第二十一話 ショバ代
みんなを守るように前に出て、優男を睨みつける。
が、特に俺の眼光に怯まず、男はただただ微笑んでいた。
「俺はライゼル。あんたら誰だ? ここに何か用か?」
「おや、これはご丁寧にありがとうございます、ライゼルさん」
杖を後ろにしまい、優雅にお辞儀をする優男。
大男はぼーっとしていて、特にリアクションはない。
「初めまして。私はアレルド。彼はギドー。この通りの管理を任されている者です。なに、この通りで店を開くのなら、ショバ代をいただこうと思いましてね」
ショバ代……つまり、金を寄越せってことか。
みんなを守るために腕を広げているシスターを振り返ると、目に涙を浮かべて首を横に振った。
「い、今まで、そんなものを払ったことなんてありません……!」
「と、言ってるが?」
剣の柄頭に手を置き、圧を高める。
だけど、アレルドはどこ吹く風というように肩を竦め、俺の圧を受け流した。
こいつ、できるな。並みの戦士ではない。
「申し訳ありません、今年から変わったのです。建国祭を行うのも、お金が掛かりますから」
杖をつき、にこやかに微笑みながら紙を差し出してきた。
内容は、今アレルドが話した通りの内容だった。ちゃんと貴族の署名もされている。
(アリュシオン家、か)
聞いたことがないけど……もしかして、あの時の豚貴族か?
近くを通りかかった人を呼び止め、この紙のことを聞いた。
「あの、ここに書かれてることって、本当ですか?」
「え? ああ、そうだよ。うちらも大変だけど……でもこのおかげで、変な金儲けの為だけの屋台が減ったから、まあウィンウィンだね」
チッ。この反応、ガチっぽいな。
彼を見ると、微笑みを崩さず、けど困ったような表情をしていた。
「我々も心苦しいのですが、孤児院が相手でもこればかりは特別扱いできません。ご理解のほど、お願いいたします」
深々と頭を下げるアレルド。シスターたちも困っている。
……俺としては、今回に限って言えばアレルド側だ。
ちゃんとした手続きをされていて、これがルールである以上、俺がとやかく言えることじゃない。
むしろ踏み倒すなんて、勇者としてあってはならない。
ルールは正義。別にこいつらも、悪いことをしてる訳じゃない。仕事をしているんだ。
「……いくらだ?」
「銀貨五枚です」
たっか……!?
銀貨五枚って、一般階級の人間の一週間の食費くらいだぞ……!
後ろを振り返ると、シスターたちは涙目で手持ちの金を出し合い、数えていた。
そりゃそうだ、この人たちは金持ちではない。
今回の屋台も、施設運営の資金にするために頑張って準備しているんだ。
そんな大金、持っているはずがない。
俺も、普段から金は持ち歩いていないし……どうする。
手持ちを数えようとカバンに手を突っ込むと、アレルドはふむと口元を手で覆った。
「と、言いたいところですが、事情が事情のようですし……銀貨一枚でいいでしょう」
「……いいのか?」
「本当は駄目ですがね。我々も鬼ではありませんから。残りは私のポケットから出しましょう。せっかくのお祭りなのです。遺恨を残さず、楽しもうではありませんか」
……そう言ってもらえると、助かる。
カバンから銀貨一枚を取り出し、アレルドへ手渡す。
ちゃんと確認し、笑顔で握り締めた。
「はい、確かに。それでは、失礼します。よい一日を」
終始ぼーっとしていたギドーを引きつれ、帰っていくアレルド。
少し歩いてから立ち止まり、もう一度振り返った。
「あぁ、そうそう。一つお聞きしたいことがあったのを忘れていました。……ネイ、という子供は、誰ですか?」
ネイ? なんでネイを?
アレルドの視界を遮るように、さりげなく立ち位置を変えるが、今の動きでバレてしまったのか、にこりと笑った。
「ネイに何の用だ」
「いえいえ。少々気になっただけです。では、またいずれ」
帽子を取ってお辞儀をし、去っていく。
最後、なんでネイを機に掛けたのかわからないが……なんにせよ、これで無事に準備を進められるな。
安堵の息を吐く。
一部始終を見ていたカルミアさんや他のシスターたちが、目を輝かせて頭を下げてきた。
「ライゼル様っ。本当に……本当にありがとうございます……!」
「き、気にしないでください。困った時はお互い様ですから」
このまま何もせず見ていたら、きっと屋台の設営すらさせて貰えなかっただろう。
何度も言うけど、困っている人は見捨てられないんだ、俺。
シスターも、子供たちも、まるで神でも現れたかのような目で俺を見てくる。
や、やめてくれ。そんな上等なものじゃないから。
「そ、それより、早速屋台の準備を始めましょう。力仕事は俺に任せて、飾り付けをお願いします」
「もちろんです。さあ子供たち。沢山飾り付けをして、可愛くしましょうね」
「「「はーい!」」」
続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!
下部の星マークで評価出来ますので!
☆☆☆☆☆→★★★★★
こうして頂くと泣いて喜びます!




