第18話:ほくほく
大量の魔石をカウンターに並べていく。
簡易マップやミニレーダーを駆使して五時間もダンジョンの中でスライムを狩り続けたので、今日の分だけでもかなりの数だ。そこに今まで軽トラダンジョンで貯めに貯めた魔石をいくらか足したので、かなりの数になっていた。
リュックに手を突っ込んだ時にバレないように管理者倉庫から取り出したのだ。
「昨日探索者になったばかりなのにマジかよ……。すげぇ数だな」
「いやぁ。途中からスライム見つけるコツを掴んだみたいで」
「え? スライム見つけるのにコツとかあるのか?」
「それはほら、企業秘密ってことで……」
そんなコツは存在しないが。
大まかな位置は簡易マップでわかるし、近くまで行ったら隠れていてもミニレーダーですぐに発見できるからな。レベル12だとメイスで一撃だし。
ぶっちゃけ、もうここのスライムではレベルが上がらなくなってるからゴブリンを倒したいところなのだが、表向きには今日が初ダンジョンってことになっているのでいきなりゴブリンの魔石を持ち込んで勘ぐられても困る。
だからしばらくはスライムの魔石だけを持ち込むつもりだ。
ただ、明日からはレベルあげのためにゴブリンと戦おうと思っている。
もちろん手に入ったゴブリンの魔石を換金したりはしない。しばらくは管理者倉庫に貯めておいて、買い取りは代わりに大量にあるスライムの魔石を出すつもりだ。
そうすれば、レベル上げをしつつスライムの魔石でお金も稼げるので一石二鳥だ。
「まぁそれはそうか。しかし、何時間潜ってたんだ? もしかして時間の流れがかなり早かったのか?」
「どうなんでしょう? でも、中で過ごした時間と比べてこっちでは全然時間はたってなかったですね」
本当は正確にダンジョンの中の時間の早さはわかるのだが、その辺りは濁しておいた。
「そりゃぁ初めてダンジョン入ったなら時間の感覚なんてわからねぇか。高レベルの冒険者の中には体感でわかるやつもいるみてぇだが」
「それはすごいですね。その空間の流れる時間の早さなんて測りようがなさそうなのに」
「なんとなくわかるようなスキルでも持ってるのかもしれねぇな。高レベルになると山ほどスキルを持っている奴もいるしな」
なるほど。オレのスキルもそうだが、世の中には予想だにしない様々なスキルが存在している。もしかしたら、そういうのがわかるスキルが存在するのかもしれない。
「それで話を戻すが……スライムの魔石は合計二四五個だ。お前、すげーな……」
おっと……ちょっと一度に出しすぎたか。かなり呆れられてしまった。
いや、軽トラダンジョンだと無限ループでスライム倒せるから、普通がどれぐらいか見誤ったようだ。
「ははは。きょ、今日は弁当持って入って半日ぐらいがっつりスライム狩ってたので」
「すげーやる気だな。まぁいいや。スライムの魔石が一個三〇〇円だから、全部で七万三千五百円だ」
おぉ~! わかってはいたが、まだお昼前なのに中々の稼ぎだ!
ダンジョンの中の時間で実働五時間弱で七万ちょっと。
今回はもともと持っていた魔石を管理者倉庫から二〇〇個ほど出しているが、たぶん同じ時間軽トラダンジョンでスライムを狩ればもっとたくさんの魔石を集められる。
リポップする時にわずかにリソースを消費するが、今うちのダンジョンはスライム一〇匹しか配置していないので、一〇秒に一匹倒しても時間で回復するリソースの方が遥かに多い。
体力の続く限り、まさに無限ループで倒すことが可能だ。
だから本気を出せばスライムの魔石なら一時間で一〇〇〇個ぐらい集められるんじゃないだろうか?
しかも普段はダンジョンの中の時間の流れを一〇倍に固定してあるので、外の時間で六分しか経っていないというチート。
なんとなく漠然とめちゃくちゃ稼げるだろうなぁとは思っていたが、これは想像以上だ。
まぁそんな気はしていて、正確に割り出すのが怖くて計算してなかっただけなんだけど。
「いやぁ。頑張った甲斐がありました。はははは」
「はぁ~……ちょっと頑張りすぎだ。疲れていると集中力を欠いて大怪我するぞ? 次からはほどほどにしとけよ」
「そ、そうですね。明日からは気をつけます!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「魔石の買い取りお願いしまーす!」
「おい……次から気をつけるんじゃなかったのかよ?」
「えっと……気をつけるのは明日から?」
うん。午前中もそう言ったよな? 間違いない。
「なんで昼前に来た奴が、また夕方に一五〇個も持ち込んでるんだよ!」
「それはスライム一五〇匹倒したから?」
「いや、そうだけどよ!? そういうことじゃねぇ!」
だって食堂でオムライス食べたあと、軽トラダンジョンで数時間仮眠して疲労も完全回復させている。もちろんオレが入ってすぐに時間の流れを一〇倍にしたから、外の時間は一時間も経っていない。
だから昼からも浅井ダンジョンに入ってがっつりゴブリンを狩ってきたんだ。
ただ、浅井ダンジョンの時間の流れる早さが0.9倍になっていたから買い取ってもらうスライムの魔石の数は少なめにしておいた。
「はぁ。なんかとんでもねぇ新人が入ってきたな。ほらよ。四万五千円を追加しておいた」
「ありがとうございます!」
昨日は試験代、今日は武器のレンタル代にメイスの購入代金と、ちょっと出費が嵩んでいたが余裕でプラスになった。
探索者として順調な滑り出しが出来たようだ。




