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265 幼女の頭の中はお花畑で出来ている

 私はネコネコ編集部出張所に向かう事になり、スミレちゃんとブーゲンビリアお姉さんとルピナスちゃんの3人と別れる事になった。

 と言うのも、元々私は馬車小屋に向かっていて、サガーチャちゃんとオぺ子ちゃんに会いに行く最中だったからだ。

 3人は私の代わりに馬車小屋に行って、ネコネコ編集部出張所に行く事を伝えに行ってくれる事になったのだ。

 マルメロちゃんのパパのキューカンヴァさんは、マルメロちゃんに頼まれて、護衛の為にスミレちゃん達について行った。


「お父さん、ビリアお姉様とルピナスちゃんとスミレさんをしっかり守って下さいね!」


 と、マルメロちゃんはもの凄く怖い剣幕で喋っていた。

 どうやら、マモンちゃんに騙されたとは言え、私達を襲いに来た事をまだ怒っているようだった。

 と言うか、キューカンヴァさんは結局見ていただけなので、正直可哀想だなと私は思った。


 そんなわけで、私はスミレちゃん達と別れて、マモンちゃんと一緒にネコネコ編集部出張所まで行く途中の事だった。

 クレープ屋さんを見つけたラテちゃんの要望で、私達はクレープ屋さんに立ち寄り、買い食いしながらネコネコ編集部出張所を目指す。

 そして、クレープを食べながら、私はマモンちゃんを見て苦笑した。


「リリィ=アイビー! どっちが早くクレープを食べられるか勝負よ!」


「嫌よ。味わって食べたいもの。それよりアンタ、口元にクリームついてるわよ」


「拭かせてあげるわ」


「嫌よ。自分で拭きなさい」


 あの2人、仲良くなりすぎじゃない?

 って言うか、マモンちゃんって結構可愛い子だったんだなぁ。

 リリィとお話する時、尻尾が立ってるし、リリィの事が大好きなんだなぁ。


 私が2人を見て微笑んでいると、ラテちゃんがクレープを食べ終わったようで、私の頭をぺちぺち叩いて喋る。


「ジャス。さっさとタイムから不老不死にしてもらって、直ぐにマンゴスチンの所に向かうです」


「え? うん。そうだね」


「急にどうしたッスか?」


「ラテは大変な事に気がついてしまったです」


 大変な事?


「クレープにハチミツをかけても、きっと美味しくなるです!」


「アタシも賛成なんだぞ!」


「がお!」


 私はラテちゃんの言葉に苦笑して答える。


「皆の為にも頑張らないとだね」


「はいです!」


 ラテちゃんが元気よく返事をしたその時、私達の目の前にたくさんの猫ちゃん達が現れた。


 か、可愛い!


 私が目の前に集まる猫ちゃん達の可愛さに見惚れていると、猫ちゃん達が騒ぎ出す。


「リーダー! 自分ばっかりズルい! 私達も何か食べたい!」


「そーだそーだ!」


「にぼしを要求する!」


「私はかつお節!」


「マタタビが良いにゃ~」


「煩ーい! おまえ達だって、昨日ご褒美貰ってただろ!?」


 猫ちゃん達の正体は、どうやらケット=シーちゃん達のようだ。

 マモンちゃんがケット=シーちゃん達に向かって大声を上げると、ケット=シーちゃん達がブーイングを始めた。

 すると、トンちゃんがマモンちゃんとケット=シーちゃん達を見ながら、私の肩の上に座って凄く嫌そうな顔で呟く。


「また、ニャーニャー煩いのが出て来たッス」


「ニャーニャー可愛いんだぞ」


「ねこちゃん、かわいい」


「可愛くないッス」


 私も可愛いと思うよ?


「ジャスミン。どうせ目的地はわかっているのだし、マモンは放っておいて行きましょう?」


「え?」


「そうですね。わたしも賛成です。それにリリィちゃんとも、お話したいと思っていたので、歩きながら話しませんか?」


 え? そうなの?

 もしかして、さっき少し機嫌が悪かったのって、リリィにじゃなくて私に嫉妬してたのかな?


「ええ。良いわよ。行きましょうか」


「はい!」


 リリィとマルメロちゃんが歩き出す。

 私も2人の後をついて行くと、マモンちゃんが私達が歩きだした事に気がついて、慌てて追ってきた。


「待て! 私を置いて行くな!」


 私はマモンちゃんに視線を向ける。

 マモンちゃんがプンスカ怒っていて、その後ろをケット=シーちゃん達が未だにニャーニャーと講義をしながら追いかけて来ていた。


 何これ可愛い。

 癒される~。


 私があまりの可愛さに立ち止まると、マモンちゃんが私に追いついて、尻尾をバタバタと激しく振った。


「甘狸! 私を置いて行くなんて良い度胸ね!」


「あはは。ごめんね」


「許してほしかったら、この子達に食料を渡しなさい」


「え? うーん。後からじゃダメ? クレープはもう食べちゃったから、今は何も持ってないし……」


 私が眉根を下げて言うと、ラテちゃんにペチリと頭を叩かれる。


「ジャスは馬鹿です? 後からも何も、食料なんて渡す必要ないです!」


「でも、ケット=シーちゃん達が可哀想だよ?」


「別に可哀想では無いッスよ」


「そうかなぁ?」


 私はケット=シーちゃん達に視線を向ける。

 すると、ケット=シーちゃん達が可愛らしいおめ目で、私をじいっと見つめてくれた。


 やーん。

 可愛いー!

 よーし!


「私、今から何か買って来るよ!」


 ラテちゃんにまた頭をペチリと叩かれる。


「馬鹿です? 大馬鹿です?」


「むしろご主人の場合、馬鹿とかじゃなくて、頭の中がお花畑なんスよ」


 頭の中がお花畑って、それは少し失礼じゃないかな?


「主様、そんな事してる暇はないんだぞ?」


「がお」


「で、でも……」


 私は再びケット=シーちゃん達に視線を向ける。

 すると、ケット=シーちゃん達が可愛らしいおめ目を私に向けて「にゃあ~」と、可愛らしい声を上げた。


「やっぱり買って来る!」


 私は再びラテちゃんにペチリと頭を叩かれ……違った。

 今度は何度も止む事なく、ペチペチと頭を叩かれ続ける。


「ちょろすぎです! ケット=シーがわざと、にゃーとか言ったのに、何懐柔されてるですか!?」


「甘狸は思っていたより、馬鹿なようね」


「ご主人、馬鹿に馬鹿って言われちゃったッスよ?」


「そんな事言われてもぉ……」


「私は馬鹿じゃないわよ!」


 マモンちゃんがトンちゃんに怒ったその時、先に行ってしまったリリィとマルメロちゃんが戻って来て、私達に話しかける。


「ジャスミンどうしたの?」


「ジャスちゃん、マモンちゃんに何かされたんですか?」


 リリィとマルメロちゃんがそう訊ねるので、私が説明しようとしたのだけど、直ぐにトンちゃんとラテちゃんが私より先に答える。


「ご主人がケット=シー達に食料をねだられて、今から買いに行くとか言い出したッス」


「ジャスはラテ達の注意を聞かないから、リリィが何とかするです」


「そうなのね」


 リリィは納得した様子で頷いて、ケット=シーちゃん達に視線を向けた。

 すると、ケット=シーちゃん達がビクッと体を震わせて、尻尾を足の間に挟ませた。


 凄く怯えてるよ?

 そう言えば、皆リリィには大変な目に合わされてるんだよね。

 トラウマがよみがえっちゃったのかも。


「アンタ達、食べ物がほしいなら、後で私達が泊まっている宿に来なさい。私達がやろうとしている事を邪魔しないでくれるなら、たっぷりご馳走を用意してあげるわ」


 リリィの思わぬ発言に、私は驚いて目を丸くして、ケット=シーちゃん達は目を輝かせる。


「「「本当ですかー!?」」」


「ええ。勿論よ」


「「「やったー!」」」


 ケット=シーちゃん達は喜ぶと、そのまま元気に去って行った。

 そして、リリィは去り行くケット=シーちゃん達を見送って、私に振り向いて微笑んだ。


「行きましょう。ジャスミン」


 リリィの微笑んだ顔は、とても優しさに溢れていた。

 私は、リリィが本当にケット=シーちゃん達にご馳走をしてあげるんだと感じて、なんだか嬉しくなった。

 だから、私も自然と笑みが零れて、リリィに笑顔を向けて頷いた。


「うん」

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