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復讐に取り憑かれた偽りの勇者は、もふもふ大精霊様に癒される。  作者: 赤金武蔵
第二章 偽りの勇者は助けたい

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第二十三話 訂正、馬鹿野郎

 軽くみんなと挨拶をし、手を振って別れる。

 ここまでやったら、後はみんなでなんとかできるだろう。明後日が楽しみだな。


 みんなと別れ、心を落ち着かせる。

 リビアと顔を合わせる前に、気持ちを鎮めないと。



「ふぅ……さて、リビアと合流するか」

『小僧……まだ動くか。体力お化けすぎるぞ、貴様』

「俺が休んだら、その分悲しみに暮れる人が増える。休んでなんていられないって」

『……正義馬鹿もここまで来ると呆れるわい』



 さすがにポックルも限界なのか、光の粒子となってペンダントに入っていった。子供たちの相手、余程疲れたんだろうなぁ。


 苦笑いを浮かべ、屋根に向かって跳び上がる。

 フィンガースナップで数回指を鳴らした。あいつならきっと……。


 少し小高い建物の上で待つ。

 別の路地裏からローブを纏ったリビアが飛び出してきた。やっぱり聞こえてた。


 人気のない鐘塔の天辺で、リビアはフードを脱ぐ。

 ほっと一息つき、腰に提げていた水筒を口に付けた。



「悪い、ちょっと時間掛かった」

「平気よ。私の方は、それなりに収穫はあったわ」



 さすが。情報収集能力は、騎士団の中でもトップクラスだな。



「エルビス・ティアラを捌いているのは、やっぱり『黒の牙』で間違いなさそう。で、この町に潜伏している牙のメンバーは男の2人組よ」



 二人組の男……少しずつ絞られて来てるけど、まだまだ情報が足りないな。

 まったく進展してない俺が言うのもなんだけど。


 ……あ。



「今日会ったぞ、2人組の男」

「なんですって……?」



 今朝会った、スーツとシルクハットを被った優男、アレルド。半裸の筋肉ゴリマッチョ、ギドー。


 特徴を伝えると、リビアは口元に指を当て、考え込んだ。



「去年までは無かったみかじめ料を、急に徴収するなんて……怪しいわね、その2人も、バックにいる貴族も」

「けど、言ってることは至極全うだぞ。住民も、変な金儲け目当ての屋台が無くなって助かってるって言ってたし」

「そうだけど、今私たちは、後手に回ってるのよ。怪しい所は、しらみつぶしに探さなきゃ」



 ……リビアの言う通りだな。よし、行こう。


 鐘塔から跳び下り、貴族の家がある方へ向かう。

 この町の地図と構図は、一応頭に入れてるからな。なんとなくの場所はわかる。



「ライゼル。その貴族の名前は?」

「アリュシオン家だ」

「アリュシオン……」



 リビアが険しい顔を浮かべる。

 眉間にしわを寄せ、少しだけ身を強張らせた。



「知ってるのか?」

「……騎士団でもマークしている、イかれたド変態らしいわ。でも、まだちゃんとした情報を得ていないし証拠もないから、手出しできないみたい」



 へぇ……もし今回のことと関係があるなら、アリュシオン家も潰せて一石二鳥だな。

 俄然、やる気が出てきたぞ。


 しばらく歩くと、アリュシオン家の邸宅が見えてきた。

 さすが貴族サマ。でっけぇ家に住んでるな。


 脚を緩め、俺もフードを目深に被り、観光客の振りをして壁や門の前を通る。


 さすがに警備が厳重だ。

 門の前に二人。周囲の巡回に三人。これじゃあ中に侵入はできないな。



「リビア、どうする?」

「任せて。考えがあるわ」

「おお。さすが、頼りになる」



 カバンに手を入れ、ガサゴソと丸い何かを取り出した。

 なんか、見たことあるけど……それ、まさか。



「爆弾で奴らの気を逸らして、その間に侵入するわよ」



 訂正、馬鹿野郎。


 リビアから爆弾を取り上げる。

 相変わらず、やることが無茶苦茶だ。


 むっとした顔をすると、げしげしとつま先で蹴ってきた。蹴るな。



「じゃあどうするのよ。これ以上にいい手は無いわよ」

「お前に聞いた俺が馬鹿だった。……一旦、ここは退こう。騎士団の諜報員が完全な証拠を掴めてないんだ。もし俺らが突っ込んで間違いだったら、打ち首じゃ済まないぞ」

「……口惜しいわね」



 リビアが、巡回中の警備兵を睨みつけた。

 が、相手もその道のプロで、リビアから受けた敵意を敏感に感じ取り、槍を向けてきた。



「おい、そこの者。止まれ」



 チッ……!


 指文字で散開を合図し、リビアとは別方向に走る。


 もちろん、警備兵もただ見ているだけじゃない。

 怒号と共に人を呼び、俺たちを追いかけ始めた。


 即座に裏路地に入るが、いつの間にか回り込まれ、三人の兵士に囲まれた。

 さすが、地の利は向こうが一枚も二枚も上手か。



「止まれ。怪しい奴め……さっきのローブの者も、貴様の仲間だろう」

「誉れ高いアリュシオン家を嗅ぎ回る不届き者め……神妙にしろッ」



 誉れ高い、ねぇ……本気でそう思っているのか、それともこいつらも旨い汁を吸っているからそう言ってるのか、俺にはわからないな。


 仕方なく手を挙げ、暗に反抗する気はない旨を伝える。

 ――なんてな。



「へい、パス」



 さっきリビアから取り上げた爆弾を、前にいる兵士に投げ渡す。


 咄嗟に受け取った兵士が、手にある黒い塊を見た瞬間……顔面が青くなり、悲鳴を上げてこけた。


 その隙に、建物の屋根に跳び上がる。

 安心しろ、火は点けてないから。


 無事に包囲から逃げ、屋根伝いに宿へと戻っていく。



(勇者である俺が、なんで追われないといけないんだ……)



 内心肩を落とす。

 神様、俺のせいじゃないんです。あの馬鹿のせいなんです。


 宿に到着し、飯屋のお姉さんに挨拶をしてから部屋に戻る。

 丁度同じタイミングで、開いていた窓からリビアが飛び込んできた。



「あ、ライゼル。速かったわね」

「速かったわね、じゃねーよ。お前のせいで、全部台無しになるところだったんだぞ」

「し、仕方ないじゃない。そんなに怒らないでよ」



 自分のせいだって自覚はあるのか、口をすぼめて俯いた。

 まったく……まあ、半分は爆弾を投げ渡した俺のせいでもあるけど。



「明日からは、このローブは使えないな。むしろ堂々と歩いていた方が、向こうも気付かないだろ」

「そ、そうね。そうしましょうか」



 ローブを脱ぎ、部屋の隅に置く。


 けど問題は、『黒の牙』を探せば探すだけ、こっちの素顔も割れる可能性があるってことだ。

 これからは、もっと慎重に行動しないとなぁ……やっぱ、調査とか暗躍って面倒くせぇ。

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