2039.面影を慕いて
周囲からの寒波を物ともせずに走り切ったパダンパはぺトラの後ろ、その少し前でピタリと立ち止まった。
『叔母さ……、っと……』
声を投げ掛けた、その漆黒の背中は震えていた……
ぺトラだけではない、互いに慰め合う様に寄り添ったガトやギレスラ、その他のメンバーも同じく震えていたのである。
身を打つ雨の冷たさでも、ましてや寝不足が齎す自律神経の変調でもない、彼等を震わせるのは心の奥底から湧き上がり止める術が無い感情の発露だ、とんまでまぬけなパダンパにも一目瞭然であった。
再びパダンパは自分を恥じた。
特にここまでの猛ダッシュの中、躓いた風に演じた後で、転んで汚れるのを億劫に思い、うおぉっ、ギリギリセーフゥッ! なんて見え見えの言葉を発した自分の稚拙な演技を心から恥じた。
いたたまれない心は、何とか短い言葉を搾り出すのが精一杯だったらしい。
『叔母さん、叔父さん…… 済まない、っす……』
今度は流石に堪えた様で、心の底からの謝罪の言葉だったのだが、声を掛けられた面々は誰独りとして振り向く事はなく、唯々鏡面を見つめてその背を震わせ続けるだけであった。
『あ、あの…… お、俺……』
いつもこんな時、先が見えない場面ではレイブの言葉、根拠があるかどうかは甚だ疑問だが自信満々の笑顔があった。
ギレスラやペトラ、ガトやダソス・ダロスは呆れながらもそれに従い、自分やミロブロ、シュカーラは考える事もせずに彼等に倣って来た。
率いる幹部、それぞれの実力は凡百のそれとは段違い、なにせ神様入りと伝説にも謳われる巨大ボアなのだ、それまで崇拝してきた竜王に勝るとも劣らぬ猛者揃いだと思っていた。
しかし、今、そんな強者達は揃って弱々しく変じている。
向けた背の震えを隠そうともせずに、レイブが消えた鏡面を見つめ続け、彼を失ったこの場所に留まり続けているのである。
レイブとは羅針盤、若しくは扇の要だったのだ…… その事実を今更ながら再認識したパダンパはそれ以上の言葉を発せられずにいた。
降り続ける冷たい雨の中、静寂が続く。
静けさを打ち破ったのは鏡面に向かって右端、ハンペラが発した甲高い笑い声である。
「草っ! ガチウケるんですけどぉっ! 結局裸じゃんね? レイブ先生脱ぎ過ぎじゃねーっ? 超ガハるぅーっ! アタシコかーいっ?」
『え? 裸? 脱ぎ過ぎ? ガハるって、何?』
「ちょ、ハンペラちゃん! 今、良い所でしょ! 静かに見なきゃ駄目じゃない?」
「せやせや、んな場合とちゃうかった、メンゴやで!」
『えっ、あっ、はぁっ? あの、が、ガト様…… 良い所って? えっとぉ……』
「しっ! 黙って見ていなさいよ! ほら、レイブが闘うわよっ!」
『えっ、は、はい?』
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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