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48.因縁

 山の様な巨大釣鐘型の邪神の化身は、無事?大砦に突っ込み、一万基のフェニックスフレアボムで吹っ飛ばされた。


 実際の所邪神の化身が頭上に差し掛かるまで砦内に進入してくる様々な敵を適当に掃除していたら、急に巨大しゃれこうべに掴まれて、大砦の外に投げ出された。


 そして間もなく邪神の化身が大砦に落下からのフェニックスフレアボム大爆発。


 何となくそうなる事は想像していたので、石精を発動して体重を増して耐え忍んだ。


 結果山の様なサイズの邪神の化身はぼろぼろになり、外殻を司る核を隊長が叩き潰して完了と思いきや……。


 あくまで12ある能力の一つ潰しただけに過ぎず、濃い霧を纏ってその霧の中に姿を消す邪神の化身。


 プレイヤー達もすぐさま霧に突入しようとしたが、触れただけで酷い状態異常になるらしく、攻めあぐねるどころか探索すら難しいと判断し、一旦遠巻きにNPCに監視だけ任せて解散と言う運びになった。


 数日間、連日攻略の糸口を探す為に現地や各所の会議室はその話題で持ちきりのようだ。


 そんな中、自分は蠍に呼び出され【闘都】へと向う。


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 「同じ事を聞くようだが、本当にやるのか?」


 「当たり前だろ?既に双方合意、世界に大きな影響を与える二人の契約はそれだけ重い」


 「言っても表向きに発表されるようなモノじゃないんだろ?なんでまたそんなどちらか一方が生き残るには、どちらかは滅ばにゃならんみたいな極端な話になるんだか」


 「ふん!よく考えてみろ。俺達は邪神勢力と戦い続けてるんだぞ?己の生存を掛けて何かを否定し討伐する事を生まれたときから受け入れている。レディとフロリベスどんな因縁があるかは知らんが、やるしかなかろう」


 「それがよりによって、邪神の化身が復活した所為で世界中蜂の巣をつついたみたいに大混乱の状況でもか?」


 「ああ、どちらか一方が商業の世界から身を隠せば、当然更に混乱は広がるが、それでもここまで話が進んだら、キャンセルはない」


 「そうかい。まぁ俺は元々邪神教団と敵対してた身だし、レディ側として動くんだろうが、何をすればいい?」


 「相変わらず話の分かり過ぎる奴で本当に助かるよ。一人裏の世界に詳しくない男を裏闘技に案内して欲しい」


 「ふーん……俺が案内するって事はレディ側の代表はガイヤじゃないんだな。闘技場最強を差し置いて世界の行く末を握る戦いに選ばれるなんぞ、よっぽどの腕なんだろうが、選ばれた事に同情もするな」


 「多分問題ないだろう。邪神教団と因縁もあれば、腕も立つ。何より敵が『脳筋』である事を伝えれば、やる気を出すさ」


 「まぁ確かにベガの奴は脳筋だが、それを伝えたからなんだってんだ?」


 「くっくっく、そりゃ戦いを見ればすぐに分かる。お前も知らない奴じゃないし、そろそろ着く頃合だ。ここまで招いてきてくれ」


 「ああ、分かった」


 部屋から出るとそこは窓もないただの通路。


 一定間隔で<錬金>で作られた人工的な明かりが並び、緩やかなカーブが自分の今いる位置を分からなくさせる。


 無駄に長い通路を抜けると【闘都】にあるメニューの無い料理屋と呼ばれる店の個室に繋がっている。


 そしてそこに居たのは以前フロリベス邸で一緒にはめられ脱出した黒い術士風の仮面の男だった。


 見た目は術士風だが、戦闘スタイルは確か『改人』をさば折にする奴だったと記憶しているモノの、その時は脱出するのがやっとであまり話はしていなかった。


 とりあえず、今の自分は案内人だし、さっさと蠍の元に連れて行き、どういう話になるかは二人に任せようか。


 「よう、久しぶりだな。色々聞きたい事もあるだろうが、一旦こっちの通路に来てくれ、あまりこの部屋を使いっぱなしだと店に迷惑がかかる」


 明らかに怪しげな状態にも関わらず、平然とついてくるのは余程腕に自信があるのだろうか?


 色々と質問してくるが、何となく喋り方的には比較的若そうと言うか、世慣れして無い感じもする。


 こんな奴と蠍を会わせちまって大丈夫かとちょっと不安にも思ったが、部屋に戻り蠍と話し始めても、淡々と事は進み、特に反発する事もない。


 ただ、蠍が敵を『脳筋』であると説明した時の、 


 「へ~……脳筋ですか……」


 と言う呟きは不気味すぎて、つっこめなかった。


 背筋に冷たいものが走るというのはこういう時に使う言葉なのだろうが、ガイヤを差し置いてレディの代表になるくらいだし、只者じゃないと言う事だけは存分に伝わってきた。


 その後は裏闘技用の直通通路は使わず、一旦外を回る形になった。


 いつも賑やかで夜も祭りのような【闘都】だが、それは表通りの話。裏通りともなれば流石にヒトも減る。


 簡易的な提灯にも似た明かりで夜道を照らしながら道行くヒトとすれ違う。


 ヒト目につかない裏通り側から、古く鄙びた古代遺跡が崩れていなかったらこんな姿なのだろうと想起させるような古典的スタイルの闘技場に入る。


 正直レディもフロリベスももう少し小奇麗と言うか、華やかな方が好みだと思うのだが、この闘技場でお互いの存亡を決めてしまってもいいのだろうか?


 そんな事を考えつつとりあえず、案内人として控え室まで一緒に付いていったが、ここで仮面の男が、食事をしたいと言い出す。


 確かにベガとの戦闘なれば、しぶとい敵だし十分な食事は必要だろう。


 仮に目の前の男が相当なて手練であっても、戦闘中にスタミナ切れや空腹を抱えて闘えるほど弱い相手ではないと思う。


 こうなると、先に食事の事を聞いておかなかった案内人としての自分の手落ちだし、協力出来るだけはしようと、どこか食事処を押さえようと出掛けようとしたら、男は自分で作るという。


 そして玄米があればとか呟くので【森国】で買っておいたそれを提供する。


 このゲームにも米文化があって、食べれるとなれば買っておいてもいいかと思いつつ、料理する機会が無くてアイテムバッグに死蔵していたものだ。


 手早く玄米、味噌汁、魚の焼き物で食事を済ます男の手並みは流れるようで、さっと必要な栄養を腹に収める雰囲気が、如何にも武人を思わせる。


 装備は薄くローブのように思い、術士風だと勝手に思ってきたが、ここで認識を更新しする。


 歩く時若干足が重いと思ったが、それは術士のように非力だからじゃなく、寧ろこの薄く見える装備が尋常じゃない重量である可能性が高い。


 そうやって見ていくと、仮にこの男を石精と重精を全力で込めたフェニックステイルでぶん殴っても平気で耐えられ、掴み取られ自分ごとぶん投げられるイメージが脳内に浮かびあがる。


 嫌なイメージを振り払い、控え室で男の質問に答えている内に呼び出しがかかった。


 男をリングの方へと見送り、自分は上階のVIPルームに向かう。


 まぁ、ルームと言う煮は語弊があるかもしれないが、ある意味一番身分の高いヒトの座るであろう特別席だ。


 そこにはフロリベスとレディと蠍が待っているのだが、なんなら自分はあくまで使いっ走りなのだから、これで帰っても良いのじゃないかとも思う。


 しかしまぁ、自分にとっても因縁のある話なのに、放っておく訳には行かないかと重い足取りで階段を登る。


 何やら腹の黒そうなのが3人も全くお互いを信用せずに並んでいる所になんか行きたくねーなー。


 「ペルラ……これで私達の因縁も終わり、最後に言い残す事はある?」


 「フロリベス……これから滅びる貴女にかける言葉も同情もないわ」


 階段を登りきる直前に一番面倒くさい爆弾を投げつけてきやがった!


 絶対ペルラとか言うの、レディの本名だろ!クソ!知りたくなかった!


 階段隅で頭を抱えていると、


 「おい、そんなとこに居ないで上がって来いよ」


 ニヤニヤしながら蠍が俺が既に居る事を知らせるように言葉を投げかけてくる。


 軽くその場で深呼吸してVIPルームに入っていくと、見慣れた2人が並んで座っていた。


 白い服を着たフロリベスに、赤い服のレディ。


 何と言うか並べてみると何となく雰囲気が似てるし、確かに幼い頃に一緒に育ったという事を納得させられる。


 「待たせたな」


 「いえ、別に待ってないわ。寧ろ私達の因縁を【教国】の機関長が段取りしてくださるんですもの、そして案内人に今や表でも裏でも名の売れた貴方が立ってくれるなんて、贅沢な話だわ」


 「そうね。邪神教団(私達)とは不幸にも敵として渡り合った仲だけど、貴方個人の事は割りと信用もしているわ」


 「どっちかが、今日で表の顔である商業者としての地位を追われるって聞いたんだが、随分と余裕なんだな?」


 「そう?貴方はさっきのマダム・アリンの顔を見てないものね……こちらの代表がまさか【帝国】将の一角、鉄壁の不屈ソタローだなんて、想像もしてなかったなんてね」


 「だとして、筋力ならば称号持ちのベガが負ける理由は無いわ。確かに【帝国】は上に行くほど化け物だと言われているし、将ともなれば一筋縄では行かないでしょう。【砂国】は【帝国】との繋がりも弱いし、情報も少ないのは確か。しかしソタローは何度も闘技に参加して手の内は分かってる。ベガの拠点はそれこそここ【闘都】なんだから。もし本気で勝ちを拾いに来るなら指名手配を解かれた隊長でも連れてくるべきだったわね」


 バチバチと女同士が口で遣り合ってるが、二人共実力者なんだろうからいっそお互いで殴り合いで決めればいいものをそこはやはり裏の支配者同士のメンツでもあるのだろうか?


 まぁ、面倒くさくなってきたのでちょっと気になってた別の話題を振ってみる。


 「ところで、立会人ってのは誰なんだ?俺や蠍じゃレディ側に寄り過ぎだろ?完全な中立ってのは……」


 話してる途中で、軽く手に持ってた扇子のような物で反対側の客席を指すレディ。


 そこには姿ははっきりとしないが、なんとも危険な気配を放つ人物が居た。


 見れば動きが一瞬止まり、それは心臓が止まるかと言う程息苦しく、無意識で武器に手がいくのを止められない。


 そんな危険な気配なのに、教えられるまでは全く気がつかなかった。ある種次元の違う化け物が静かに立って、下の闘技を眺めている。


 蠍が自分の腕を掴むと、我に返り武器に手をやるのを止める。


 「アレが噂に名高い剣聖よ。敵も味方も無く、タダ最強としてそこに個がある存在。普通ならこんな事をお願いできるモノじゃないんだけど、先だってちょっとした縁があったのよ」


 「ちょっとしたって、【王国】と【森国】の海洋貿易権と海賊行為の協定でしょ?全く面倒な協定を結ばれた所為で、こちらは【海国】との調整をやり直さなきゃならないわ」


 結局女同士が訳の分からん喧嘩を始めるので、目的は果たせなかったが、剣聖という存在が尋常じゃ無く危険だと言う事だけはよく分かった。


 女の話に混ざるのは嫌なので気配を消して素知らぬ顔をしてる蠍を話に引きずり出してやろう。


 「なぁ、最強としての個ってのは、敵なしって事だよな?寧ろ剣聖に代理で出てもらったら良かったんじゃないか?」


 「はぁ?何言ってやがる。そんな事したら世界中の切り札と呼ばれる危険人物が口出ししてくるに決まってるだろうが」


 「いやでも、剣聖が最強ならそんなもん……」


 「剣聖にだってそれに相対する事の出来る相手がいない訳じゃない。個なら剣聖だろうが、代表的な敵といえば剣鬼ってのが居る。個人の能力もさることながら集団を同時に動かせる【帝国】の化け物だが、今は剣聖も剣鬼も弟子の育成中心で、あえて当人同士はぶつからない。理由は簡単世界のバランスを保つ為だ」


 「そうなのか、ああいう危険なのが【帝国】にも?もしかして他の国にも?」


 「それこそ国に捉われないような者もいるから、あまり勝手放題はしない方がいいぞ?どこに誰がいるかなんて分からんのだからな」


 「俺が、理由も無く暴れるタイプだとでも思ったか?」


 「思ってないから、仕事を頼んでるんだろ。そんな事より少しは闘技を見たらどうだ?少しは戦闘の参考になるかも知れんぞ?」


 促されるまま闘技を見るが、正直な所スタイルと言うか次元が違いすぎて、何をどう参考にしたらいいか分らない。


 バキバキに筋肉がパンプアップされ体がでかくなるベガと平然とそれを受け止めて殴り返すソタロー。


 ベガの筋力の尋常じゃない事は身をもって体験しているが、それを受けて平然としている事がまず異常。


 全くぶれない肉体とそして心は確かにゲーム内のNPCに化け物と呼ばれても差し支えない実力だという事がよく分かる。いや理解(わから)せられる。


 ベガの巨大化した肉体が、今度は小型化し真っ白な彫刻の様に変化していく。


 『筋肉の化け物』


 ちらっと聞こえた闘技場の声が、正にその状態を的確に表現している。


 しかしそれでも一切怯む事無く、武器を手放し殴り合いに持ち込むソタローは狂気にしか見えない。


 尋常を遥かに越えたパワーのぶつかり合いも、いずれ終着を迎える。


 勝者はソタロー、この2人はお互いの筋肉を認めつつ、それでも勝者を決めざるを得なかった。


 そしてソタローがトドメと同時に呟く。


 「脳筋とは筋肉でモノを感じ、筋肉で思考し、筋肉で会話する者の事です」


 何のことかは分らないが、完全に本気の言葉だし、変に関わりを持つのだけはやめておこうと心に誓うには十分だった。

次週予告


 【帝国】の将ソタローを呼び出し強敵ベガを封印した

  フロリベスとレディの因縁に決着がついたかに見えたが

   それで終わらぬのが恨みと言うもの激突する女2人に舞い散る『砂漠の花』

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