ダンジョンですって……~桔梗視点~
皆と一緒にプールで遊んでいた。それはそれはとても楽しい時間を過ごせていたと思う。ただ、お昼を過ぎた後ぐらいからかしら? なんだか景くんがアルと一緒にとっても難しそうな表情になった。
ソレにいち早く気がついた私は、景くんのそんな表情をフォゥちゃんに見せないようにと直ぐに彼の姿が見えなくなるプールの方へと皆を誘導したわ。
「いきなりどうしたん? いつもの桔梗ならそんな風に〝皆で乗れるスライダーに行きましょう!〟なんて声を荒げたりしないはずじゃん」
「……ん。ちょっと変」
不自然なのは理解しているわ。ただ、そうしないとフォゥちゃんが心の底から楽しめなくなってしまう可能性があったもの。
もちろん景くんが何故あのような表情になったのか、その内容が気にならないわけじゃない。でも、その内容は後で聞けば良い。そう考えたから行動したのだけど……やっぱり強引すぎたわね。
「内容は後で話すわ。今はフォゥちゃんと思いっきり遊ぶ方が大切よ」
「そっか。それなら後で時間を作るとして……フォゥちゃん! 桔梗ママが一緒の浮き輪を使いましょうだって!!」
「わーい! 一緒に浮かぶの!!」
何はともあれ、フォゥちゃんの笑顔を守り抜くことが出来たようね。後は、私が如何に皆から悟られ無いように楽しむかよね。……よーし、少し気合を入れて遊ぶとしましょうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
プールで遊んだ後、フォゥちゃんは遊び疲れたのか景くんの背中でぐっすりと睡眠中。たまに「……みゅぅ……いるかさんがぷかぷか……にゃの……」なんて、夢の中ではまだプールの中で遊んでいるみたい。
そんなフォゥちゃんの様子に、景くんも「やっぱり巨大プール施設を作ったのは正解だったな」と満足そう。
ただ、そのような満ち足りた時間も拠点に戻りフォゥちゃんを寝かせるまで。そこからは気分を切り替え真剣な表情での会話に。
「どうやら世界の自然が濃い場所にダンジョンが出て来たらしい」
「え、ダンジョンって……システムが管理しているからポコポコと誕生するものじゃないって話だったじゃんか! それなのに、なんでダンジョンが島以外に出来たんだ?」
景くんの言葉に七海が過剰に反応した。ただ、言っている内容は私達も思っている。確かにシステムさんからは〝魔力の調整をして、野良のダンジョンが誕生しないようにしている〟と聞いたのよね。
でも現実にはダンジョンが出来て……出来て? いやまって、景くんは〝出て来た〟と言った。という事は……。
「野良のダンジョンが発生した訳では無い? 出て来たという事は、もしかして異世界からの転移?」
「お、桔梗さん正解。どうやらダンジョンは異世界に存在したモノが転移して来たモノで、システムさん達的にはイレギュラーらしい」
景くんがゆっくりと話を続けていく。そして、どうやらダンジョンが現れた原因は〝世界間トンネルの事件〟が理由なのだそう。本当に異世界の神……いえ、もう邪神で良いかしら? 邪神は碌でもない結果を残してくれたものだわ。
それに、各国のと言っていた事を考えると、私達がそのダンジョンに対してアクションを起こす事は出来ないと考えた方が良いという事よね。
ただ、こんな時の為に離島を創り、各国の軍人さん達のレベルを上げて貰ったのよね。であれば、後はそちらに期待という事でいいのかしら。
「……ボク達のやる事は無い?」
「そうだよね。出て来たダンジョンが在る場所に行く事なんて出来ないし、強行突破しようものなら大問題になっちゃう」
出来る事など無い。……本当に? いや、もしそうならプールの時に見せた彼の表情は説明が付かない。だとすると、何か違う問題を抱えているはず。
ダンジョンが出て来た。それも自然が多い場所に。……自然が濃い場所? まって、そういえば、これまで〝異世界から来たモノ〟はどんな場所だったかしら。そう……ダンジョンも〝異世界から来たモノ〟そう考えれば!
「懸念は海かしら?」
「……ん。海産物の危機?」
雪。それはちょっと違うと思うわよ。もし海産物の危機というのであれば、既にシー・サーペントやクラーケンが居る時点で危機的状況と言えるわ。
「そうか! 海の底とかにダンジョンが出て来ていたらアタックなんて出来ないじゃん!!」
そう。七海が叫んだ通り。だからこそ、景くんはあの時に険しい表情をしていた。……はぁ、険しくなるのも理解が出来る内容よね。だって、そんな場所にダンジョンが出て来たら対処をするのは私達という事になるもの。
「既に錬金人魚達には世界中の海の底を見て回って貰っているよ。ただ、広すぎて時間は掛かるけどね。後、俺たち以外にもアタックが可能になるように、ブラスミさんには潜水艇建造の協力要請をさっきしておいた」
「なるほど。複数ダンジョンがあった場合はヒーローくん達にもアタックして貰わないといけないものね」
ダンジョンを放置したら危険。この事は景くんの祖父母が残した日記に書かれていた内容。もし海底にダンジョンが出て来ていたら、本来であれば恐らく……ダンジョンからモンスターが溢れるまで海底に出て来たダンジョンに気がつくなんて事は無い。
そしてその場合、もし水陸両用や空水両用と言えるモンスターがそのダンジョンから出て来てしまうと取り返しのつかない事になりかねない。
「もし上位竜種なんてモンスターが居て、ソイツらが何処かで知らない間に巣を作ったり死骸を残したりしたら面倒な事になる……っぽいんだよね」
「それも日記に書かれていたんだっけ? たしか、魔境の誕生につながる可能性がある。で良かった?」
エリカも良く日記に目を通しているみたいね。
確かに日記には、上位龍種というのはそれはもう濃い魔力の持ち主だそう。そして、そんな存在が居る場所はソレだけで魔力の濃度が一気に上昇してしまうのだとか。
そして、濃くなった魔力は自然を作り替えて行ってしまう。それこそ、土の中では巨大なワームが育ち、その様なワームが土壌を変え、変わった土壌により樹木が影響を受けモンスター化しトレントになったり。そして、そのような植物に影響を受けた虫達が強力な虫型モンスターへと変化し、その昆虫を食べた動物は……とまぁ、とんでもない食物連鎖を引き起こすのだとか。
「その様なサイクルで誕生するのが魔境……と」
「だからこそ、ダンジョンの間引きは必要って事になるんだよね」
異世界では魔境と化した場所が複数あると日記には書いてあったわね。
恐らく、人が到達出来ない場所にダンジョンが出来た結果、間引きが出来ずにダンジョン内の魔力やモンスターが強化され、終いには溢れ出てしまった。そして、運が悪い事に、その溢れ出たモンスターの中に上位龍種並の存在が居た。
何やら、景くんの祖父母はその様な魔境にもアタックしていたそうなのだけど……それはさておき。
「この事を鈴木さん経由で畠山さんには?」
「伝えたよ。多分だけど、今頃慌てて各所に連絡をしているんじゃないかなぁ……畠山さん」
もの凄いストレスに襲われていそうな話ね。国も彼に対してもう少し優しくしてあげたら良いと思うわ。もしくは、人員を増やすとか。
「しかし、そう考えると水中訓練を行っておいた方が良いか? 海の中の戦闘って結構キツイじゃん」
「専用のプールでも作る? 水の粘度を思いっきり高くして動きづらくしたりとかってのもありかも」
水中での戦闘ね。確かにもう少し慣れておく必要がありそうね。特に強化外骨格の水中仕様には。後、水中でも使える土魔法って良いモノは有ったかしら。
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