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第四二話「瞬間、俺は閃いてしまった。 人を集めたいのであれば――新しくダイエットするだけの部活を開けばいいんじゃね? と」

『ふむ……なるほど。あのモモとアズールには居場所がわからないように、どこに向かったか誤魔化してほしいと』


『その上で更に、魔術の勉強に真剣に取り組みたいから、クネシヤ魔術院の推薦書を書いてほしいと』


『……まあ、よいでしょう。ミロク先生には何度かお世話になっておりますからね。そんなにお困りでしたら、ここは一肌脱ごうじゃありませんか』


『ですが、よいですな? 既にミロク先生は、レヴィアタン討伐の噂がちらほら出ている身分。それをあなた、面倒なことは全部ごめんだと、討伐報告などの後処理を私とモモにまるっと押し付けたのですよ。そこの所、お忘れなく』


『ええ、ちょっとだけお願いがあるのですよ。なあに、難しいことではないはずです』


『実はそのクネシヤ魔術院ですが、毎年【マギア・マエストロ】なる優秀な学生を年に一人選んでおるのです』


『ミロク先生。あなたにはその【マギア・マエストロ】候補の学生を見繕っていただいて、学校卒業後に『初司馬伝記纂行』に入るようスカウトしてほしいのです』


『別に【マギア・マエストロ】の子でなくても結構。しかし、【マギア・マエストロ】と比較しても遜色ないほどの、極めて優秀な魔術師であることが条件です』


『よいですな? 成功した暁には、メルロー種100%のワイン、マッセート99年ならびに、パレオロッソ99年、テヌータ・ディ・トリノーロ04年を全て1ダースずつ謹呈いたしましょうとも』


『分かりますね? いずれもトスカーナ地方で作られたワイン。しかも伝統や格式にこだわらずに味のみを追求した、スーパータスカンの名作です』


『では、良い報告をお待ちしておりますぞ』






◇◇






「頼む、分かってくれクロエ……これは必要なことなんだ。マギア・マエストロ候補の子をスカウトするって約束を司馬先生と交わしちゃってるんだ……」


「まーた面倒なことを引き受けてますのね……もう、ミロクったら」


アグラアト先生の病室を退出した俺たちは、さっそくクロエに内々の話を打ち明けた。

ちなみに、すっぽりとフードをかぶったアスモデウス君は俺におんぶされている。


「許してくれ、シュナゴゲアで学生ライフをゆっくり過ごすのも無条件ってわけにはいかなかったんだ」


「でもどうやって『初司馬伝記纂行』にスカウトするんですの? 私は当然どこかに所属なんて無理ですし、私の部活友達もそんな凄腕の魔術師ってわけではないですし……」


「……地道に候補者を見つけて声をかけていくしかないんだよなぁ」


「信用のないミロクが?」


中々ひどいことを言う。

だが事実なので特に反論はない。


「そこでクロエだ、お前ならまだ信用はワンチャンある。スカウトで人を捕まえるなら、お前のほうがまだいける」


「私も大して変わらないですわよ……その、見た目がちょっと、人から避けられるというか」


「おデブだから?」


「ひどい!?」


顔云々の話になりそうだったのでふざけて話をそらしておいた。その意味で言うなら、引き攣れも凹凸も、生々しいものは概ね取れていると俺は思っている。段違いの快復だ。なのでクロエには明るく前を向いてほしい。


「最悪、アスモデウス君でも紹介するかなぁ」


「それめっちゃ最悪ですわよ!? 絶対に関係各位が大混乱しますわ!?」


「冗談冗談……まあ、魂を吸って無害化したあとに司馬孔策先生にお任せする、という可能性は一応考えているけどな」


などと茶化してみるものの、スカウトをどうやって行うのかという難題は相変わらず残ったままになってしまった。

有望そうな魔術師に『初司馬伝記纂行』に入るよう声をかける。

なおかつ、クロエのダイエットも成功させる。

なおかつ、アスモデウス君のことをなんとかする。

俺たちはスローライフを過ごしたいだけなのに、やらなきゃいけないことがあるのは悩ましい。どうしてこうなったんだろう。






「あ、ダイエット部だ」


瞬間、俺は閃いてしまった。

人を集めたいのであれば――新しくダイエットするだけの部活を開けばいいんじゃね? と。

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[一言] クロエに魔王の魂片っ端から吸わせてたらクロエが魔王になってしまうとはミロクは思って無いのだろうか?
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