111、言いたい事は分かる
斎藤一が来てから一週間がたった。
まだ始姐の殺人級の料理屋を食べて無い一は、窓際で紅茶を飲んでのほほんとしている始姐を見て「イラッ」としている様に見える。
僕達が言ってもイライラが募るだけ、「一度何で始姐が動かない理由を体験させてみる?」と歳三とジェラルドはアイコンタクトを取るが歳三は、小さく首を横に振るだけ。
ですよね。そうですよね。
自らの意思で始姐の料理を食べるのは、寝込んだ時に作る、お粥以外食べたく有りません。
今日は、東屋で料理を作るだ。
ストーブに薪をセットして深鍋を置く。始姐が小さな火を木の皮に付けて薪の間に入れる。
一口大の大きさに切った冷凍の肉と氷をナイフで砕いて蓋をする。
小さなまな板で玉ねぎ、パプリカ、人参、なす、じゃがいもを切って鍋から湯気が出てきたら蓋を取って、さっき切った玉ねぎ、パプリカ、人参、なす、じゃがいもを鍋に入れてかき混ぜ、塩と胡椒を入れて煮る。
テーブルの上にお皿を置いて、各自各々のマグカップを用意する。ちなみに斎藤のマグカップは可愛いウサギの絵が書いてある。
(この湯飲みが俺のか?。長は月の絵、ジェラルドは太陽の絵、副長は星の絵で、俺はウサギ・・・何で?)
鍋の中身が煮えたら肉、野菜をお皿に取り出して、マグカップに鍋のスープを入れて、テーブルの上に置いた。
「じゃ、食べましょうか?」
ジェラルドの掛け声で皆が手を合わせて、
「「「「頂きます。」」」」
フォークで柔らかくなった肉を刺して食べる。
「!!」
(美味しい!肉も野菜も美味しい)
「旨いか?」
「はい。じゃが芋はホロホロで玉ねぎ、人参、パプリカも美味しいです。」
「だろう。スープも旨いぞ」
マグカップに入ったスープに口を付ける。
ズズッ・・・
「!!」
肉、野菜の出汁が出て旨い。
「旨いだろ?。この料理を始めに作ったのが、シロエだ。」
斎藤がちらりと始姐を見る。
甲斐甲斐しく世話をされるシロエに嬉しそうな顔のジェラルド。
(何だ、この構図?)
顔に出ていたのか、副長が、「気にするな」と囁いた。
いやいや。気にしますよ。何ですか、あれ?。
「シロエは甲斐甲斐しく世話をされているが、この中で一番強いぞ。」
「そ、そうですか・・・?」
シロエをちらりと見る斎藤。
食べさせてもらってるシロエ。
あれの何処が凄いんだろう?
この中で一番強い?何処が?
世話されっぱなしじゃん?
あの年頃なら、自分の事は自分でするもんじゃない?
「言いたい事は、分かる。が、注意するとジェラルドが絶望的な顔をするんだ。シロエも困ってな、やりたい様にやらせてるんだ。」
「そうなんですか・・・」
(いや。それじゃダメじゃん!)
「それにな、斎藤、お前は直ぐに死にたく無いだろ?」
「そうですが?」
首を傾げる斎藤。
「その内分かる。」
それだけ言うと歳三は、料理をまた食べはじめる。




