76、ホテル向日葵
冒険者ギルドでは医務室で寝ていたデニスが目を覚ました。
起きてそうそう自分の肩に違和感があった。デニスは動かそうとしたが動かない肩にショックを受け動く手で花瓶をギルド職員に投げつける。
「俺の肩どうしやがった!!!」
肩に手を当てて泣く。
ギルド職員達は冷ややかな目で見て思い思いの声をあげる。
「何が肩よ。命があっただけ喜びなさいよ」とか「迷宮で死ねば良かったのに」とか「ご自慢の上層部に言ったら?」と色んな声がデニスを襲う。
横暴や暴力、権力を使い自分勝手にしてきたのがブーメランとして帰って来てだけだ。
(シロエの言うとおり、迷宮に連れて置いて来ようかな?)
ベレンは、デニスを見て思った。
「花瓶代は、給料から天引きしとくからな。ああ、それからお前は裏方の書類整理だ。誰も来ない所の書類整理。窓際だ。」
「この肩で?」
デニスはベレンを睨む。
ベレンはそんな目をもろとしない感じで言葉を続ける。
「知らん。冒険者の忠告も聞かず迷宮に入り、負傷。助けた冒険者は二度と関わりたく無いそうだ。今まで、上層部に親戚がいるから大目に見てきたけど今回は連絡しといた。そしたら「虎の威を借ると言う奴だから好きに処分してよい。」と回答も貰ってる。お前はこのギルドで一番仕事が出来なくて文句ばかりの使えない職員だ。早くここから出て書類整理をしてくれ。医務室のベッドと数が限られてるからな」
デニスに仲間は1人も居たかった。
◇◇◇◇
ホテル向日葵に停まってるシロエとジェラルドとトシ。
帰って寝るだけに使用しているのであんまり汚れていない。それでも毎日掃除に来てくれる。
昨日はシロエとジェラルドとトシで緑茶パーティーをした。
暖かいお茶を飲んでゴブリン退治の話をする。
一番始めに脱落したのはトシだった。初依頼で疲れたのだろう。
次に脱落したのはジェラルド。
最後まで起きていたのはシロエだった。
次の日、珍しくシロエが早起きをした。
いつもは遅いのに今日は早起きだ。きっと明日は大雨である。嫌。嵐になるかもだ。
「珍しいですね。シロエさんが早起きするのは?」
カーテンを受けて外を見てるシロエに声をかけ、振り向いたシロエはジェラルドを見て笑い聞いた。
「トシは?」
「まだ寝てます。」
寝ている姿もイケメンです。
ジェラルドは窓際に椅子も持って来てシロエの隣に座る。
「どうしたんですか?こんなに早く。」
「たまたま早く目が覚めただけだよ。」
「僕達はまだEクラスの冒険者ですね。」
「そうだな」
「ランク上げますか?」
「Eのままでいいよ。ランク上げると、冒険者ギルドであれやこれや言われる。」
「ランクを上げて言われない様にするのは?」
ジェラルドの言葉にシロエは考えて
「それならCまで上げるか?」
緑茶をズルズル飲んでニカッと笑った。
「んー。朝か?」
トシが寝返りを打って言う。
「煩かった?」
「眩しかったですか?」
そんな事はない。外は曇り空だ。
「嫌。大丈夫だ」
起き上がりベッドを出てズルズルと椅子を持って窓際に座る。
「さて全員起きた事だし、前に決まらなかった議題、チーム名はどうする?リーダーは誰にする?」
真剣な顔をしてシロエが言う。
そう。まだ決まって無いのだ。
ジェラルドはお茶をつぎトシに渡す。
「トシがいたチームはなんて言うのですか?」
『新撰組だ。』
「シンセングミ?」
ジェラルドが言う。
『そうだ。誠の旗を掲げて・・・』
『旗は掲げたくないな~。候補が出なければそれもありかな?・・・では、今は名無しで、リーダーは誰にする?』
「「シロエ(さん)でいい」」
おおっ、なんかリーダーになっちゃたよ。
「トシでもジェラルドでもいいんだよ。」
「僕は契約上無理です。」
ジェラルドが笑って言う。
「ト、トシは?」
「俺はやったことがない」
嘘だ~!!その顔は嘘だ~!
ニヤニヤしないで!
「わかった。一応リーダー私がで・・・」
項垂れるシロエを見て全員で笑った。
「さて、今日は鈴蘭に行ってもち米とアンコとマグカップを買おう!」
シロエが言うなり服を着替える3人。
ふと、トシが思った事をジェラルドに聞いた。
「普通、野郎の中に女が1人いたら恥ずかしがって別の部屋で着替えるだろ?」
「そんな事はないですよ。きっと恥ずかしいですよ。」
「それには堂々と着替えてるが・・・良いのか注意しないで」
「今さらです」
堂々とパンイチになるシロエにトシとジェラルドが恥ずかしくなってあさっての方向に目をやった。
(女なんだから恥じらいを持てよ)
トシの気持ちも知らないままシロエはパパッと着替えジェラルド、トシと続いた。
「さて、ホテル向日葵を出るよ。忘れ物はない?」
腰に差してある2振りの刀を触るトシ、剣を掴むジェラルド、剣を撫でるシロエ。思い思いの行動ににやけて部屋を出た。




