第57話:軽キャンみたい
しばらくだいふくのコミカルな動きに大爆笑したあと、あらためて本題に入ることにした。
「ふぅ……霧島さんがこんな人だとは思わなかったわ。あ、いい意味でだからね。だからいいんだけどさ」
「はぁはぁ……私はちょっと笑いすぎてお腹痛いです……」
気に入ってもらえたようで何よりだが、ちょっと悪ふざけが過ぎたか。
ここからは気を引き締めていこう。
「まぁ、訓練すれば同じようなことを出来る犬もいるかもしれないが、言い方をかえたりしても全部理解していただろ?」
ふざけながらも、途中でいろいろな言い回しで何種類もの指示をだしていた。
もちろんだいふくは全て理解して、その通りのことをしてみせている。
「うん。ちょっと半信半疑だったけど、本当にだいふく君は理解しているようね」
「ほんとに賢いですよね!」
「ばぅ!」
なんかドヤ顔がムカつくが、まぁオレも本当に凄いと思うから黙っておく。
「でも、それがそこまでの秘密? なんか深刻そうに言うから身構えちゃったじゃない」
「さわりしか説明してないからな」
「「さわり………………」」
うん。なかなか鋭いジト目だ。
だんだん遠慮がなくなってきたな……。
「じゃぁ、だいふく。ダンジョンに入るまで、一度潜っておいてくれ」
「ばぅわぅ!」
だいふくの足元に影が広がると、一瞬……ではなく、ゆっくりとその影に潜っていった。
本当は一瞬で「とぷん」って感じで潜れるはずなのだが、また変な演出つけてゆっくり回転しながら沈んでいった……。本人が気に入っているならまぁいいいか。
「「………………へ?」」
「というわけで、細かい説明とかはダンジョンの中で話すよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
ちっぽけな見栄を張って料金を支払い、止めてあるオレの軽トラの下までやってきた。
ここもかなりの田舎なので無駄に駐車場がでかい。
だからと言っていつまでも車を止めていていい理由にはならないが、一応飲み食いして個室の料金まで支払っている。しばらく駐車場を利用させて貰うが許して欲しい。
「あれ? さっきは遠目でわからなかったけど、ずいぶん弄っているのね」
「あ、やっぱり普通の軽トラックと違いますよね?」
「へぇ~わかるんだ。亡くなった爺ちゃんから受け継いだ軽トラなんだよ。生前は軽トラ弄りが趣味でな」
こんな綺麗どころ二人に褒められたら、爺ちゃんも向こうで喜んでいるだろう。
「それで……本当に荷台の上に……あれがあるの?」
「あぁ、あるよ。二人には見えてないだろうが、オレには今も見えている」
なんのことか。もちろんダンジョンゲートの話だ。
「ところで、二人は気付かないか?」
「気づく……?」
「何をですか?」
「いつもより身体が軽くないか?」
「あっ!? 本当だわ!? これってまさか!?」
「濃度は薄くしてあるが、ゲートから魔力を少し放出させてあるんだ。ここはその圏内なんだ」
普段は運転席にギリギリ届く半径1メートルほどのエリアにしているのだが、今は設定を変えて半径5メートルほどに魔力が広がるようにしてある。
魔力は薄くしてあるのでダンジョンの中ほどではないが、それでも探索者なら違いが確実にわかるだろう。
「ほ、本当にそこにダンジョンゲートがあるんですね……」
森羅さんが呆然としながら呟き、三上さんが息をのんだ。
「そうだ。今から二人にも見えるようにするから、少し待ってくれ」
オレは既に表示させてあった第二の視界に意識を移すと、二人を許可リストに追加した。
もうこういう操作も慣れたものだ。
「み、見えたわ……。霧島さん、もうほんとになんでもありね……」
「なんでもありってわけではないが、これがオレの最大の秘密にして最大の強みの一つだ」
「は……? 強みの一つってことは、まだあるってことじゃない!?」
「み、三上さん、こ、声が大きいです」
「そ、そうね。ごめん。鏡花ちゃん。霧島さんが、あまりにも非常識なこと連発するから……」
何度目かのジト目をそっと目を逸らして躱すと、無理やり話を進めることにする。
「ま、まぁ、いろいろあるんだ。とりあえず中に入ってくれ。ささっ。安全だからさ」
「なんか家に友達呼んでるみたいな言い方ね……」
ぶっちゃけ家みたいに思ってるのは今は黙っておこう……。
と、そこで三上さんの格好を見て気付いた。
「あ、ちょっと待ってくれ。忘れてた」
二人ともスカート姿だ。
しかも三上さんはかなりのミニだし、そのまま荷台にあがらすのは不味い。
でも、人を招待する日がいつかくるかもと、ちゃんと用意はしてある。
オレは管理者倉庫に意識を向けると、保管してあるDIYした階段を荷台の後方に配置。
そのうえで、同じく管理者倉庫に入れてあったカスタムパーツの特製ハード幌を荷台に設置した。ダンジョンゲートの出入りを隠すためだ。
ぱっと見た目は軽自動車仕様のキャンピングカー、軽キャンみたいに見えるはずだ。
「なっ!? い、いいわ。今はもう突っ込まないわ……」
「こ、こんな大きなものを……しかも一瞬で任意の場所に取り出して……」
アイテムボックスのスキルだとこんな大きなものは格納出来ないからな。
まぁこれも今更だ。
作業部屋の存在も知ってるわけだし。
「お待たせ。じゃぁついてきてくれ」
そう声をかけると、オレは一人先にダンジョンゲートをくぐったのだった。




