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33.囮

 マダム・アリンと会ってから数日は、町でのんびり過ごし、自分の数少ない知り合い達と予定が合う日を待つ。


 準備が万端に整った所で、孔雀狩りを再開、今回は試作剣Ⅱに水のフィルムケースを挿して使用してみる。


 火と雷は何か赤や紫の光が延びて攻撃したのだが、水は流体の刃となって節尾剣の使用感と、ちょっと似てて扱いやすい。


 そして、孔雀側の攻撃も変化する。


 一つ目は火を纏った突撃だが、何かちょっとぱくられた気分……火達磨になって突撃って、結構プレシャー感じるものなんだな……。


 もう一つが、落雷攻撃だ。空は晴れ渡っているが、一瞬足元が光ったかと思うと、そこを目掛けてどこからとも無く小型の雷が降ってくる。


 とは言え、足元が光ってくれるので油断さえしなければ回避はそう難しくない。


 ベルトには風のフィルムケースを挿す事で、移動速度を上げて回避中心に立ち回れば、孔雀狩りもかなり安定する。


 何より、ボスサイズの魔物相手に単独で安定狩り出来る程の自分の武器の性能の高さを改めて思う。


 試作剣Ⅱにせよベルトにせよ威力だけを取れば、プレイヤー有数じゃなかろうか?


 戦闘専門職じゃない自分が戦えるのは、これらの武器のお陰だが、もしコレを戦闘専門職の連中が使ったらどうなるのだろうか?


 連接剣なんていう微妙武器使うプレイヤー自体あてが無いわ。


 更には風の剣を使うと、剣身は実体が無く長さも変わらないが、振れば衝撃波が飛び攻撃が当る。


 代わりにベルトにスピード様の風フィルムケースを挿せない上、敵は地震攻撃を使ってくるので、どうするか?


 ジャンプする?


 それは不正解。ジャンプした所に石礫が飛んできて、物理攻めにされるだけだ。


 正解は火石をセットして、物理防御を高めて強引に叩き潰す!脳筋プレイってのはなんともストレス解消になる。


 ついつい、飛ぶ斬撃で鳥を斬りまくり、テンションが上がるのを止められない。


 さぁ、次は土を使うか石を使うか……。


 孔雀狩りに夢中になっていると、ローブ姿の人影が二つ現れる。


 素早く精神力を回復するための〔癒液薬〕を飲みつつ、警戒心を高め相手の出方を伺う。


 何しろ今回のメインディッシュはこいつらだ。


 身長的に考えるとマダム・アリンではないようだが、彼女の差し金か、はたまた偶然邪神教団が自分を見つけて襲撃に来たのか?


 ただの改人なら、二人倒して核を回収。


 四天王が関わってくるなら、何とか正体を割り出したい所。


 風のフィルムケースをセットしたままの試作剣Ⅱを左手に構えて、ローブの人物の出方を伺う。


 「ブラックフェニックス!この前はよくもやってくれたな。蹴りを得意とする俺に、蹴りでトドメを刺してくるなぞ、洒落が効いてるとでも言うと思ったか?許さんぞ!」


 一人がローブを脱ぎ捨てると、それは夜会で氷漬けにして砕いた足の長い改人だった。


 「前回はその剣で痺れさせられて、不覚を取ったが今回はそうは行かんぞ?」


 そう言いながらもう一人もローブを脱ぎ捨てるものの、案の定腕の長い改人。


 とりあえず、やっちまっていいんだろうと、剣を振ると緑の衝撃波が刃となって二人を襲う。


 まだ、攻撃の間合いに入っていないと油断したのだろう。二人ともあっさりと喰らい、更に風精の効果か吹っ飛ばされる。


 急いであとを追い、立ち上がろうとする足長の腹を踏み潰しつつ、ベルトの火のボタンを押せば、


 パイピングが赤く発光し、そのエネルギーが足長に注ぎ込まれ炎上、


 「ぐるぅぁぁぁぁぁあああ!」


 叫びながらその場で悶える足長を尻目に、手長と対峙する。


 「前に他の改人に使った時は上手くかわしてたんだが、情報共有はされてないのか?」


 「……以前にお前と接触してるとなると……聖石収集班か?あれはベガ様の担当だからな」


 「ふーん?じゃあお前は別の担当なのか。しかし、この前の夜会では真に【訓練】を積んだ改人と聞いたが、またあっさりじゃねーか?一体何の【訓練】を積んでるんだかな?」


 「くそ!もう少しまともな相手なら俺達だって!」


 「おいおい、無限に回復するような肉体を持つ人間離れした奴を相手にまともな敵が用意されると思うのか?ふん!どうやら随分と普通な戦闘【訓練】を受けちまったみたいだな。まあいい。何で俺がここにいると分った?何故わざわざ狙いに来た?」


 「質問が多いな……」


 「いいじゃないか、前みたいにどうせはぐらかすんだろう?それともそんな余裕もないか?」


 その時視界の端に影がしなるのを捉え、反射で大きくかわす。


 サバンナのど真ん中でどうやって隠れていたのか、全身赤黒い血の様なローブを身に纏う女が、黒い鞭を片手に立っていた。


 ローブの割りに体にぴったりとフィットしたラインで女と分るが、目深にフードをかぶり、黒い仮面までして、中身までは判然としない。


 手袋もブーツも真っ黒、赤と黒のコントラストで全身皮膚の見える場所は1平方センチメートルも見当たらない。


 まあそれは、全身タイツの上から全身鎧風の皮服を着ている自分も同じ事だが……。


 奇しくもお互い真っ赤な装備で対峙するが、相手は二人で、しかも前回食らった砂嵐は一発で、宙に巻き上げられた酷いものだった。


 試作剣Ⅱを左手に持ちつつ、右手に節尾剣を取る。中には氷水のフィルムケースを仕込み、いざという時に備える。


 再び、鞭が飛んできた所を右手の節尾剣で応じ、鞭先と剣先が絡み合う。


 引き合いに持ち込まれ、一瞬足が止まった所で、


 「砂よ……」


 やはり聞いたような声だが、かなりくぐもっていて聞こえづらい?


 よく考えたら自分も正体を隠すために、フルフェイスで口まで覆いてるし、端で聞いたら、分りづらいものなのか?


 一瞬考えがそれた時には巻き上がる砂に覆われ、視界を潰される。


 だが、今回の装備は火石だ。石の重量上昇で飛ばされるのを防ぎ、尚且つ術ダメージを氷水で軽減する。


 折角なので、例の冑の効果を試す。


 動かせる影を生み出すが、聞いた説明の通りなら、コレで自分の姿は見えなくなっている筈だ。


 そのまま影を砂嵐の中に残し、強引に外に出ると、砂嵐は小型の砂のつむじ風だと分った。


 砂嵐を眺める女に近づき、石のフィルムケース側のスイッチを押しながら、蹴りを見舞う。


 パイピングが茶色く光るのと同時に女の脇腹に蹴りが入り、女がそのまま粉々になって崩れ落ちた?


 石精ってこんな朽ち果てる系の効果だったか?


 そう思った瞬間、試作剣Ⅱを持つ手に黒い鞭が絡みつく。


 「保険はかけておくものね。砂人形と蜃気楼をくっつけただけの張りぼてなのに、まんまと引っ掛かる相手もいるもの」


 「砂嵐の中の影は見破ってたのかよ?」


 「いいえ?じゃあ、おあいこね。どうする?」


 「どうするって?」


 「お互いこのまま続けても消耗するだけよ。あなたの目的は何なの?不利益が被らないなら、関わらないのがお互いの幸せじゃないかしら?」


 いざ話してみると、フランクと言うかなんというか、邪神教団とかいうからもっと宗教色ゴテゴテの信者みたいなイメージだったんだが……。


 まあ、今は話を引き伸ばすタイミングだ。大技を二発使ってベルトのエネルギーも心許ないし、さり気なく指輪で回復しつつ、時間を稼ぐ。


 「俺も目的は知らん。ただ依頼を受けて邪神教団の邪魔をしてるだけだ」


 「ふーん?ヒーローって言う触れ込みだったのに、ただの傭兵か裏の仕事人なのね。貴方が邪神って言葉に過剰反応して、私達を潰そうとしてるのかと思ってたわ」


 「……ふん、そんな正義漢じゃないな。だが俺の依頼主からしたら、邪神って言葉は不穏なのかもしれないな」


 「そう?じゃあ伝えていただけないかしら?私達ははぐれ者なのよ。普通なら誰もが得られる当たり前のモノを持たずに生きてる。だから似た者同士寄り添って助け合って生きてるだけ。神を信じるには残酷な世界を生きてるが故に邪神と言う言葉の元に集ってるに過ぎないのよ」


 「……そういうのはヒーローにでも言えよ。お前達が聖石を狙ってるのは何でだ?魔石も集めてるし、邪神の尖兵にも手を出してるんだよな?あからさまに目的があると言わんばかりなんだが?いずれにせよ俺はお前達の邪魔をする」


 「ふーん。この前は状況の整理ができなくて苛立っていたようだけど、今回は随分と冷静なのね?何でかしら?そこに貴方を攻略する糸口がありそうだけど……」


 目は見えないが、目深に覆ったローブのフードの下から射貫かれるような視線で見られていることだけは感じられ、思わず背筋に悪寒が走る。


 「って事は、お前があの夜会に居た方の四天王って訳か。まぁベガを助けに来たんだから必然そうなるんだろうが、そんなあっさり姿を現してよかったのか?」


 「どういう事かしら?」


 「ベガってのは如何にも直接戦闘を仕事にしそうな風貌だったし、口ぶりも戦うことに目的がありそうだったが、アンタは裏で策謀するタイプかと思ってな」


 「あ~私はカヨワイからね。それでいて可憐で、儚い砂漠のサボテンの花。確かに戦うタイプには見えないかもしれないわね」


 「サボテンは弱くないだろ?針で穴だらけにするとでも言いたいのか?」


 「ふふ、それもいいわね。正直な所、貴方は並みの改人じゃ歯が立たないわ。大事な仲間を傷つけられて平気で見捨てるようなら、四天王は名乗れないの」


 「邪神を信奉している割にまともな事言いやがって」


 「そちらは碌に目的も共有されず、捨て駒の様に扱われて外道教団なのかしら?仲間になるならいつでも歓迎するわよ。前歴を問わず、苦しみを抱える者を受け入れるわ!貴方の腕なら、すぐに幹部ね!」


 「ありがたい申し出だが、それは断る。俺は外道になりたくてなったんだ。外道じゃなきゃ俺の目的は達せない」


 「へ~じゃあ、貴方の目的は何なの?」


 「他人をいたぶって喜ぶような外道に後悔させることさ。痛みを知らずに他人を痛めつける奴らに痛み教えてやりたい。それだけだ」


 「そう……じゃあ代わりに私の目的も教えてあげるわ。仲間を見捨て、信用を裏切り、一人自分だけ安穏と暮らし、栄華を欲しい侭にする。そんな女に捨てた過去を思い出させたいの」


 「レディか?」


 「あら、気がついてたの?その通りよ」


 「そりゃ気がつくだろ。あんなアカラサマに魔石を押し付けて疑わせるような真似をすればな。だが、アンタ達からすれば、重要な物資だったんじゃないか?」


 「そうね~。教団全体の目的も大事だけど、私達個人を切り捨てもしないのよ。他人を不幸にしなきゃ己の目的を達せない。その虚しさが貴方なら分るでしょ?ところで、そのベルトそろそろ使えるんじゃないの?」


 話で時間稼ぎをしていたのはバレバレだった様だ。そりゃ夜会の時もやってたし当たり前か。


 指輪を引き抜き、試作剣Ⅱを一振りすると、緑のエフェクトが飛び四天王に襲い掛かる。


 しかし、いつの間にか移動していた手長改人が体で受け止め吹き飛び、隙を縫うように四天王が開いた手を下から上へと振ると、


 地を這うように砂が巻き上がり、脚を攻撃してきた。


 思わぬ痛みに、地面に膝をつくと、


 「ふふ!貴方の大技は蹴りだものね?足を封じられたら、使えないでしょ?」


 よく見たら足に砂がまとわりつき、地面に固定されている。


 振り下ろされた鞭を節尾剣で絡め受け、お返しに振った試作剣Ⅱの風精攻撃は、砂壁に受け止められた。


 更に回復した手長怪人が、四天王の前衛を勤めるように、腕の伸びるパンチのラッシュを見舞ってくる。


 石のフィルムケースの力で、物理防御は上がっているものの、受けっぱなしではジリ貧だ。


 四天王が空に手の平を掲げ、砂が集まってくるのが見える。


 どんな術かは知らないが、タメが長いという事は、それだけ強力である可能性が高い。


 万事休す……。


 と言う所で、四天王の腹からそれこそ太く長い針が突き抜ける。


 そして、同時に転がるフェニックスフレアボム。


 氷水のフィルムケースに精神力を込めて、耐える姿勢。


 四天王の影からは白い騎士の影、何故かやたらと洒落た銀に白い複雑な意匠の入った仮面を被っているが、それを突っ込むのは後日にしよう……。


 変なことに気を取られた時には、手長怪人がフェニックスフレアボムに覆いかぶさり、その上から四天王が砂で覆いつくす。


 地響きと、巻き上がる砂。


 うっすらと見える影から、女の声がする。


 「貴方も仲間を隠してたのね?似たことばかり考えて本当に嫌な男。いずれ招待するわ。私の名は四天王フロリベス」

次週予告


 四天王の一角の名前が判明する

  近いうちに招待されるとは?一体どういう事か

   次こそは自らの手で勝つと心に決め残りの精霊の力の抽出を『完成』させる

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