第30話:百花
その後も森羅さんとオレとで交互、もしくは共に戦い、パーティーとして戦うならというアドバイスをいくつも貰った。
オレ達は今七人いるので経験値が入っているのかは微妙だが、今までソロでしか戦ったことがなかったので、かなりいい経験になったと思う。
「森羅さんも霧島さんも、本当に新人とは思えない動きをされますよね」
「ほんとほんと! 鏡花ちゃんの薙刀のキレも凄いけど、私的には霧島さんのベテラン風戦闘も好きだな~」
「いや、三上さん、ベテラン風ってなんですか、風って……」
確かにコボルトとは嫌ってほど戦っているけど、ベテランって呼ばれる人ほどの経験は積んでないと思うんだが……。
「さぁ、みんな。そろそろ集落のある場所に近づいてきたから、少し休憩してから気を引き締め直して本番といきましょう」
それからオレたちは一〇分ほど休憩を挟んだ後、ゴブリンの大集落、イレギュラー討伐に向けて出発したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
百花のメンバーが連携して斥候役と思われるゴブリンの一団を鮮やかに倒し、岩陰から大集落の様子を伺っていた。
休憩後はオレと森羅さんは少し後ろに下がって後方警戒を受け持っており、これから始まる戦いを離れた比較的安全な位置から見学させて貰うことになっている。
こんな大規模な討伐戦を見学させて貰えるなんて、誘ってくれた森羅さんに感謝だな。
危険はゼロではないと説明を受けて一瞬悩んだが、今はお誘いを受けて良かったと思っている。
「(行くわよ)」
「「「(了解!)」」」
宙に浮かぶ人型の紙を中継して百花の声が聞こえてきた。
これは日暮さんのスキルだ。
電子機器の使えないダンジョンの中で離れた場所にいる者たちと意思疎通が出来る、かなり貴重なスキルだ。
でもちなみに森羅さんも使えるらしい。優秀すぎんか?
「いよいよか……」
最後の休憩で受けた作戦の概要はこうだ。
まず囮役の三上さんが正面から切り込み、釣りだしたゴブリンを椿さんが弓で迎撃。
数で押されだしたら三上さんはみんなの所まで下がり、穂上さんがスキルを使って陣地を構築。
合流したら追ってくるゴブリンを椿さんが遠隔から弓で削り、くぐり抜けてきたのは槍使いの本庄さんがスキルを使って殲滅する。あとは三上さんが遊撃する形でとにかく数を減らしていくそうだ。
ちなみに日暮さんは、メンバー全員に守りの護符を授けたり、怪我をした時の回復を受け持つみたいで直接戦闘には参加しないらしい。森羅さんみたいな戦闘力のある式神は使えないため、今回みたいな格下の戦いだと恐らく出番はないだろうと嘆いていた。
しかし、改めて簡易マップで確認してみるが、やはりゴブリンの数が多すぎて敵を現す赤い点でマップが塗りつぶされてしまっており、正確な数は確認出来ないな。
この数をたった五人で倒すというのだから、高ランク探索者というのは本当に凄まじい。
この程度全く問題ないと聞いているのに、見ているだけのオレの方が緊張している。
横にいる森羅さんも同じく緊張しているようだが、でもこちらは好奇心が勝っているのか、これから始まる戦いに興奮しているようだ。
「は、始まりましたね!」
聞いていた通り、三上さんが岩陰から単身飛び出し、大集落の門まで走っていく。
その姿ははっきり見えているはずなのに三上さんの姿が認識し辛い。
気配遮断のスキルを使うと言っていたがここまでわかりにくくなるのなら、闇に紛れて近づかれたら絶対にわからないな。
ただ、さすがに刃が届く距離にまで近づかれるとバレるようだ。
と言っても……気付いてその次の瞬間には斬り倒されており、靄となって消えていく。
一人で既に一〇匹以上のゴブリンを倒しているのに、全然騒ぎにならない……。
「まじか……すごいな……」
ダンジョンの魔物は倒すとすぐに靄になって消え去り死体が残らないのもあって、全然気付かれていない。
塀の外を巡回しているゴブリンが近づいてきて、とうとう発見される……が……。
「ま、まじか……」
そこへ、椿さんの魔導弓から放たれた矢が降り注ぎ、数匹のゴブリンを一瞬で殲滅してしまった。
椿さんが使う弓は矢を魔力で生成する魔導弓と呼ばれるものなのだが、椿さんが所持している武技系のスキルに矢の雨を降らすようなスキルがあると言っていた。今のはそれを使ったのだろう。
作戦の説明を受けた時に使用する主要なスキルの説明を受けたが、ここまで凄まじいとは思わなかった。途中で分裂して少なくとも数十本の矢になっていたぞ……。
うん。一向にバレる気配がないな。
このまま二人で削りきってしまうんじゃないか? とそう思い始めた時、カンカンと金物を叩くような音が響き渡った。
「(あ~完封したかったけど、ここまでか~。そっちに釣り出すね!)」
「(ハリキリ過ぎ! 私の出番がなくなるところだったじゃないか~!)」
いや、ほんとに余裕だな……。
疑っていたわけではないが、ここまでとは思わなかった。
三上さんがメンバーが待つ後方へと撤退していくが、その間にも隙をついては飛び出しているゴブリンを間引きしていく。
さらに椿さんも撤退を補助するように矢を次々と放っていたので、追いかけてきた最初のゴブリンを倒してしまった。
「(お疲れ様。後ろに下がってちょっと休んでて)」
この声は穂上さんかな?
スキルで陣地を作るって言っていたけど、どうやるのだろう。
あとのお楽しみと言われていたので、詳しくは教えて貰っていない。
興味津々で眺めていると、掻楯を地面に突き刺した。
「穂上さんのスキルを見るのは私も初めてです!」
森羅さんも探索者として上を目指していると言っていただけあって、オレ以上に興奮しているようだ。目が輝いている。輝いて……るな!?
「し、森羅さん? 目が……」
まじか……本当に目が光ってるんだが!?
「あ、これは遠見のスキルです」
どうも、これも陰陽系のスキルらしい。
思わず二度見してしまったわ!
などと騒がしくしてると、地面に突き刺した掻楯が……。
「陣地を作るって文字通りだな……」
掻楯が横に広がるように増えていき、百花を取り囲んでいく。
しかも、前方には敵の侵攻を阻むように幾重にも展開されていた。
こうなると迂回する必要があり、近づく間にも椿さんから集中砲火を浴び、その半数が百花に一太刀も浴びせることも出来ずに散っていく。
ただ、ゴブリンも数だけは多い。
掻楯をすり抜け、矢を掻い潜り、百花へと辿り着く者たちが現れだした。
しかし……そのゴブリンもたった一撃のスキルで葬り去られた。
本庄さんがなんらかの槍のスキルを使ったのだ。
「すげぇ……」
掻楯の隙間から放たれた槍の一撃は放射線状に広がり、辿り着いたゴブリンを纏めて貫いてしまった。
それでも数が多いので数匹は生き残るものも出てくるのだが、その生き残りも三上さんが遊撃して倒して回っており、ゴブリンの数はあっという間にその数を減らしていった。




