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235 幼女の待遇は好待遇

「ふぁ~……あれ?」


 私は知らない天井を見つめながら目を覚ます。


 えーと……。


 私は上半身だけ起こして、眠気眼でキョロキョロと周囲を確認する。

 ここが何処だかはわからないけれど、窓の無い5畳位の大きさの部屋で、私はベッドの上で眠っていたようだ。

 部屋の中には、幾つか提灯が備えてあり、提灯が淡い光を出して部屋の中を照らしていた。


 ここは何処だろう?

 えーっと、たしか御神木を調べに行って、トンちゃんとラテちゃんと……。


「トンちゃん! ラテちゃん!」


「ジャス、起きたですか?」


 私がトンちゃんとラテちゃんの名前を叫ぶと、ラテちゃんがぴょこんと、ベッドの上に飛び出した。


「ラテちゃん、良かった……。あれ? トンちゃんは?」


「トンペットなら、多分今頃は外で眠らされてるです」


「どういう事?」


 私が訊ねると、ラテちゃんは私の太ももの上に乗って、私を見上げながら答える。


「昨晩ジャスが襲われた時に、ラテとトンペットもジャスと同じ様に催眠系の魔法を使われたです」


 催眠系の魔法?

 そっかぁ。

 だから私はあの時、急な眠気で目の前が真っ暗になっちゃったんだ。


「ラテは催眠系の魔法に耐性があるので、ジャスのポーチの中に隠れて、眠る前のトンペットに加護通信で伝言を残して、今までジャスが目を覚ますのを待っていたです」


「伝言?」


「そうです。伝えたのは三つです。一つはジャスのポーチに潜り込んで、何処に連れて行かれるか確かめて様子を探る事です。ついでにこっちは任せろと伝えておいたです。もう一つは、まあ、これは今は良いです。それで最後の一つは、神隠しの犯人がドリアード様だという事です。それと先に言っておくですけど、ここでは外にいるトンペット達と加護通信が出来ないようになってるみたいです」


「そうなんだ……え? 犯人ってドリアードさんだったの?」


 そうなんじゃないかって予想してたけど、やっぱりそうだったんだ。

 何故か掴まってるって、嘘の情報が流されていたりしたもんね。

 と言うか、これは今は良いって、なんだろう?

 ちょっと気になるけど、そこまで重要じゃないのかな?

 ……あ、そうだ。


「ラテちゃん、ところでここは何処なの?」


「ここは御神木の中です」


 え?

 御神木の……中?


「ラテも最初は驚いたです。まさか木の中に空間を作って、攫った子供達を、そこで教育しているとは思わなかったです」


「きょ、教育?」


 私がラテちゃんに聞き返した丁度その時、部屋のドアが開かれる。

 すると、ラテちゃんは慌ててベッドの中に潜り込んで隠れた。


「ふん。やっと目を覚ました様じゃの。丁度良い。わらわは腹が膨れておる故、これをやろう」


 部屋のドアを開けたのはドリアードさんだった。

 ドリアードさんは部屋に入って来て、持っていたおぼんと一緒に、おぼんの上に乗せていたお茶碗と湯のみを私に渡してきた。

 お茶碗にはお汁粉が入っていて、湯のみには温かいお茶が入っていた。


「お汁粉? あ、お餅も入ってる。美味しそう」


「ふん。意地汚い。妾は忙しいのじゃ。面倒じゃが今から人を呼ぶ。其方そなたは、その者にここの事を聞くがよい」


「えっと、うん」


 ドリアードさんは私の返事を聞かずに、そそくさと部屋を出て行った。


 ……あれ?

 おかしいな。

 ドリアードさんからツンデレのオーラを感じるよ?

 お汁粉とお茶も、私の為に持って来てくれたのかな?

 うーん……気のせいだよね?


 私はそんな事を考えながら、お茶をフーフーしながら飲む。

 それから、ラテちゃんが出て来て、お汁粉を興味津々に見ていたので食べさせてあげた。


 そうして、ラテちゃんとお汁粉を頂いていると、部屋のドアをトントンと叩く音が聞こえた。

 私が返事をすると、部屋のドアを開けて、私と同じ位の年齢と思われるエルフの女の子が行儀良く入って来た。

 ラテちゃんはドアを叩く音が聞こえた直後に、もちろん直ぐに隠れている。


 女の子は髪の毛が緑がかった黄色の髪で、腰まで届くロングのストレート。

 気の弱そうな雰囲気を出した顔立ちをしていて、眉根が下がっていた。

 服装は、やっぱり和服を着ていたのだけど、夏祭りで若い女の子が着るような、少し鮮やかな色の浴衣を着ていて可愛かった。

 そして、気の弱そうな雰囲気をしているわりには、浴衣の丈が短くてパンツが見えてしまいそうだった。


「わ、わたしは、マルメロと言います。身の回りのお世話を、さ、させて頂く事になりました。よ、よろしくお願いします!」


 マルメロと名乗った女の子はそう挨拶すると、深々と頭を下げた。 


「私はジャスミンだよ。マルメロちゃん、よろしくね」


「は、はい!」


 緊張してるのかな?

 凄くオドオドしいなぁ。

 と言うか、身の回りのお世話って、もしかしたら私って好待遇されてるのかも?


「ま、まずは、ここの施設について、せ、説明させて頂きます」


「うん」


 と、私はマルメロちゃんから、ここの事を聞く事になった。


 ラテちゃんから教えて貰った通り、ここは御神木内部に作られた所で、教育をする為の場所のようだ。

 神隠しにあった子供達は、エルフの長の息子の婚約者候補であり、ここは言わば花嫁修業の場なのだとか。

 どうやら、マンゴスチンさんはドリアードに相談して、将来この里の中心となる息子のソイの妻を育てようと考えたらしいのだ。

 とても迷惑極まりないお話なのだけど、神隠しにあった子供は皆、それで納得しているらしい。


 花嫁修業の内容は様々で、知識を広める為の勉強から始まり、魔法薬の作り方などもある。

 もちろん花嫁修業と言われて頭に思い浮かぶような、料理や家事なども含まれている。


 そんなわけで、私は花嫁修業に参加をしなければいけないらしい。


 うーん……とりあえず、今は様子見をしよう。

 花嫁修業ってどんな事をするのか、ちょっと興味あるしね。

 それに、もしかしたらだけど、たっくんの居場所もわかるかもしれないもんね。


 そう考えた私は、施設を紹介してくれると言ったマルメロちゃんについて行く事にして部屋を出た。

 ちなみに、ラテちゃんは私のポーチに身を隠しました。

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