第44話:異邦人を倒せ⑥
だいふくがレベル108とかいうとんでもないレベルに達し、存在進化までしているだろうことはわかった。
でも、だからと言って異邦人との戦いに巻き込むばかりか、任せてしまっていいのだろうか?
まだ生後三ヶ月の小さな頃に家に来てから、ずっと一緒のだいふく。
爺ちゃんにもよく懐いていてた。半分餌付けされてた感じだけど。
そう言えば……爺ちゃんがよく口癖のように「だいふく、お前はいつか大物になる!」とか言ってたけど、このことか!?
なるとしても大物だろって思ってたのに、本当に大物になってしまった。
話が逸れた。
さっきも限界まで分析スキルを使って強制終了してたから、急がないと……。
そもそもだいふくは戦うことが出来るのか?
だいふくは凄いレベルにはなっているが、どうやってレベルを上げたんだ?
誤ってフィールドボスになってしまった時は確かにレベル1だった。
となると、自分でレベルをあげたってことだよな?
もしかしてオレの真似をしてスライムを倒してた?
いや、それだけじゃ無理だ。
スライムだけではどんなに倒してもオレと同じぐらいのレベルが限界だ。
そうなるとコボルトたちも……。
というか、まさか二〇〇体の大群を倒してレベルあげしたのか?
あれ? でも、配置したのは昨日だ。
時間的に厳しいよな。
なにか強い敵、適正レベルの敵と戦い続けなければ、レベル108とかいうとんでもないレベルにはなれないはずだ。
軽トラダンジョンのログを解析すればわかるかもだが、今はまだ戦闘中だ。
いくら分析スキルで思考加速しているとはいえ、時間が足りない。
駄目だ。わからん。
だいふくが高レベルに至った理由は後回しだ。
まずは、このあとの戦闘をどうするか……。
あ、不味い……!?
この頭が締め付けられるような感じは、もう思考加速状態が解除される!!
さっきよりだいぶん短い! 何度も連続で使っているからか!?
まだ考えが全然纏ってないというのに、すぐに判断をくださないといけなくなってしまった。
しかし焦っても答えは出ず、音がゆっくりと戻ってきた。
だいふくが足元まで来て見上げている。
あれ……? さっき数メートル先にいたはずなのに、なんで足元に?
今オレ、思考加速中だったよな?
などと混乱していると、まだ音が完全に戻っていないというのに、だいふくがぶれるような動きを見せ……オレにお尻を向けた。
は? なんでまだ思考加速が完全に解けてないのにそんな速さで動けるんだ!?
尻尾振ってるの可愛いけど、それ、実際にはどんな速さで尻尾振ってる!?
そもそも、どうしてわざわざオレの前まで来てお尻を向けたんだ?
意味がわからず、でもだいたいだいふくの行動に意味を求めていいのかとか更に混乱を深めていると……。
「ぐっ!? 完全に解けた!?」
音を取り戻した世界の中で、だいふくが吠えた。
「ばぅわぅ!」
すると、だいふくの周りに黒い一つの球体が……。
「え……それって異邦人と同じ……」
大きさ的にはだいふくがよく一人でドリブルしているボールぐらいの大きさだ。
異邦人のものより少し小さい。
って!? 異邦人はどうなった!?
そう思って吹っ飛んでいった方へと目を向けると、奴は既に起き上がり、その周りには凄い数の黒い球体が……もう反撃体勢に入ってる!?
あの数は不味い!?
「だいふく、避けろ!!」
オレは管理者ローブによって守られている。
魔法の場合は完全には防げないようだが、それでもかなりの耐性があるのはわかった。
あの数の魔法を全部受けてもHP全損まではいかないはずだ。
でも、だいふくは何も着ていない。裸族だ。
服を着せると嫌がって動かなくなるから、真冬でも服は着せてない。
まぁ普通のパグより防寒性能高そうな丸い体しているからか、短毛の毛並みなのに暑さには弱くて寒さに強いからそれはいいんだ。
って、そんなことは本当にどうでもいい!
だいふくがいくらレベルが高いと言っても、あの数の魔法をまともに喰らえばただじゃ済まないだろ!?
そう思ってだいふくを庇おうと飛び込んだのだが……。
「ふがっ!?」
避けられた……。
突っ伏すオレのすぐ鼻先で相変わらずお尻を向けて尻尾を振っている。
「痛つつ……だ、だいふく! 危ないんだって!? このローブの中に入れっ……て……え……?」
「ばぅ」
だいふくが小さく吠えると、浮かんでいた小さな球体が一瞬でバランスボール並に大きくなった。
しかも、なんだか異邦人が使っているものより、禍々しい雰囲気があるんだが……。
そうこうしているうちに鳴り響く轟音。
しかし、だいふくの出現させた黒より黒い、漆黒の球体が盾になってオレたちは無傷だった。
いや、それどころか……。
「ばっふぅぉ~ぉん!」
いつもの下手な遠吠え。
でも、周りに展開された光景は初めて見るものだった。
異邦人が操る数を遥かに超える数の漆黒の球体が、無数に宙に展開されたのだ。
「な、なんだこの数……」
思わず漏れた呟きと同時に、ゆっくりと動き出す漆黒の球体。
動き出しが遅いのは異邦人の扱う魔法と同じようだが、そこからトップスピードに至るまでが段違いに速かった。
「ば、バかナ……ぎ、ぎィゃぁァぁァぁ!?」
今までとは桁違いの音と衝撃波。
まるでダンジョンそのものが揺れているようだ。
それなのに、オレたちのいるこの場所には全く被害は及ばなかった。
ただ、ちょっとうるさいだけだ。
なぜだろうと目を凝らすと、なにか黒い影のような膜が周囲を覆っていた。
これもだいふくがやったのだか……。
あまりに圧倒的すぎるだいふくの強さに、ちょっとドン引きだ。
うん、おやつ増やそうかな。
さすがパグム




