ヒーロー君と軽口を叩き合ってみた
どうしてこうなった……そう思いながらも、俺は目の前に居るフル装備状態のヒーロー君と軽口を叩きあっている。
「本来なら勝負にもならない。下駄を履かせてもらっている身で挑んでくるとか、周りに乗せられたとは言えよくやるよ」
「うるせぇ! このハーレム野郎!! 俺だって皆のヒーローだからな。良い所は見せたいんだよ!」
ヒーロー君の言葉に、うんうんと大きく頷いているクラスメイトと獣人達。……獣人達が頷いている理由は分かる。分かるが、クラスメイトだったお前ら……お前らが頷いている理由は、全てこのヒーロー君にも言える言葉だからな?それに……。
「そもそも俺は手を出してねぇよ! その点、ヒーロー君は3児のパパでちゅよね? それも! 腹違いの。あ、そういえば既に次の子が準備万全でしたっけ?」
「はぁ? 手を出してないとか信じられっか! クラスの女神4人全員かっさらった奴が!! あと、子供は可愛くて良いものだぞ!!」
ブーイングをしたり、頷いたりと、とても忙しいクラスメイトだった人達。まぁ、俺達の言葉に対してどちらにも頷けるし、どちらにも文句があるといった感じだ。……うん、こいつらの事は放っておくとしよう。
とまぁ、最近ではよく一緒に開発行動をしたりもしているから、こういった軽口を叩きあえる仲ではあるんだけどね。……ただ、他人が見たらちょっと険悪にみえたりしちゃうかも? うん、この事は後でしっかりと周知しておくとしよう。俺と彼は別に仲が悪いわけじゃないと。
「それにしても……お前のその姿はなんなんだよ! 他の奴らと同じ強化外骨格でもなければ、俺みたいなヒーロースーツでも無いとかなんなんだよ!」
「そりゃ、俺のはオリジナルな上に俺専用に改良しているからな。よく言うだろ〝原点にして頂点〟って」
こんな事を言い合いながらも、俺達は空中で高速移動をしながらの〝模擬戦〟を行っている。
シッ! と、両手に持つ〝刀〟で薙ぎ払うと、ヒーロー君はヒーローセイバーを盾にしながらガード。しかし、俺の刀はかなりの特別製で、ガードをした大剣ごとヒーロー君を思いっきり〝弾き飛ばす〟ことぐらい余裕で可能だ。
……まぁ、本気でやれば〝ヒヒイロカネ製の武器〟だろうが、真っ二つにできる武器なんだけどね。
「……くぅ、その〝刀〟もおかしすぎるだろ。明らかにスペックが高すぎる! それにだ! 〝黒〟はずるいだろう! 〝銀〟とならんで、ヒーローモノでは単体最強格のお約束キャラのカラーじゃねーか!!」
「開発者兼テスターの持つ装備がおかしいのは世界の常識じゃないか? 試作機なんて金を掛けまくって異常なスペックで作るのは当然だろう」
ぎゃぁぎゃぁと叫びながらも、怯まず突撃してくるヒーロー君。……思うんだが、彼はドMなのだろうか? 装備のスペックが明らかに違うと分かっているのに、それでも滅気ずに突き進んでくるとか。いや、それだけ〝ヒーロー〟という名前に引っ張られているのかもしれないね。
たださ、俺だって頑張っているんだよ? 連日連夜開発のラッシュ。皆の要望を聞いて、ソレを実物に落とし込みつつ、俺自身のレベリングだって怠っていないんだ。
最近では専ら〝錬金ロボ〟が俺のメインパワーだと思うような動きを見せていた。それは事実だ。最終決戦兵器として、しっかりと仕上げておく必要があるから。
ただそれでも、俺が〝錬金ロボ〟に乗って戦うだけで終わらせるはずが無いじゃないか。
「この〝強化外骨格〟の性能に体を馴染ませる為に、どれだけ地獄を見たと思う? オートパイロットモードで〝井戸のダンジョン〟のモンスターをどれだけ狩ったか……筋肉痛やソレによる熱等で眠れない日だってあったんだぞ」
「お……おぅ。てっきり開発だけしかしていないと思ってた。なんかすまん」
あ、どうやらクラスメイトも獣人も、それに俺の味方をしていたエルフ達も全員が全員ヒーロー君と同じ考えをしていたらしい。え、マジでそんな事をしていたの? みたいな表情をしている。
「開発者である俺が、自分で使えないものを作って、ソレを違う人に使わせるなんて真似は出来ないからな。だから、そういった意味ではブラスミさんも俺と同じ様に激痛で苦しんでるぞ?」
俺がそう告げると、全員の目がブラスミさんへと移る。そして、そんな視線を受けたブラスミさんはと言うと……実に遠い目をしながら空を眺めていた。きっと、あの激痛を思い出しているのだろう。
「だから、俺やブラスミは〝ヒーロースーツ〟の〝リミッター解除〟にも耐えられるんだよね」
「マジカ……アレを使った後は数日の間寝たきりになるんだけど」
だろうなぁ。体も魔力も全てがスーツの性能に追いつかないだろうから。ただ、その状態にも何時かは慣れる。何せ俺やブラスミさんが実際に慣れたからね。
駄弁りながらも、俺は背中から生えている〝クロス・スラスター〟に魔力を送り込み、高速移動をしつつヒーロー君へと接近。
今度は左から右へと薙ぎ払った後、左手を刀から外し、ヒーロー君へ思いっきり貫手を放つ。
ただ、その貫手は途中で変化。俺の左手は義手だ。それも自由自在に変形する事が出来る義手。そして、その義手には以前に取り込んだ〝骨喰〟が仕込まれている。となれば……。
ヒーロー君を襲う貫手は、その姿を〝骨喰〟へと変化させ、更にはどこまでも伸びる〝槍〟のような貫手となる。
「で、俺のこの〝強化外骨格〟と〝刀〟だっけ」
「待てぃ! この貫手! これも異常だから!!」
ヒーロー君はそう叫びながら、後方へと高速で移動しながら貫手を回避しようとしては、追ってくる貫手に対して、まるでコントの様な回避劇をしてみせた。
「大げさな回避だなぁ」
「刃物の蛇かよ!! それに、払っても払っても手応えが全くないんだが!?」
そりゃ、ベースの1つはスライムだからなぁ。切断が出来るワケがないんだよな。
「それに! 俺の〝ヒーローウィング〟より性能が良すぎ! 何そのX状のウィング!!」
「Xの1本1本が独自の推進力を持っているからね。かなり自由に移動をすることが出来るよ。っと、それでさっきの話だけど……」
俺の〝強化外骨格〟は、その見た目が和風の甲冑をベースにしたロボみたいな感じになっている。そして、頭装備はロボっぽい狼の仮面みたいなモノ。……因みにこのデザインを考えたのは、主にアルと雪さんと七海さん。うん、俺の考えは1つも入っていなかったりする。
一番近いイメージはなんだろうか。サイバー忍者を武者っぽくした感じ? になるのかなぁ。参考資料になりそうなのがちょっとパッとは思いつかない。
そして、ロボ狼っぽいお面については……雪さんが全力で推したから。ま、俺のアイテムポーチに彼女は狼のモチーフを刺繍していたしね。
後は何故に和風甲冑っぽいのがベースなのかというと……それは、この〝刀〟が理由だったりする。
「この刀はボスドロップをベースに、ヒヒイロカネやオリハルコンにドラゴン素材などで改造をした物で、銘を〝獅子王レプリカ・改〟と言う」
そう、いつぞやの鵺戦時にドロップした刀だ。ただ、この刀……俺達のPTでは装備したとしても〝刀〟として使える者が居なかった。だから扱いとしては〝バフ〟を振り撒くだけの魔導具だったんだよね。
ただ、ここで〝強化外骨格〟なんて錬金人形をベースとした〝魔導装備〟が誕生した。……いや、生み出したのは俺だけど。
そう、この〝強化外骨格〟を使えば、この〝刀〟も十分に使える〝武器〟にする事が出来るようになったんだ。
そしてまた、とても美味しい話なんだけど。
バフを振り撒く能力。これを〝俺〟と何故か〝アル〟にも掛かるんだよね。だから、恐ろしい話でもあるんだけど! 〝強化外骨格〟を装備している俺には、そのバフが重ね掛けをしている状態になっているんだ。
「お陰で、体に掛かる負担も倍になるんだけどね!」
〝手〟に戻した義手で再び〝獅子王レプリカ・改〟を握り、再びヒーロー君のヒーローセイバーと打ち合う。……本来であれば、日本刀なんて打ち合ったり、鍔迫り合いなんかはするものじゃないが、そもそもの素材が素材だし魔力を刀に通す事で刃毀れだの刀身が折れるなどを気にする必要がない。
なので、物語のような〝魅せ場〟となる戦闘が自由に行える。
「それにしても、本当にいくら獣人やエルフに〝どっちが強いんだ?〟って言われて、なんで乗っちゃったかなぁ」
「少し前にも言ったけど、子供達の方が興味津々だったからね。俺も良い所を子供達に見せたかったし?」
良い所……見せられているのか? ぶっちゃけ、君の良い所は既に神核持ちのスライム戦で見せたと思うんだけど。
「ソレが有ったから余計に、この島の管理者代理をしている君と俺、どちらが強いかが気になったみたいだよ」
あぁ……ちょっとヒーロー君のプロデュースが成功しすぎちゃったって事か。確かに、俺は直接の戦闘力を其処まで皆に見せてこなかった。その反面、ヒーロー君は〝とても見栄えが良い戦闘〟を見せたからね。
そして、だからこそ、獣人達がヒーロー君の方が強い! と盛り上がり、逆にエルフ達は彼らをルーツに持つ俺を持ち上げ……言い合いをしている最中に子供達も乗っかってしまい収拾がつかなくなったと。そういう訳か。
「そもそも、本気で戦う前に俺が命令を出したらヒーロー君はただのトラッパーに戻るってのに……」
「……あっ」
おい。ヒーロー君もその事を忘れていたんかい! そもそも、強化外骨格をベースとしたヒーロースーツには魔導AIが仕込まれていて、そのAIを総括しているのはアルだ。そして、そのアルの主人は誰よ? 俺だよ! だから、俺が、AIに機能停止命令を出せば、ヒーロースーツは完全にフリーズするんだからな?
たく……なんでヒーロースーツを着ている本人がその事を忘れるんだか。
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