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065 幼女は男湯でもタオルを巻きません

 スミレちゃんがサキュバスのお姉さん達から男湯に風の精霊さんが捕らわれていると聞きだしてくれたので、私は1人で男湯に向かう事になった。

 私が男湯ののれんがかかったドアに手を伸ばそうとした時、「ジャスミン」と後ろから呼び止められた。

 声に振り向いて、呼んだ相手を確認すると、私を呼んだ相手はたっくんだった。


「ジャスミンも今から入るのか?」


「え? うん。そうだよ」


 ど、どうしよう。

 流石に、魔族から風の精霊さんを助けに行くところだよ。

 なんて言えないもんね。

 よし!

 ここは誤魔化そう!


 と、私が考えていると、たっくんが周囲をキョロキョロと見た。

 その行為に私が首を傾げていると、たっくんが「あれ?」と言葉を続ける。


「おじさんと一緒じゃないのか?」


「う、うん。パパと一緒に来たわけじゃないよ」


「ここ男湯だぞ? ジャスミンはいつもおじさんとお風呂入ってるから、癖で男湯に来ちゃったんだな。女湯はあっちだ」


 そう言って女湯のある方を指でさして、たっくんは笑いだす。


「あ。うん。そうだったね」 


 ナイスだよ。

 いつもの私!

 パパと一緒にお風呂に入ってたのが、ここに来て私の行動をフォローしてくれたよ!


「そうだ。久しぶりに一緒に入るか? 頭くらいは洗ってやるぞ?」


 一緒に!?

 あ。

 そっか。

 そうだよね。

 たまにパパがたっくんを家に連れて来て、私とたっくんの2人で一緒にお風呂に入ったりするもんね。

 じゃあ、これって良い口実になるかもだよ。

 普段の私ってば、GJすぎるよ!


 そう考えた私は、喜んで万歳をした。


「入るー」


「はは。喜びすぎだろ? ジャスミンは面白いな」


 たっくんがそう言って、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 すると、たっくんがいぶかしげな表情をする。


「あれ? ジャスミン。お風呂もう入ってたのか?」


 や、やばいよー!

 そっか。

 そうだよね!

 シャンプーの匂いしちゃうよね!?

 なんて言って誤魔化そう?

 えーとえーと…………あっ!

 そうだ!


「女の子だから、お風呂大好きなんだよ! 頭もまた洗っちゃうんだから!」


 言っておいてなんだけど、苦しい!

 この世界にも、某青だぬきのアニメのヒロインの女の子の存在さえあれば、名前出して力技でいけそうなのに!


「ふーん。そういうもんなのか」


 え?

 やった!

 いけたよ!

 やっぱり、女の子って単語は凄い力を持っているんだね!


 そんなわけで、なんとか誤魔化しきった私は、たっくんと一緒に男湯に入る事に成功する。





 服を脱いで大浴場に入ると、私は怪しい所が無いか確認する。


 ほとんど女風呂と変わらないんだなぁ。

 あれ?

 露天風呂の方が、立ち入り禁止って書いてある。

 なんでだろう?

 もしかして、露天風呂で風の精霊さんが捕まってるのかな?

 でも、そうだとして、何で露天風呂に?


 私は首を傾げていると、たっくんに「ジャスミン」と呼ばれて振り向く。


「早く来いよ。頭洗ってやるぞ」


 うう。

 気になるけど、今はたっくんの相手をしないと怪しまれちゃうよね?


 そう考えた私は、元気よく「はーい」と言って、たっくんが待っている洗い場へと向かう。

 そして、たっくんが用意してくれた椅子にちょこんと座った。

 私が椅子に座ると、たっくんが洗剤を私の頭につけて、優しく洗い出す。


 実は、たっくんに頭を洗って貰うのが、私は好きだったりする。

 凄く優しく丁寧に洗ってくれて、凄く気持ちが良いのだ。

 今回も私が気持ちの良さで気分をよくしていると、頭を洗いながらたっくんが話しかけてきた。


「ジャスミン。靴を履いてないと、本当に小さいよな~。今身長いくつなんだ?」


「えっとぉ。この前の健康診断ではかってもらったら、ぴったり120センチだったよ」


「120!? ちっさ。ジャスミン本当に小っちゃいなぁ」


「でしょー」


 私は嬉しくなって、無い胸を張って「ふんー」と荒く鼻息を出す。

 それを見たたっくんは、可笑しそうに笑いだす。


「ははは。何で得意気なんだよ? ついこの間までは、もっと大きくなりたいって言ってたのに」


「気が変わったんだもん」


 前世の記憶がある前の私には、身長の低さにコンプレックスがあったのだけど、今の私は身長は伸びない方が良いのだ。


「そうか。でも、そのわりには厚底の靴を履いてるよな? あれって、何センチ位あるんだ?」


 それは、単純に他の靴を持っていないのと、勿体無いから履いてるだけなんだよね。

 まあいいや。

 厚底の長さは、えーと……。


「10センチだったかなぁ」


「なるほどなぁ」


「でも、何で身長なんか気になったの?」


「ん? ああ。ジャスミンの友達を見てると、いつも思う事なんだけどさ。ジャスミンだけ、やけに幼く見えるんだよ」


「あぁ。うん。そうかも」


 たしかに、リリィもリリオペも年齢より大人びてるもんね。

 ラークですら黙っていれば、私よりは年齢が上に見えるかも……気のせいかな?


「ジャスミンの一つ下のルピナスちゃんも、俺から見たらジャスミンより逆に一つ上に見えるんだよな~」


「え!? そうなの?」


 それはちょっと意外かも。

 あんなに可愛い見てるだけで癒されちゃう天使のルピナスちゃんが、私より一つ上に見えるなんて。

 あ。でも、そう言えば以前ルピナスちゃんが言ってたっけ?

 私の事可愛いって。

 今思えば、そう言う事なのかも。


「よーし。それじゃあ流すぞー」


「あ。うん」


 どうやら洗い終わったらしい。

 お喋りをしていたら、いつの間にか私の頭は泡いっぱいになっていた。

 私が目をつぶると、たっくんがバシャーッと勢いよくお湯を頭にかける。


「はい。じゃあ、交代だな」


 私の頭を洗い終ると、今度はたっくんが背中を向ける。


「しょうがないなぁ」


 私はそう言って、たっくんの背中を流してあげる事にした。

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