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第三六話「……その、とても恥ずかしいんですけど、胸とか、お腹とか、太ももとか……」

 後日談。

 あの夜の騒ぎはさすがに隠し切れなかったようで、しばらくすると周囲に人が集まってきた。

 アシュタロト、ことアグラアト先生の無力化と治療はあらかた済んでいたが、状況のすべての隠蔽は不可能であった。だから駆けつけてきた学生に軽く伝言をして、もうアグラアト先生のことは任せて、一旦その場を立ち去ったのだった。


(状況を説明するために、勝手に【瑠璃色の天使】時代のパーティ証明タグを使っちゃったけど、まあ、後は何とかなるだろ)


 これは災厄種指定の極秘任務なので、今見たことの詳細を口外すると処罰の対象になる――とか適当な嘘をついてその場は誤魔化したが、遅かれ早かれ俺の存在はばれるだろう。

 その場限りのはったりとしては説得力はあったかもしれないが、所詮はその場しのぎである。

 実は【英雄指定】のS級冒険者タグを持っている、後で確かめたらいいが災厄種ボードのアシュタロトの名前が消えているはず、混乱を避けるために正式発表は冒険者ギルドと打ち合わせてからになる――とか、今から思い出せばこれでよく学生を丸め込めたもんだなと笑えてくる。


(まあ、アグラアト先生=アシュタロトと結びつけるような証拠は今のところないはずだし、それは安心材料かな)






 ミロク

 Lv:5.38→36.51

 Sp:0.19→62.55

≪-≫称号

 ├×(藍色の英雄)

 ├森の王の狩人

 └大罪の討伐者【嫉妬】【憂鬱】 new

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力++++

 ├筋力_max

 ├感覚強化(視力++++ / 聴力++++ / 嗅覚++ / 味覚+ / 触覚+)

 ├熱源感知++

 ├造血++ 

 ├骨強度++++++ 

 ├×(肺活量)

 ├皮膚強化++++++ 

 └精力増強++

≪-≫武術

 ├×(短剣術)

 ├棍棒術++++++

 ├盾術++

 ├格闘術+++++ 

 ├投擲++++++ 

 ├威圧+++ 

 ├隠密+++++

 └×(呼吸法)

≪-≫生産

 ├道具作成++ 

 ├罠作成++

 ├鑑定+++ 

 ├演奏 

 ├清掃 

 ├裁縫+++++ 

 ├測量++ 

 ├料理 

 ├研磨 

 ├冶金++++

 ├調薬++++

 └運搬 

≪-≫特殊

 ├暗記++ 

 ├暗算++ 

 ├直感+++++ 

 ├並列思考+++++++ 

 ├×(魔術言語) new

 ├×(詠唱) new

 ├錬金術++++

 ├治癒魔術++++++++ 

 ├付与魔術_max 

 └血液魔術++ 



 クロエ

 Lv:75.56(478)→79.18(436)→139.18(1042)

 Sp:2.91→63.51

 状態変化:肥満 腐敗 免疫欠乏 皮膚疾患 呼吸障害 視力× 味覚× 嗅覚×

≪-≫称号

 └大罪の討伐者【嫉妬】【憂鬱】 new

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力+++ 

 ├筋力+++++++ 

 ├感覚強化(視力+++++ / 嗅覚+++ / 味覚+++)

 ├肺活量+++ 

 ├不死性+++++ 

 └異常耐性(毒+ / 呪術+++)

≪-≫武術

 ├短剣術++ new

 ├棍棒術+++++ 

 ├投擲++++ 

 ├隠密++++++++ 

 └呼吸法++

≪-≫生産

 ├罠作成+

 ├裁縫+

 └測量

≪-≫特殊

 ├錬金術

 ├魔術言語+++++ new

 ├詠唱+++++ new

 ├宝石魔術+++

 └吸魂+++++++






 今回の大活躍といえば、並列思考と血液魔術である。なりふり構わずに格闘に集中しても裏できちんと治癒魔術や付与魔術を使えて、いざとなれば血液で魔法陣を作ったりできるのだから、思った以上に応用性がある。

 確かに普通の人はちょっと使いづらい外れスキルかもしれない(同じスキルポイントでもっとわかりやすいスキルを取得したほうがまだマシ)が、今後はきちんと伸ばそうと俺は思った。


 クロエも投擲、短剣術、そして宝石魔術をうまく組み合わせた「アゾット剣」をここ一番でいい使い方をしてくれた。

 難題だと思われた、聖歌を詠唱するのも何とかクリアしてくれた。詠唱と魔術言語スキルがあるとはいえ、クロエが真剣に魔術の勉強をしてくれなかったら聖体拝領はできなかったはずなのだから、大したものである。


(まずまず、かな)


 俺はいくつかスキルを付与して失った。だがスキルポイントさえ獲得すれば取り戻せる範疇である。

 クロエは吸魂スキルで大量に魂の器(レベル)を獲得した。スキルポイントも大量に手に入れたから、きっと彼女はもっと強くなるだろう。

 振り返ってみれば、大きな収穫である。


 というか魂の器の位階130って。昔ちらっと見たウルガー(元世界一位)でさえ大体60ぐらいだったはず。

 ということはざっと考えても、彼女はウルガーの倍以上の肉体強化の加護を得ているわけである。

 いよいよクロエの強さが化け物じみてきた。

 もしかしたら俺とクロエのパーティは、たった二人だけど、今や世界屈指のパーティになっているんじゃないだろうか。


 とまあ、今回のアシュタロト戦を振り返りつつ、俺は半ばやけくそのようになって笑っていた。

 理由? もっとゆっくり学院生活したかったのに、これから忙しくなりそうだからだよ。


「……ミロク、私、その……」


「さあて、しばらくはクネシヤ学院でゆっくり勉強するぞ! これでもう夜出歩いても問題なくなった! ということは、昼は学生生活、夜は迷宮生活をずっと続けてもOKってことだ! 最高だな!」


「……ええと、ミロク、私の服が……」


「どうせ王都からここまで来るにしても、船で四週間ぐらいはかかるからな! 早馬を飛ばしても三週間! 邪魔なんて入るはずがねえや! つまり俺たちは二十日以上のバカンスを過ごせるのさ! 最高だろ!?」


「……その、とても恥ずかしいんですけど、胸とか、お腹とか、太ももとか……」


「なあ、シュナゴゲアの街ってまだ探索したことないよな? しゃれこうべの丘とかどう? オリーブ畑だから肌に優しい香油とか売ってるぞ? 他にも三十種類以上のピッツァを食べられる世界のピッツァ食堂とか絶対楽しいよな? いっそ時計台に上ってみるか? もう遊びまくるぞ! ――で、二十日経ったら逃げる!」


「……ミロク、その、私、ちょっと体がですね……」


 もじもじと恥ずかしそうにするクロエ。何が恥ずかしいのか。


「どうした? 体? ああ、そろそろ針治療やるか? それとも化膿してきたか? 痛みやかゆみは大丈夫か?」


「いえ、その、そうではなくですね……?」


 でん、と。

 以前よりも増して強烈な存在感を放つようになった彼女に向けて、俺はすっとぼけたような回答をのらりくらりと返す。

 いやあ、分かってはいるのだが。

 あんまりレディにこういうことを言うのに慣れてない。


「……太ったね」


「……はい」


 しょんぼりとした声。

 いつぞやの、ほっそりと華奢で今にも折れそうだったクロエの手足は、あらんばかりに逞しくなってころころ丸くなっていたのだった。



 ここまで読んでいただきありがとうございました。

 魔術学院編は、正直なところかなり駆け足で進んだので、消化不良な部分がいくつかあります。なので次の章でそのあたりを吸収できればいいなと思ってます。

 次は第四章、燃えよクロエ・ヨガファイター編に移ります。タイトル通りです。気楽に見てやってください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 吸魂で魔物倒すの最強じゃん!と思ったら、太るという弊害があったか。 しばらく人間用食物は絶食だなこれ。
[一言] …そうだよね。 …魂の器を「食べて」生きる種族だもんね。 ここんとこモリモリごはん食べまくってたもんね。 …そうなるよね(カァイイ
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