第41話:異邦人を倒せ③
仕方ない……一度、分析スキルを解除しよう。
これ以上思考加速状態が長引くと、解除した瞬間倒れてしまうかもしれない。
とにかく森羅さんと一緒に一度作業部屋に退避しよう。
そこで時間を稼いでリソースを貯めて……ん?
……なんだ? リソースが増えるどころか減ってるじゃないか!?
どういうことだ?
一体なぜ、リソースが減って……ぐっ!?
その時だった。急に頭が割れんばかりの痛みに襲われた。
最悪なことに、ここに来てとうとう分析スキルの稼働限界が来てしまったようだ。
強制的に思考加速状態が解除されていく。
ゆっくりと音が戻って来る。
やばい……これ、動けないんじゃないか……。
急に冷静になって血の気が引いていき、同時に意識が薄らいでいく。
こんなタイミングで気を失ったら、もう目を覚ますことはないだろう。
こんな所で死ぬのか?
いや……そんなの受け入れられるか!!
森羅さんも百花のみんなもオレのことを信じてくれたんだろ?
オレが死んだら作業部屋が解除されてみんな外に放り出されてしまう!
今まで安穏と生きてきて、ここまで何かに本気で取り組んだことなんてなかった。
たまにはカッコつけてみたっていいんじゃないか。
そうだ……意識をしっかり保て!!
森羅さんに声を掛けて、作業部屋に飛び込むんだ!!
朦朧としながらも気合いで踏みとどまり、腹の底から声をあげた。
「し、森羅さん!! 作戦中止です! 後ろのゲートに飛び込んで!」
よし!! なんとか意識を失うことだけは避けられた!
「え? ちゅ、中止ですか!?」
「すまない! すぐに後ろのゲートに飛び込んでくれ! オレもすぐ行く!!」
「わ、わかりました!!」
聞き分けのいい子で助かった。
ここで「なんで?」とか聞かれて時間を掛けることになったらきつかった。
森羅さんも作業部屋のゲートに触れて消えた。
あとはオレが後に続けば、中でみんなで案を出し合って立て直しを……。
「がはっ!?」
衝撃を感じると同時に天地がわからなくなり、視界がぐるぐると回る。
一瞬分析スキルの副作用による目眩かと思ったがなんのことはない。
比喩じゃなく、オレが吹き飛んでいた。
「んぐぁぁぁぁ!?」
一〇メートル以上宙を舞い、広場の入口まで吹き飛ばされてしまった。
異邦人、動き速すぎるだろ!?
最後見た時まだかなり距離があったぞ!?
森羅さんが作業部屋に入って前鬼と後鬼の動きが止まった瞬間、一気に距離を詰めて来てオレを蹴り飛ばしやがった。サッカーボールじゃないっての!
でも……管理者ローブすげぇ~。
それなりの衝撃は感じたが、HPあんまり減った感じしないぞ?
まぁだからって、今みたいな速い動きについていくのは無理だし、現状かなりやばいことには変わりはない。
転がった勢いそのままにすぐに立ち上がって異邦人の姿を探す。
「え?」
探す必要などなかった。
異邦人くん、既に目の前まで迫っているんだが。
まじか……速すぎるだろ!?
咄嗟に構えたポリカーボネート製の盾……は、もう壊れて取手しかねぇ!?
慌ててメイスを構えるが、奴のほうが数段速かった。
「うがっ!?」
あまり痛みは感じないのが救いだが、今度は殴り飛ばされた。
また一〇メートル以上吹き飛ばされて地面を転がる。
くそっ……どうせなら、作業部屋ゲートの方に蹴り飛ばせよ!
残念なことに更に離れてしまった。
しかし嬉しい誤算もある。
やっぱりHPはほとんど減ってなさそうだ。
いったいこの管理者ローブどんな性能してるんだ?
管理者ローブ、まじで優秀すぎる。
首の皮一枚繋がった程度の希望だが、これなら偶然作業部屋ゲートの方にでも吹き飛ばされれば、そのまま逃げ込めるかもしれない。
淡い期待を抱きつつ慌てて立ち上がる。
HPがほとんど減らないからって殴られたくはない。
どこにいるかまだ把握出来ていないが、手をクロスして衝撃に備えた。
しかし、異邦人は動きを止めていた。
「ドれだけガんジョうなンダ……」
なんか異邦人に呆れられた件について。
「ははは。ちょっと人より頑丈みたいで……」
笑って誤魔化しつつ、少しずつ作業部屋ゲートの方に移動していく。
しかし、そんな都合よく待ってくれるわけもなく……。
「うム。そレ、なら、まほうハどウだ?」
いや、そんな色々試さなくていいんだけど!?
みるみるうちに、なんだかヤバそうな黒い球状の物体が異邦人の周りに何個も浮かび始めた。
絶対あれ、こっちに向けて撃ってくるよな……?
「ダークボール」
「だよなぁ!?」
もうこそこそする必要もないので、全力で作業ゲートに向かって走った。
オレだってレベル20の探索者だ。
アスリートを超える運動能力を持っている。
このまま一気に駆け抜けて……と、思ったのだが、次々と放たれる魔法を避けながら走るのはやっぱり無理だった。
「がはっ!?」
今日三度目となる浮遊感を味わうことになった。
ぐっ……しかも、この感じはちょっとHP削られた!?
殴る蹴るの暴行はダメージをほぼ受けなかったが、魔法による攻撃は完全には防げないようだ。
やばい……気付かれないようにしないと!?
「なんだ。びっくりした。派手な魔法だったから焦ったよ」
「うム。まほうナら、たシょうハきくヨうダな」
スカ◯ターかなにか何かお持ちで!?
いや、単にオレが纏っている魔力が減ったのを感じ取ったのだろうけど、速攻で気付かれた!
不味い不味い不味い!
せっかく一瞬希望が見えたのに、このまま魔法を延々叩き込まれたらもう終わりだ。
せめて、なにか盾になるようなものを!
管理者倉庫の中を探すが、都合よくそんなホイホイ見つからない。
「これでオわりダ」
管理者倉庫から奴に意識を戻すと、そこには無数の黒い球体が浮かんでいた。
さっきの倍じゃ効かない数だ。
まじか……あんな数、喰らったらおしまいだ……。
な、なにか身を守るものを!
はっ!? そ、そうだ!!
「ダークボール」
宙に浮かんでいた黒い球体が一斉に動き出す。
さっきも初動はそこまで速くなく、途中から加速していた。
間に合え!!




