楽しそうな光景を眺めるだけ
――飲めや歌えやの大騒ぎ――
子供達が日本のアニソンから異世界の歌を楽しく合唱する。大人たちはお酒を片手に、隣の人と語り合いながら子供達の歌を楽しそうに聞いている。
人間・エルフ・獣人と種族の壁など関係なく、共に宴を楽しんでいる姿はこの地ではもう当たり前の光景。だがしかし……。
「よもやこの様な奇跡を目の当たりにするとは……」
ポカーンと口を大きく開けながら何度も自らの頬を叩く者。理解が出来ず、夢なのでは? と思っているのだろう。中には隣の者の太ももや腕を抓る者も居て……。
「自分で試せ! なぜ俺の腕や太ももを抓るんだ!!」
「わ、私でやったら私が痛いではないか!」
夫婦もしくは恋人同士なのかな? 言い合いをしながらも、その距離はほぼ0といえる状況でピッタリと寄り添っていたりする。
そう。呆気に取られていたり、言い合いをしながら現実と必死に向かい合おうとしているのは、少し前にリューが目覚めさせた魔族の方々だ。
ただ、全員を目覚めさせたわけ無い。前にも言ったように少しずつ目覚めさせ、ゆっくりとこの地に慣れてもらい、慣れた人が次の人達の手を取りながらこの地の住民になってもらう。そのための第一弾が今回の人達だ。
しかし……彼らの様子を見るに、異世界での種族間の壁というのは相当高いものだったんだろうな。おじいちゃん達の日記とかからある程度は分かっていたけど……実際に目の当たりにするとね。
特に魔族の方々は宗教国家から明確な敵として扱われていたみたいだし。
あ、そうそう。因みに魔族の方々の対処は全て鈴木さん達に任せている。
一応、リューを保護した者として挨拶はしたけどね。ただ、彼らの名前とかは……うん、例によって例の如くとでも言えば良いのかな? リューと同じで全くもって聞き取れなかったネームだった。なので、リューと同じ様に聞き取れたワードの部分で略した名前を呼ぶようにしている。もちろん、相手にも了承を得てだ。
そしてそんなリューだけども、今は魔族の方々と共に宴を楽しみながら仲良くなった子達を知り合いの魔族に紹介しているみたい。
それで、紹介をしている中にはフォゥやフェルも居る。特にフェルの事は〝戦闘訓練を共に行っている〟なんて紹介をしているみたい。それを聞いた魔族の方々の中で数名、何やらキラリと目を光らせた者が居た。もしかして戦闘狂タイプなのだろうか。
いや、あれはどちらかというと指導者の目か? 面白い玩具を見つけた的な気配を感じる。
「それにしても、私達とは最初に挨拶をしただけだね」
「島の管理権限を持っていると知ったからなのかしらね。下手に近づいてはいけないみたいな感じで思っているみたいよ」
俺達と関わるのは自分達の代表であるリューが適任だとでも思っているのだろう。そしてまた、下手な事をして島を追われる身になるのは……とでも考えているのかもね。
別にちょっとやそっとの事では島から出ていけ等と言うつもりは無いけど。それでも、やはり〝力〟が有るという事で色々と〝配慮〟してしまうのだろう。何せ俺達の為人はリューから聞いた内容しか現状は無いしね。
「彼らもまだ起きたばかりだしね。それにまだまだ彼らの仲間は眠ったままだ」
この地に住む者達の関係・為人から自分達がどういった事をしていけば良いのか。それらをこれから彼らは手探りで行っていく。そうである以上は色々と気にしてしまうのも仕方がない話だ。
なので俺達は彼らのストレスにならない程度にと距離を見極めながら、自ら馴染めるようにと後押しをする。行き詰まったタイミングで手を差し伸べる。ソレぐらいで丁度良い。
さてさて、彼らがこの地でしっかりと根を張れるかどうか。俺達は上手く馴染んで貰えるように願うぐらいかな。ま、どこぞの田舎ではないが、受け入れておいて自分達の考えとは違うからと排除するような真似だけはしないようにしなくては。
その手の調整は鈴木さんや山田さんが上手くやってくれると思う。特に山田さん……元バスガイドさんはその手の調整が巧みみたいだしね。エルフや獣人と地球人が上手く生活出来ているのも彼女の功績が大きいし。
なので、その能力が魔族の方々にも発揮して貰えたらと思う。
今も種族関係なく女性陣を集めて、楽しげに会話をしている中心人物になっているみたいだし。うん、これは案外早く魔族の方々を起こせる事になるかもしれないね。
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