。
誰にも届かない言葉。
ごめんなさい、、、。
彼の彼氏に罪悪感を感じながら、、、。
**********
俺は、一年間の遠距離恋愛に幕を閉じた。
恋人に新しい相手が出来、俺には気になる相手がいた。
大学一年から二年に上がる春休み。
実家から帰ると友人は
「彼氏とデート、沢山出来た?海外旅行に行ったんだ。はい、お土産!」
と言った。
俺は返事に困りながら、どこに行ったのか聞いた。
*****
もうすぐ、夏だな、、、。と思った日、友人に告白された。
凄く嬉しかった。
「良いよ、、、。付き合おう」
と返事をしたのに、友人はそれきりだった。
何故?
と、思いながらキスをしていた。
友人は涙を流した、、、。
可愛いと思った。俺のキスを喜んでくれた。
それなのに、友人はちっとも幸せそうじゃなかった。
彼は何故、涙を流したんだろう、、、。
**********
付き合い出した夏。
彼に会っている時間は楽しかった。
一緒にいる時間がこんなにも満たされるとは知らなかった。
何処に行っても、何をしても、何もしなくても楽しかった。
でも、一人になるとダメだった。
彼の彼氏を思い出し、僕は二番目の男なんだと実感する。
彼は今頃、彼氏と電話をしているかも知れない。
彼氏の事を思い出しているかも知れない。
彼氏の為に、夏休みの計画をしているかも。
そんな事をグルグル考える。
彼と初めて、恋人同士の触れ合いをした日、嬉しいのに淋しかった。
遠距離で彼氏と会えないから、僕に触れるのかな、、、?そんな考えが頭を掠める。
一度、身体の関係を持つと、彼は毎日僕に触れた。
会う度に彼が触れて来ると、僕はまるでデリヘルかセフレの様に感じた。
彼は確かに気持ち良さそうで、必ず最後までいくのに、愛していると言われた事は無かった、、、。
愛しているのに、、、。
多分、愛してくれているのに、、、。
僕はいつまでも二番目の男だった。
僕が彼に好きだと言ったのは、告白した日だけだった。恋人のいる彼の重みになりたく無かったから。僕は「愛してる」も、「好き」の言葉も言えない。
だから、尚更僕は幸せそうに接した。いつもニコニコする様に心掛け、僕は君と一緒にいると楽しいんだとアプローチした。
彼の誕生日とクリスマスには食事に誘った。プレゼントは買わない。
後に残る物は、彼の恋人に悪いと思ったから、、、。
でも、結局、僕が彼と付き合っている事が一番悪い事なんだ、、、。
*****
彼が冬休みは実家に帰らないと言った。
僕は理由を聞きたかったのに、聞けないでいた。
そう言えば、夏休みも帰らなかった。バイトを入れていたからかと思っていたけど、、、。
彼氏に会いに行かないのかな?
「お正月なのに、実家に帰らないの?」
「夏休みみたいに長く無いし、バイトもあるからな」
「そうなんだ」
僕は勿論嬉しかったけど、彼氏は大丈夫なんだろうか、、、。
クリスマスもお正月も一緒にいられるのは嬉しかった。
デートは相変わらず、彼の家でコンビニで買い出しをして、一日中映画を見たり、触れ合って、抱き合って眠り、布団の中でまったりしていた。
「ね、何か欲しい物ある?」
と彼に聞かれて、僕は彼の彼氏を思い出す。
「何もいらない」
ギュッと彼にしがみ付く。
彼はきっと、彼氏に色々プレゼントをしただろう。彼氏と同じ物は欲しくない。
「でもさ、クリスマス来るから」
「じゃあ、何か美味しいもの食べたい」
「良いよ。何か選んでおいて」
、、、僕は、彼が選んだ物が食べたかったのに。
「分かった。考えておくね」
結局、選ぶのを辞めた僕は、いつも通りの日を二人で過ごした。
お正月は二人で初詣に行った。珍しく外出をしてデートみたいだった。電車で有名な大きな神社に行き、お参りをして、おみくじを引いた。彼がお守りを買ってくれたから、僕は出店でたこ焼きと焼きそばをご馳走した。
彼からの初めてのプレゼントだった。凄く嬉しくて、宝物にしようと決めた。
初詣から帰り、彼の部屋に行く。
彼がポストを開けると、年賀状が一枚入っている。差出人の住所が彼の地元だった。
彼氏からの年賀状だ。
部屋に入ると、彼はいつも郵便物を置く場所に、それを置く。僕が帰ったらゆっくり読むんだろうな。
いつもの流れで二人で布団に入る。お正月早々、僕は何をやっているんだろう、と考えながら彼に抱かれた。
*****
二月のバレンタインデー。僕はチョコレートを買った。
このチョコレートを渡して、彼と別れようと思う。
僕は、疲れてしまったんだ。
彼は彼氏と別れていない。僕はずっと二番目の男。
罪悪感を感じながら、一番に選ばれる事なくこの関係を続けるには長過ぎた。
彼と彼の彼氏に謝りながら、その日を迎えようと心に決めた。
**********
結弦は、いつも笑っている。
それなのに、ふとした瞬間淋しそうな顔になる。
俺は、結弦に何か悩み事があるんだろうと思いつつ、中々聞けないでいた。
結弦の淋しそうな顔が一瞬で消えるからだ。
俺は結弦が大好きだ。いつも一緒にいたい。時間が許す限り、彼に触れていたい。
自分でも良く無いなと思う。
ちゃんと外にデートに行ったり、健全な付き合い方をしないといけないのに、結弦に会うと我慢が出来なくなる。
いつも一方的な愛し方で、悪いと思いながら止める事が出来ない。
俺はいつまでも中学生みたいな愛し方しか出来なかった。
*****
元旦に年賀状が一通来ていた。宛名の文字を見て、誰から届いたのかすぐに分かった。
それよりも、俺は結弦と布団に入りたくて仕方が無かった。正月早々馬鹿だと思いながら、結弦に触れたい。匂いを嗅ぎたい。キスをしたい。
*****
バレンタインデー、結弦は俺にチョコレートを渡しながら
「ごめんね。今日で最後にしよう」
と、泣きそうな顔で言った。
俺は意味がわからなくて固まった。
「えっと、、、」
俺の事、嫌いになった?俺、結弦に何かしたかな?したか、、、会う度に布団に誘ってばかりだもんな、、、。
「ごめん、俺が自分勝手だから、、、」
結弦は首を振った。
「違うよ。僕がもう限界なんだ、匠は悪く無い」
「そんなに、俺、しつこかった?ごめん、もっと回数減らすよ。毎回なんて止める、我慢するよ。デート!デートしよう?外に行って、美味しい物食べたり、楽しい事しよう?」
結弦はクスッと笑った。
「違うんだ、匠。僕、二番目の男に疲れちゃったんだ、、、」
「二番目の男?」
訳が分からず、眉間に皺が寄る。
「匠、遠距離の彼氏いるでしょ?。僕、匠の事、諦めるつもりで告白したんだ。匠が付き合う?って言ってくれて、嬉しくて付き合ったけど、、、やっぱり罪悪感が酷くて、もう無理だなって」
「、、、」
「一番目の男にもなれないし、いつも匠の彼氏に申し訳無かった。クリスマスとかお正月に匠と一緒に過ごせて嬉しかったけど、頭の何処に君の彼氏の存在があった、、、」
「、、、」
「、、、疲れちゃったんだ。、、、良い子でいられなくなって来た。僕だけの匠になって欲しいけど、そんなの我儘だって分かってるから、、、。今日で最後にしよう」
「待って!」
「?」
「俺の事、好きなんだよね?」
「そりゃぁ、そうだよ。だから苦しいんだ」
「俺とのエッチは嫌?」
「イヤじゃ無いよ、、、。でも、ちょっと寂しいかな?」
テーブルの上のチョコレートを見つめながら、弱々しく言った。
「いつも、デリヘルがセフレみたいだなって思ってた」
「そっ!そんな事っ!」
いや、あるか、、、あるな、、、。結弦の方からしたら、そうかも知れない、、、。
「ごめん、、、俺が悪い、、、」
「良いんだよ、、、。僕も嫌われるのが怖くて言えなかったんだから」
俺は立ち上がって、郵便物の山を探す。
いらない郵便物は早々に捨てているから、探し物はすぐに見つかった。
「これ、元彼からの年賀状、、、」
結弦の前に出す。結弦は静かに手に取った。
「見て良いの?」
「勿論」
**********
匠が持って来た年賀状には、年始の挨拶の次に手書きで
「春には、彼と同居します」
って書いてあった。
「?」
僕は匠の顔を見た。
「俺達、去年の春に別れたんだ、、、」
聞いて無い、、、。
「アイツに好きなヤツが出来て、俺も結弦の事、気になり始めた頃だった。穏便に別れたよ」
「春?じゃあ、僕が告白した時は、、、」
「別れて随分経ってた、、、」
「な、、、なぁんだ、、、」
結弦は笑いながら泣いた。
「僕、馬鹿みたいだ、、、」
ポロポロ泣いた。
「ずっと苦しかったんだ、、、」
俺に泣き顔を見せない様に、伏せって泣く。
俺は結弦の頭を撫でた。
結弦は俺の手を握ると、そっと掌にキスをした。
「匠の事、好き、愛してる、、、。いつも言葉にしたかった。でも、彼氏がいたから言えなかった、、、僕の事、重たいヤツだと思われたく無かったから。プレゼントも送りたかった、だけど、彼氏に気付かれるといけないと思って買えなかった、、、。ごめんね。次の誕生日もクリスマスもちゃんとプレゼント用意するからね」
俺はそっと結弦を抱き締めた。
結弦も俺の身体に腕を回してくれる。
頬を頬で撫でる。
「匠、大好き、、、」
さっき、回数を減らすなんて言ったクセに、俺はもう我慢が出来ない。こんな自分が嫌だと思いながら我慢をする。
結弦が頬にキスをした。
目が合った結弦の瞳が涙に濡れて可愛い。
ゆっくりと視線を落とし、俺の唇を見る。伏目がちの瞼にキスをしたいと思う。
結弦の顔が近付いて来ると、俺の心臓が早くなる。少し開いた唇が彼を迎える。
片方の手でそっと頬を触られ、片方の手が俺の腰に添えられる。
たったそれだけなのに、理性が吹っ飛び結弦を押し倒してしまった。
これじゃあ、いつもと変わらない、、、。
ごめん、結弦、好きなんだ。好きだから、触りたい、、、。
「好きだから」
俺が言うと、ピクリと反応して涙を流す。コクコクと頷きながら
「僕も、、、。僕も好き」
結局、いつもと同じ夜が来た。
でも、今日はちゃんと「好き」と「愛してる」を伝えあった。
凄く幸せなバレンタインデー。
言葉で伝える事は大切ですね。




