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277 幼女と不思議な地下通路

 ネコネコ編集部出張所の建物に入ると、今まで黙って様子を見ていたたっくんが口を開く。


「ここからが本番だな。トランスファでベルゼビュートが住んでいた家の地下の事は覚えているか?」


「え? うん。リリィが捕まっていて、猫ちゃんの石像が置いてあったよね」


「実はな、この建物にも、アレと全く同じ構造の地下があるんだ」


 たっくんが私の肩の上から羽ばたいて、私の前に出る。


「ジャスミン、それに博士も皆も俺について来てくれ。地下へ案内する」


「それはありがたい。頼むよ」


 たっくんの後にサガーチャちゃんが続いて行き、私もその後を追う。

 スミレちゃんはルピナスちゃんと何かをお話して、スミレちゃんだけ私の後について来た。


「ルピナスちゃんには、そこで待ってもらうように伝えましたなのです」


 そっか。

 そうだよね。

 この先は何があるか本当にわからなくて危ないんだもん。

 スミレちゃんナイスだよ!


「ありがとー。スミレちゃん」


 私がお礼を言うと、スミレちゃんが照れながら頭をかいた。

 それから、私も一度ルピナスちゃんに行って来るねと伝えてから、スミレちゃんの匂い感知を頼りにサガーチャちゃんの匂いを追って先に進む。

 そうしてネコネコ編集部出張所の建物内を歩きながら、私は考え事をしていた。


 うーん……。

 このままだと、本当にベルゼビュートさんと戦う事になりそうだよね。

 ルピナスちゃんもサガーチャちゃんも無事だったから、2人を連れて宿に戻りたいんだけどなぁ。

 でも……。


 私はエルフの里に来て、今まであった事や聞いてきた事を思い出す。


 ベルゼビュートさんがやろうとしている事は、止めなきゃだよね。

 アスモデちゃんを殺してまで不老不死になって、猫ちゃん達で世界を埋め尽くすって、なんだかおかしいもん。

 猫ちゃん達の為にって言うのは、凄く良い事だと思うけど、そのやり方が良くないんだもん。

 絶対止めないとだよ。

 よし! 決めた!

 ベルゼビュートさんを説得して、もう悪い事をしないようにしてもらうんだ!


 私がそこまで考えて決心をすると、丁度その時、部屋の前で立ち止まって、私達を待っていてくれたたっくん達に追いついた。


「ジャスミン来たか。よし。先に進もう。ここは荷物置き場になっていて、この中に隠し通路があるんだ」


 たっくんが私に向かって説明すると、サガーチャちゃんも私に視線を向けて説明する。 


「実はマモンくんと会ったのは、この荷物置き場の前なんだよ。丁度マモンくんがここから出て来た所で、かなり驚いていた様だったけど、ここに地下への入り口があったからのようだね。それに、その時マモンくんに場所を移そうって言われたんだけど、隠す為だったのかもしれないね」


 サガーチャちゃんは説明を終えると、荷物置き場の扉を開けて入って行く。

 私はサガーチャちゃんのお話を聞いて、なるほどなぁと思いながら、サガーチャちゃんの後を追って荷物置き場に入った。


 荷物置き場に入ってから、私とスミレちゃんが部屋の中をキョロキョロと見ていると、たっくんが床の上に降りる。


「ここだ」


 たっくんの言葉を聞くと、サガーチャちゃんがたっくんが降りた床を調べ出す。

 サガーチャちゃんが床を調べる中、トンちゃんが難しい顔をして、たっくんをじぃっと見つめた。


「ご主人、さっきからボクはずっと思っていたッスけど」


「うん?」


「フェニックスが何を言っているかわからないッス」


「え?」


「私もわからないなのです」


「え? そうだったの?」


 って、考えてみればそうだよね。

 たっくんって、今は小鳥さんなんだもん。


「博士は何で言葉がわかるッスか?」


 トンちゃんが床を調べるサガーチャちゃんに訊ねると、サガーチャちゃんは床に何かを取り付けながら答える。


「翻訳機を使っているからさ」


「翻訳機ッスか?」


 トンちゃんが聞き返すと、サガーチャちゃんは私の前まで来て、耳の裏を見せる。

 すると、耳の裏に小さなピアスのような物が、くっついているのがわかった。


「これが翻訳機だよ。ジャスミンくんを以前調べた事があっただろう? あの時に動物達と会話が出来る仕組みを、魔科学で調べさせてもらったんだよ」


「凄いッスね」


「うん。サガーチャちゃん流石だよ」


 私とトンちゃんが驚きながらそう言うと、サガーチャちゃんはニマァッっと笑みを浮かべた。


「さて、それはそうと、床を爆破するから少し下がってくれないかい?」


 え?

 爆破?


 私が驚いて床に視線を移したその時、サガーチャちゃんが床に取り付けた装置が爆発する。


「きゃっ!」


 私は小さく悲鳴を上げて驚いて、顔を青くさせて硬直する。

 スミレちゃんも突然の爆発に、目を点にして驚いていた。

 トンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんは、いつの間にかにラヴちゃんのいるポーチに入って非難している。


 私は爆発で起きた煙を手でパタパタと払いながら、ゲホゲホと咳払いをして、サガーチャちゃんに抗議の目を向けた。

 すると、サガーチャちゃんは何食わぬ顔で、爆破する事で現れた隠し階段を見て満足げに頷いた。


「さあ。先に進もう」


「そうだね……」


 笑顔のサガーチャちゃんとは対照的に、私はなんだか既に疲れを感じながら返事をする。


 地下に入ると、真っ暗で何も見えなくなると思っていたのだけど、しっかり照明が付いていて地下は思いの外明るかった。

 先頭にサガーチャちゃんで真ん中に私で最後尾がスミレちゃんの順で、地下通路を歩いて行く。

 たっくんは私の肩の上に乗っていた。


 なんだか不思議。

 トランスファにあった地下通路と同じ構造な気がする。

 猫ちゃんの石像もあるし、相変わらず誰かに見られてる感じがするもん。


 私はそんな事を考えながらサガーチャちゃんの後ろを歩いて進んで行くと、これまた同じように、リリィがトランスファで捕まっていた時と同じ部屋に辿り着いた。

 私達は部屋に入って首を傾げる。

 何故なら、そこにはベルゼビュートの姿は無かったからだ。


 私達は地下に入ったような、隠し階段のような物が無いか調べ始める。

 だけど、全くそれっぽい物が無くて、八方塞がりになってしまった。


「ベルゼビュートは何処に消えたのだろうね?」


 サガーチャちゃんが部屋を見回しながら呟くと、トンちゃんが部屋に備えてあった机の上で、机の上に置いてあった紙を見て答える。


「ここじゃないッスか?」


「トンちゃん、何か見つけたの?」


 私がトンちゃんに訊ねながら近づくと、トンちゃんが紙に指をさした。

 紙を見ると、そこには小さい子供が頑張って書いたような字が書いてあって、それはマモンちゃんからの私にてられた手紙だという事に気がつく。


「どれどれ?」


 サガーチャちゃんがそう言って、手紙を音読する。


「よく来たな甘たぬきども。甘くてばかなおまえにいいことをおしえてやる。おまえも気がついたと思うけど、ここはとらんすふぁと同じつくりになっている。そして、同じしかけがあるのだ。ここまでおしえてやれば、ばかなおまえでもわかるだろ? そうだ! ネコの石ぞうだ! わはは! ありがたくおもえ! まもんより」


 サガーチャちゃんは読み終わると、私の顔を見てニマァッと笑みを浮かべる。


「だそうだよ」


「あはは」


 私は苦笑して手紙を持ち上げる。


 マモンちゃん可愛すぎだよ。

 って言うか、サガーチャちゃんがさっき言ってたけど、マモンちゃんが部屋から出て来た所で出会ったんだよね?

 じゃあ、もしかして、このお手紙をここに置いた後に捕まっちゃったのかな?

 私の顔を見た時のマモンちゃんって、凄く顔が真っ赤っかだったもんね。

 マモンちゃん可愛すぎだよ。

 きっと私を見た時、ばつが悪かったんだろうなぁ。

 よーし!

 このお手紙は持ち帰って保管しよう!


 そんなわけで、私は手紙をスカートのポケットにしまおうとして、たっくんの羽が入っていた事を思い出す。


 あっ。

 そう言えば、たっくんの羽もあるんだっけ。

 どうしよう?

 そうだ!

 良い事思いついちゃった。


「ラヴちゃん」


「がお?」


「たっくんの羽をポーチに入れても良いかな?」


「がお」


「ありがとー」


 私はラヴちゃんの許可を貰ったので、たっくんの羽をポーチにしまった。

 本当は紙の方をポーチにしまっても良かったのだけど、それだとぐしゃぐしゃになっちゃうかなと考えたのだ。


 と、それはさておき、スミレちゃんとサガーチャちゃんが話し合いを始める。


「猫の石像に仕掛けがあったなんて、知らなかったなのよ」


「あの手紙には、ジャスミンくんが知っているかの様に書かれていたけれど、そうでは無かったのかい?」


「あの時は仕掛けなんて解き明かしてないなのよ。多分、マモンちゃんが勘違いしてるだけなのよ」


「そうなのかい? あの子も結構面白い子だね」


 スミレちゃんとサガーチャちゃんが話しながら部屋を出て行くので、私もその後ろに続いて部屋を出る。

 それから部屋の外に出ると、たくさんある猫ちゃんの石像を、サガーチャちゃんとスミレちゃんは一つ一つ調べ始める。

 すると、トンちゃんがそれを見ながら、何かを思い出すように私に話しかけてきた。


「そう言えば、ご主人がトランスファの地下で、猫の石像を見つめていた時があったッスよね?」


「え? そうだっったっけ?」


「そうッスよ。それでその時に、化け猫から攻撃を受けたじゃないッスか」


「あー。そう言えば、そんな事あったかも。マモンちゃんが私のパンツを魔法で飛ばして、猫ちゃんの石像が壊れちゃったんだよね」


「もしかすると、あの時に化け猫がご主人に攻撃を仕掛けたのって、ご主人が見ていたあの石像に仕掛けがあって、それを隠す為じゃ無かったッスかね?」


「そっか。そうだよ! トンちゃん偉い!」


 だから、手紙には私が知ってるみたいな感じで、書いてあったんだ。

 それに気がつくなんて、トンちゃん凄い!


 私は笑顔でトンちゃんの頭を撫でると、トンちゃんはとても気持ちが良さそうに微笑んだ。

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