閑話・畠山とその部下
どれだけ証拠となる物を残さないようにしても、人の目が沢山ある以上は証人が出てしまうのも当然の話。
もし、その証人達の口を塞いだとしても、彼らが〝軍人〟という国の機関に所属する者である為に上への報告を行うことまでは阻止する事が出来ない。……そもそも、彼らの口を塞ぐような真似を景達はしていないのだが。
そしてまた、現状まだまだ本当に自分たちの事を隠したいのであれば、姿を現さないのか、もしくは目撃者を全て消すべきではある。
目撃者を消す? それも、離島で育った軍人達を?
物事の流れを考えると、そのような選択はそもそも景達には無いわけで。なので今、景達との橋渡しをしている畠山に襲いかかっている現状は当然の結果と言える。
「あぁ……胃が、胃が痛い……」
「局長。いつもの薬はもう無いのですか?」
部下から薬の事を言われた畠山は、ゴソゴソとポケットの中を探り薬を入れているケースを取り出す。そして、そのケースを開け……。
「しまった……補充しておくのを忘れていた」
「あぁ、最近は忙しかったですからね」
「そもそも、忙しくない日々なんて無いような?」
部下から哀れみの目で見られながらも、ケースに薬を補充するべく自らのデスクに備え付けられている薬品箱を開け、中に入っている薬の数をチェックする畠山。
チェックをしながら、移動用にと持ち歩いているケースに薬を補充しつつ、薬の残量を見て「はぁ……」と深く溜息を零した。
「最近、薬の消費量が激しい」
「世界中で異常気象が起きていますからね。そこに来て、今回の事件ですから……板挟みお疲れ様です」
「俺達は自衛隊からの情報等を纏めつつ、必要になりそうな物や事を室長に聞くだけですけどね。ただ、室長は上とのやり取りがありますからねぇ」
今もまた、畠山のメールボックスには〝あの船や仮面の男はなんなんだ!〟等の連絡が大量に入って来ている。
内心、全てを語れる訳が無いだろう!! と思いながらも、畠山は丁寧にメールの返信をこつこつと行っているのだが……相手がソレで納得するはずもなく。
「折返しのメールがうざい。しかも中には〝船を強奪しろ!〟なんてメールもある」
「そのメールの主は馬鹿ですか? 話を聞いているだけでも、絶対に手を出してはいけない相手だって分かる内容じゃないですか。自殺願望でも有るんですかね」
「ただの馬鹿だろ。局長、それ何処の誰からのメールです? 最悪、特殊部隊の人にそのメールを横流ししてしまうのも有りじゃないですかね」
「……そんな事をしたら、メールの主が明日には行方不明になる可能性があるんだが?」
「それが目的ですけどね~。そもそも、国と国が滅びかねない事をしようとしている相手。どっちを選ぶかって言われたら……ねぇ」
「外ではノーコメントですけど、此処には他の人なんて居ませんからね。勿論、その馬鹿1人が居なくなれば良いって判断をしますよね」
なんとも物騒な会話である。あるのだが、彼らは島や異世界及びモンスターの対策として集められた人達で、当然だが〝離島〟での〝戦闘訓練〟も経験済みだ。
だからだろうか? 他の者よりも〝異世界〟や〝モンスター〟に対する警戒心も高い。そして、そうである以上……鈴木という窓口が有るとは言え、その異世界やモンスターが最初に現れた〝島〟や〝島の者〟に対しても、それ相応の警戒心は抱いている。
また、異世界に直接行ったであろう〝帰還者達〟とも接触しており、様々な会話をしてきている。そして、その会話がより一層〝島〟に対しての扱いを最重要なモノとして考えるようになっていたりする。
「帰還者達ですら島の技術が異常だと言っていましたよね」
「えっと、ホバーシップにパワードスーツと空を飛ぶボードでしたっけ……魔法であんな事が出来る事に彼らも驚いていましたね」
聞けば聞くほど異世界にも無いのだという話に、島に対する扱いはどんどんとハードルが上がっていく。
そして、そうである以上、島や島の者や物に手を出そうとする者達に対して、過剰反応をみせてしまうのも仕方の無い事。
「メールの主には抗議のメールを送りつつ、他の者達に対してメールの主に警戒するよう一報を入れておくとしよう……最悪、特殊部隊の者の目に入るかもしれないが、そうなったらそうなったで彼の命運は尽きていたという事だろう」
「……それ、間違いなく特殊部隊の人がメールを見るってフラグですよね」
さて、どうだろうな。なんて目をしながら遠くを見つめる畠山。実に投げやりである。
「国外からの連絡も大量に来ているんだぞ? このままだと胃のダメージどころか過労死しかねん」
「防衛大臣は大臣で、離島に行かせろ! と何度も訴えて来ていますしね」
「……あの人は大臣職を降りて現場復帰した方が良いんじゃないか?」
「ともあれ、このお手紙ラッシュも当分の間は続くだろうが、その内収まるはずだ。鈴木氏の話によると、あの船を浮かせていた物だが、それの量産をとある場所で行うらしい」
おぉぉ! と、部下たちから歓声が上がった。
それもそのはずで、そのうち空を飛ぶアイテムが世に出回るのであれば、この忙殺されそうな状況からも開放され、自分たちも話に聞いた〝空を飛ぶボード〟などに乗れるかもしれない。そう考えるだけで、彼らの元気は一気に回復していく。……勿論、精神的な面だけだが。
「局長。ここは島との交渉を常に行っているということを利用して、俺達が優先でそのアイテムを手に入れる事が出来たりしませんかね?」
「それぐらい特権があってもいいですよね。これだけ忙しいわけですし」
「それはどうだろうな……ただ、鈴木氏が言うには〝空を飛ぶ車〟の開発もしているらしいぞ? あ、因みにコレはここだけの話だからな」
「分かってますって。でも、空を飛ぶ船があるという事は、車があっても当然ですよねぇ」
ボードも良いが車も欲しい。そんな事を考える畠山の部下達。そして、そんな彼らの動きにより、浮遊物質を使った魔導具が一気に流通するようになるのは……少し先に起こる未来の話。
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