第二十三話 訂正、馬鹿野郎
軽くみんなと挨拶をし、手を振って別れる。
ここまでやったら、後はみんなでなんとかできるだろう。明後日が楽しみだな。
みんなと別れ、心を落ち着かせる。
リビアと顔を合わせる前に、気持ちを鎮めないと。
「ふぅ……さて、リビアと合流するか」
『小僧……まだ動くか。体力お化けすぎるぞ、貴様』
「俺が休んだら、その分悲しみに暮れる人が増える。休んでなんていられないって」
『……正義馬鹿もここまで来ると呆れるわい』
さすがにポックルも限界なのか、光の粒子となってペンダントに入っていった。子供たちの相手、余程疲れたんだろうなぁ。
苦笑いを浮かべ、屋根に向かって跳び上がる。
フィンガースナップで数回指を鳴らした。あいつならきっと……。
少し小高い建物の上で待つ。
別の路地裏からローブを纏ったリビアが飛び出してきた。やっぱり聞こえてた。
人気のない鐘塔の天辺で、リビアはフードを脱ぐ。
ほっと一息つき、腰に提げていた水筒を口に付けた。
「悪い、ちょっと時間掛かった」
「平気よ。私の方は、それなりに収穫はあったわ」
さすが。情報収集能力は、騎士団の中でもトップクラスだな。
「エルビス・ティアラを捌いているのは、やっぱり『黒の牙』で間違いなさそう。で、この町に潜伏している牙のメンバーは男の2人組よ」
二人組の男……少しずつ絞られて来てるけど、まだまだ情報が足りないな。
まったく進展してない俺が言うのもなんだけど。
……あ。
「今日会ったぞ、2人組の男」
「なんですって……?」
今朝会った、スーツとシルクハットを被った優男、アレルド。半裸の筋肉ゴリマッチョ、ギドー。
特徴を伝えると、リビアは口元に指を当て、考え込んだ。
「去年までは無かったみかじめ料を、急に徴収するなんて……怪しいわね、その2人も、バックにいる貴族も」
「けど、言ってることは至極全うだぞ。住民も、変な金儲け目当ての屋台が無くなって助かってるって言ってたし」
「そうだけど、今私たちは、後手に回ってるのよ。怪しい所は、しらみつぶしに探さなきゃ」
……リビアの言う通りだな。よし、行こう。
鐘塔から跳び下り、貴族の家がある方へ向かう。
この町の地図と構図は、一応頭に入れてるからな。なんとなくの場所はわかる。
「ライゼル。その貴族の名前は?」
「アリュシオン家だ」
「アリュシオン……」
リビアが険しい顔を浮かべる。
眉間にしわを寄せ、少しだけ身を強張らせた。
「知ってるのか?」
「……騎士団でもマークしている、イかれたド変態らしいわ。でも、まだちゃんとした情報を得ていないし証拠もないから、手出しできないみたい」
へぇ……もし今回のことと関係があるなら、アリュシオン家も潰せて一石二鳥だな。
俄然、やる気が出てきたぞ。
しばらく歩くと、アリュシオン家の邸宅が見えてきた。
さすが貴族サマ。でっけぇ家に住んでるな。
脚を緩め、俺もフードを目深に被り、観光客の振りをして壁や門の前を通る。
さすがに警備が厳重だ。
門の前に二人。周囲の巡回に三人。これじゃあ中に侵入はできないな。
「リビア、どうする?」
「任せて。考えがあるわ」
「おお。さすが、頼りになる」
カバンに手を入れ、ガサゴソと丸い何かを取り出した。
なんか、見たことあるけど……それ、まさか。
「爆弾で奴らの気を逸らして、その間に侵入するわよ」
訂正、馬鹿野郎。
リビアから爆弾を取り上げる。
相変わらず、やることが無茶苦茶だ。
むっとした顔をすると、げしげしとつま先で蹴ってきた。蹴るな。
「じゃあどうするのよ。これ以上にいい手は無いわよ」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった。……一旦、ここは退こう。騎士団の諜報員が完全な証拠を掴めてないんだ。もし俺らが突っ込んで間違いだったら、打ち首じゃ済まないぞ」
「……口惜しいわね」
リビアが、巡回中の警備兵を睨みつけた。
が、相手もその道のプロで、リビアから受けた敵意を敏感に感じ取り、槍を向けてきた。
「おい、そこの者。止まれ」
チッ……!
指文字で散開を合図し、リビアとは別方向に走る。
もちろん、警備兵もただ見ているだけじゃない。
怒号と共に人を呼び、俺たちを追いかけ始めた。
即座に裏路地に入るが、いつの間にか回り込まれ、三人の兵士に囲まれた。
さすが、地の利は向こうが一枚も二枚も上手か。
「止まれ。怪しい奴め……さっきのローブの者も、貴様の仲間だろう」
「誉れ高いアリュシオン家を嗅ぎ回る不届き者め……神妙にしろッ」
誉れ高い、ねぇ……本気でそう思っているのか、それともこいつらも旨い汁を吸っているからそう言ってるのか、俺にはわからないな。
仕方なく手を挙げ、暗に反抗する気はない旨を伝える。
――なんてな。
「へい、パス」
さっきリビアから取り上げた爆弾を、前にいる兵士に投げ渡す。
咄嗟に受け取った兵士が、手にある黒い塊を見た瞬間……顔面が青くなり、悲鳴を上げてこけた。
その隙に、建物の屋根に跳び上がる。
安心しろ、火は点けてないから。
無事に包囲から逃げ、屋根伝いに宿へと戻っていく。
(勇者である俺が、なんで追われないといけないんだ……)
内心肩を落とす。
神様、俺のせいじゃないんです。あの馬鹿のせいなんです。
宿に到着し、飯屋のお姉さんに挨拶をしてから部屋に戻る。
丁度同じタイミングで、開いていた窓からリビアが飛び込んできた。
「あ、ライゼル。速かったわね」
「速かったわね、じゃねーよ。お前のせいで、全部台無しになるところだったんだぞ」
「し、仕方ないじゃない。そんなに怒らないでよ」
自分のせいだって自覚はあるのか、口をすぼめて俯いた。
まったく……まあ、半分は爆弾を投げ渡した俺のせいでもあるけど。
「明日からは、このローブは使えないな。むしろ堂々と歩いていた方が、向こうも気付かないだろ」
「そ、そうね。そうしましょうか」
ローブを脱ぎ、部屋の隅に置く。
けど問題は、『黒の牙』を探せば探すだけ、こっちの素顔も割れる可能性があるってことだ。
これからは、もっと慎重に行動しないとなぁ……やっぱ、調査とか暗躍って面倒くせぇ。
続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!
下部の星マークで評価出来ますので!
☆☆☆☆☆→★★★★★
こうして頂くと泣いて喜びます!




