我々は彼らとは違うのだよ! と、言っていそうな気がする
異世界の神やら宗教の問題で、あれやこれやと先読みをしつつ起こるであろう可能性を潰す手段を用意。そんな時間の過ごし方をしている間でも、居住区側は実に平和なようで……。
「え? ヒーローショーに神獣が現れた?」
「そうなの! ヒーローがとぅ! ってキックをしたの。それで、ヴァーちゃんがいっしょにもふってやったの!!」
うん。興奮しすぎて内容が全く理解出来ない。いや、多分こうだろうというのが有るといえば有るんだけども。
恐らくこういう事だろう。
ヒーローショー最大の見せ場である、ヒーローによる決めのシーン。そこで大技であるド派手なジャンプキックを放ったのに合わせて、突然会場に神獣(犬)が現れヒーローの蹴りに合わせて肉球パンチでも繰り出した……という事だろうか。
もしその動きが、ヒーローの蹴りとX字になるような動きを見せていたら、それはもう演出としてはかなり盛り上がるのではないだろうか。
「いやいや、それでもだ。神獣達って大人の前に出るのは嫌がっていなかったか?」
「んー……子供が沢山いる場所だったから、なんかノリで現れたとかではないかしら」
……あり得る気がする。
神獣達が子供の事が大好きなのはもはや公然の事実。
そしてそれは、人の子とか動物の仔とかは関係無しに、ほぼ全ての生き物の子供が大好きだというもの。そんな彼らの行動の中には、巣から落ちた鳥の卵を助けて孵化させたなんて話もあるらしい。
種族問わず。迷った子や捨てられた子の面倒を見る。そんな姿が異世界でも目撃されていたらしい。ただし、子供達の証言だけではあったそうだが。
居住区に居るエルフや獣人の大人達に話を聞くと、とても懐かしそうな目をしながら神獣との話をしてくれたりする。ただその目には若干の寂しさも含まれていたりするのだが。
ただ、当時に出会えなかった子も居るわけで。基本的にはそんな人達に配慮をして神獣に遭遇したなんて話はしない。例外があるとすれば、実際に目撃した子供達か腰の曲がったご老人達ぐらいだ。
まぁ、異世界で出会えるとすれば、それは基本的に〝森で迷子になった〟とかそういう時ぐらいだろうからね。大人が居るだろう人里にまで、神獣達が入ってくるなんて事はないだろうし。
だがしかし、居住区ではそういった異世界の法則からしてみれば実に異常と言える事態が起きているという事になる。
「明らかに〝大人の目〟もある場所なんだよなぁ」
「大人の目が気にならないほど興奮していたのかなぁ?」
「それだとすっごい間抜けじゃん」
「……ん。混ざったから」
エリカさんの言う〝興奮していたから〟ってのもありそうだけど、なんだか雪さんの言う〝混ざったから〟ってのもありそうな気がする。
神核を受け継いだというのと、地球に来て十二支という概念が入り込んでしまった結果。神獣としての特性が少々変化したのかもしれない。
子供が好きというのは維持したまま、人前に出るのが平気になった。そんな可能性があっても良いんじゃないかな。
「とは言え、なんだかお騒がせな子達になりそうなんだけど」
「神獣を神聖視している獣人さん達からしてみたら、おちゃめ過ぎるからって事でお披露目はしないことにしたんだったっけ」
だが今の神獣達だったら、自分達からその姿を晒していく。そんな未来が見えるんだよなぁ。てか、イッヌに至っては既にその姿を晒した後なんだよね。
「えっと、エルフや獣人の大人達の反応は?」
「今のところは悪く無いじゃん」
「どちらかというと、子供達を喜ばせる為に姿を現してくれた! って盛り上がってたみたいよ」
お披露目を行うのは止めたけど、それは俺の杞憂だったか? いやでも、それは小さい子供達の親だからかもしれない。もしかしたら、頭の固い人や歳を重ねて更に神聖視しだした人達の評価は違うなんて事もありえる。
「孫や曾孫の反応に嫉妬しているそうよ? 自分達も今一度その姿を拝見したかった!! とか、幼い日の時のお礼がしたかった! と言った感じで」
「獣人たちは実にノリが良いじゃん」
「……ん。皆で集まって報告会」
マジか。マジなのか……いやでも、フェルみたいに遠い目をしてしまった人も居るのでは?
「えっと、それは神獣に会った事がなくて、周りから常に〝神獣に感謝を〟と教えられていたからで……なんかもっと、尊い感じなのかと」
「フェルくん達の世代が、そんなイメージだけを描いていたって感じかな?」
「かもしれないです」
あー……もしかして、神獣が卵化していたという事を考えるとだ。
フェル達の世代では神獣に会ったことが有る子が全く居ないのかもしれない。そして、親や祖父母から聞いた〝神獣〟の話だけでイメージを膨らませすぎた。そんな感じだろうか。
後は、地球に来たからというのもあるかもしれない。
何せ基本的な話ではあるけど、現状の地球は〝海〟を除くとモンスターが生息している場所なんて無い。島や離島のモンスターは島の機能で管理されているしね。
となるとだ。神獣達が〝目を光らせる〟といった行動をとらなくても済む。そしてそうなると、異世界に居た時よりも好き勝手が出来るわけで。
「役目を忘れて子供達と遊ぶ……か」
「寧ろ、今はソレが役目なのでは?」
なんだろうなぁ。少し前に異世界人の狂信者が! とか、そんな彼らが祀る神が!! なんて頭を悩ませていたのを考えると、この島に居る神獣達がドレだけ微笑ましいというか、尊いというか。
すり減った神経が癒やされるのを感じるなぁ。
「でね! でね!! つぎはフォゥがクーちゃんにのってとうじょうするの!」
「いや、流石にそれは止めましょうね」
ソレをやったら大人達が発狂するんじゃないか? 子供達は……まぁ、次は自分も! と言った感じで主張してくるだろうけど。
あ、でも、獣人達はノリが良いんだっけ? もしかしたら大人達も、流石に背に乗せて欲しいとは言わないと思うが、触れさせて欲しいなんて言い出すかもしれないなぁ。
そして、フォゥ達の世代がきっと遠い目をするんだろうな。……神獣や大人達ってこんな人達だったんだと。ま、それはそれで、良い刺激にはなりそうだね。
しっかし。本当に居住区の人達は平和を謳歌しているなぁ。その様子をこうして聞かされると、居住区を用意した者としては誇らしいものがあるかな。
ま、フォゥの笑顔が一番の報酬と言った所だろうか。あぁでも、これには〝神獣〟というファクターがあったからこそでもあるか。これは、彼らにはもっと気ままにもふもふとしていられるようにしておかないとだな。
「もふもふの一言で片付けてられても意味がわからないわよ」
……毛艶が最高の状態を維持出来るように食べ物やブラシなど、良いものを取り揃えておかないとだ。
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