世界間トンネル事件の余波は、こちらの休みなんて気にしない。
プールで過ごす休日の一時。実に楽しそうなフォゥ達の姿に心の奥から何か温かなモノを感じ、心地良い時間に身を委ねていたんだけど……どうやら世界と言うのは時というモノを選んでくれないらしい。
「マスター。鈴木氏からの連絡があります。何でも〝各地で大きな揺れが発生。揺れ自体は収まりはしたが、どうやらその中心地に《ダンジョン》と思わしきものが発見された〟だそうです」
「まじかぁ……まぁ、ただこういう時の為に各国の軍を離島に招き入れたんだけど。そっちの動きはどうなっている? 後、ダンジョンが出来た場所は?」
「第一報がコレですので」
なるほど。畠山さんが鈴木さんへ緊急連絡として短文を送って来たのかな。
「それにしても……野良ダンジョンは誕生しないように気をつけているんじゃなかったっけ?」
「その事についてですが、システム様からの連絡を今受け取りました。……えっと〝出来たダンジョンは異世界から転移して来たダンジョンだよー。だから、こっちで魔力を調整してってのが出来ないパターンなのよね……頑張ってダンジョンの管理をしてね☆ミ〟とのこと」
あぁ……そっかぁ。ダンジョンが出来る方法にも抜け道があったって事か。
確かに、異世界人やモンスターに異世界の漂流物と同じで、ダンジョン自体が異世界から転移して来てしまったら管理も調整も意味が無い。
本来で有れば、この様な事にならないようにと世界間のトンネルと対峙していたんだろうけど……あの神核持ちのモンスターが馬鹿をやったせいで全てが狂ってしまった。そして、その結果の1つが〝ダンジョンの丸ごと転移〟という形で現れたということなのだろう。
「折角いい気分だったのに……あぁでも、畠山さんが動いているって事は、既に国として対策を立てているって事で良いのかな?」
「どうでしょうか? 緊急事態ですので、彼が独断で動いている可能性もあるかと」
そうだとしても、きっと畠山さんには自衛隊の特殊部隊の人達や米国が協力をしてくれていると思う。流石にどれだけ亀な政府だとしても、緊急事態に自国の最終兵器とも言える者達からの陳情と、同盟国からの言葉に対して亀で居られるはずが無い。……無いよね? 無いと良いなぁ。
「一世紀前ぐらいの話になりますが、与党が民の為に強行した自衛隊の派遣作戦がありました。ですが、民がメディアと共に政府を弾圧したなんて話が……」
ま、まぁ、今回のはその時の話とは違って、全世界かつ日本国内でも目に見えてわかる形で影響が出ているからね? 多分だけど、その時の話って〝国内では影響が見えないモノ〟だったんじゃないかな。見えないとなると、人って途端に無関心になると言うか〝対岸の火事〟みたいな対応になるから。
「ダンジョンが発生した場所だけど、自然が濃い場所で発生している可能性が高いよね。日本も自然が濃い場所って結構多いからなぁ」
「問題があるとすれば、海底などに転移してきている場合でしょうか」
それは確かに大問題だ。だって、今の地球に居る人達では海底ダンジョンにアタックなんで出来る者は居ない。アタックが出来ないという事は、それだけダンジョンが放置されてしまう。そして、放置されてしまったダンジョンはというと……。
「おじいちゃん達の日記にある情報を見るに、ダンジョンからモンスターが溢れ出す可能性がある。だから、適度にダンジョンのモンスターは間引きする必要がある……ってなっているんだけど」
「海底にダンジョンが出来たら間引きなんて出来ませんね。……島外の者達では」
後は空の上とか? 俺たちが対処する必要が出てくるとすれば、この2つにダンジョンが出来た時だろうか。
「あぁ、鈴木さんには畠山さんへ〝ダンジョンの間引き〟についての話を伝えてもらわないとだ」
「ダンジョンが出来た場所次第では、ダンジョンの利権争いなんてモノが起きかねませんからね……それで間引きが遅れるのは大問題です」
国と国でとか、国内でも県と県でどちらがダンジョンを所有しているのか! みたいな話が出てくるだろうからね。仲良く管理しろ! って言いたいけど、それで納得するようなら、人や国は争わない。
「それにしてもダンジョンかぁ……きっと、島で生活をしていない一般人のままだったら、俺もダンジョンアタックをするんだ! みたいな感じで意気込んでいただろうなぁ」
「……マスターがですか? 想像が出来ないのですが」
いやいや、昔の俺だからこそ今以上にそういう気持ちになっていたと思うよ。なにせ、さっさと家と決別しようと思うだろうし、行くとこまで行っていたらダンジョン内で戦って死ぬのもありかな? なんて考えてしまっていた可能性は否定は出来ないから。
「案外、ダンジョン暮らし! とかって、ダンジョンっから出ること無くエンジョイをしていたかもしれないけど。生き延びることが出来たらだけど」
「……個人的にはそちらの方が想像出来ます」
今も有る意味でダンジョン暮らしみたいなモノだしね。
それにしても、いったい転移して来たダンジョンってのはどんな場所なんだろうね。自然が多いのか、それとも洞窟っぽい場所なのか……はたまた、モンスターの腹の中なのか。
それと、もう1つ気になっている事があるんだけど、ダンジョンの転移に巻き込まれた人って居るのだろうか? もし居たら、相手次第ではちょっと面倒な事になりそうな気もする。だって、ダンジョンに潜っているって事はソレだけ力がある人って事になるだろうし。
あ~あ、折角いい気分で過ごしていたというのに。世界が空気を読んでくれないせいで台無しになったじゃないか。ただでも、今知れたって事はソレだけ時間に余裕が出来たって事でもあるんだよね。
とりあえず……ここは錬金人魚達に海底の調査をしてもらうとしますか。そして、海底ダンジョンなんてモノが出来ていないことを祈るとしよう。面倒なだけだしね。
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