第42話:異邦人を倒せ④
間に合え!!
「通用ゲート!!」
鳴り響く轟音。
異邦人から放たれた無数の黒い球体。
一つ一つが普通の探索者なら一撃で屠れるほどの威力を秘めていただろう未知の魔法。
だけど、そんな凄まじい威力の魔法もゲートを破ることは出来なかったようだ。
ゲートとそのゲートの周辺の物体には非破壊属性が付与される。
話の上では知っていた。
ダンジョンが出現した当時、いくつかの国ではダンジョンゲートの破壊が試みられた。
中には核兵器まで持ち出してゲートを破壊しようとした国もあったのだが、ダンジョンゲートだけでなく、その周りの物も傷一つ付けられななかった。
このことから、ゲートとその周辺の物体は非破壊オブジェクト化すると言われるようになった。
それを思い出したので、急いで出現させていた通用ゲートを消し、すぐさま目の前にもう一度通用ゲートを開き直したのだ。
「ははは。上手くいった……通用ゲートだって、ダンジョンゲートには違いないからな」
上司がいたら間違った使い方だと怒られそうな使い方だけど、ダンジョン管理者のオレに上司はいない。え? いないよね?
さすがの異邦人もこれは完全に予想外だったらしく、目を見開いて……目は黒くて見えないが、驚いてそうな雰囲気を醸し出している。
でも、また首の皮一枚繋がったというだけで、問題が解決したわけではない。
通用ゲートを手に入れたのはいいが、接近戦を強いられればこの方法では防げない。
ただ、物理防御に対して圧倒的な防御力を誇る管理者ローブと、通用ゲートを使った無敵の盾があれば、多少は抗うことも出来るはず。
なんとかリソースが一〇〇〇貯まるまで時間を稼ぐか、一旦作業部屋に避難しなければ。
って、そうだ。なぜかリソースが増えないんだった……。
避難一択か。
「きサま、ゲートをあやツレるノか。マさか、やつラにくミスるモノなのカ」
え? なんだ? 奴らって?
この異邦人以外にもいろんな奴が存在するというのか?
ダンジョンが出来て三〇年。
その謎に迫ることは未だに全然出来ていない。
だというのに、オレみたいな新人探索者の前でぽいぽい新情報を公開しないでくれ。
ダンジョンゲートが軽トラの荷台に出来て以降、オレの周りで矢継ぎ早に色々なことが起きすぎだ。
もうお腹いっぱいなんだ……勘弁してくれ。
「オレはどこにでもいる普通の探索者だよ!」
「ふツウのたんサクしゃはゲートをひラくことハでキない」
「………………………………」
うん。異邦人の言っている事のほうが正しくて反論できねぇ……。
とにかく、会話で時間を稼ぎつつ作業部屋のある方へと徐々に移動をしようとしたのだが、事態は悪化したようだ。
「きサマにきょうミがわイた。ホバクさせてモラおう」
は? ホバクって、捕縛?
やばい!? ほんとにやばい!?
管理者ローブと通用ゲートのお陰で、ある程度の攻撃なら耐えられる目処がやっとついたというのに、次から次へと攻め方を変えてくるなよ!?
もっと一貫性を持った攻めをしかけてきてくれ!
「ちょっと今日は予定が入っているんだ。また今度にしてくれないかな~? なんて……」
ダメ元でも会話で時間を稼ごうとしてみるが、もう返事すら返してくれない。
魔力の高まりを感じるし、問答無用でなにか仕掛けてきそうな気配だ。というか、嫌な予感がする!!
捕まえるとか言っていたから、とにかく立ち止まっていては不味いのでは!?
「ダークバインド」
勘任せに横っ飛びした直後、さっきまでオレが立っていた辺りの地面から、黒い柱が立ち昇った。
よく見ると、飛び退いた時に蹴り上げた小さな岩が中に捉えられている。
「あぶねぇ!?」
飛び込み前転のような体勢から勢いよくそのまま立ち上がると、とにかく的を絞らせないように無我夢中で走った。
「ダークバインド」
「ダークバインド」
「ダークバインド」「ダークバインド」
「うあぁぁぁ!?」
ダッシュしたり、反転ダッシュしたり、ジグザクダッシュしたり、飛び込み前転してダッシュしたり、立ち上がってダッシュしたりして何とかぎりぎりの所で躱していく。
ず、ずっとダッシュとか無理だから!!
これ、もう逃げ切れないのでは!?
最初異邦人を見た時は、なんだかちょっとぼーっとしているように見えたのに、すごい的確に狙ってくる!
おまけにオレが作業部屋ゲートの方に行きたいのに気付いているようで、行く手を阻むように魔法を放ってくるし! 第一印象と違いすぎるだろ!
「あっ!? がはっ!?」
まずぃっ!? ダークバインドに気を取られていたら、こっそりダークボールを撃ってきやがった!?
浮遊感を味わうのは四度目だが、今回は完全に不意を突かれたせいで体勢が最悪だ。
胸から地面に突っ伏すように打ち付けられ、一瞬意識が飛びそうになる。
「チョこまカと……まズはスコしいたメつけルか」
異邦人の言葉が聞こえ、これは不味いと立ち上がろうとするが、軽い脳震盪でも起こしたのか足元がふらついて起き上がれない。
くっ!? 逃げるのは無理だ!
即断即決、咄嗟に通用ゲートを呼び出した。
「通用ゲート!!」
這這の体でゲートの陰へと転がり込む。
轟音が収まったらすぐに立ち上がって……。
「そこマでダ」
顔を上げると、通用ゲートの横に異邦人が立ち、こちらを見下ろしていた。
おまけに左手のひらをこちらに向けて、もう魔法の発動準備も終えているようだ。
あ、詰んだ……さすがにこの距離は避けられない。
万事休すか……。
「ダークバイ……ングガァ!?」
と思ったら、突然異邦人が吹き飛んだ。
「へ……? いったいなにが……って、えぇぇ!?」
さっきまで異邦人が立っていた場所には、見慣れた丸いシルエットが……。
「お前、なんでこんな所に!?」
そこには愛犬のだいふくがいたのだった。
「ばぅ?」
銀の食器を口に咥えて……。
ばぅわぅ(お待たせ)
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