表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/207

第三章 アハトの冒険

 時は少し戻り、ジークとアイリス、遅れてブランが部屋から出て行った頃。

 場所はアルス――廃屋の一室、ベッドの上。

現在、アハトは身体の動き具合を確かめていた。


(悪くはない……ですね)


 無論、万全とは言えない。

 さらに、ジークの言う通り体力はまだまだ回復していない。


(けれど、この程度回復したなら、もう動くことも……戦う事もできます)


 ミハエルから一旦身を隠し、身体の回復を図る事はこれで成功したともいえる。

 しかし、そもそもの目的は何一つ達成できていない。


(きっと、地下実験施設では今も、人々が助けを待っています。それにミハエルを倒し、この街を救わなければ)


 急がなければならない。

 こうしている間にも、彼等がミハエルの実験に使われてしまうかもしれない。

 そんな事は絶対にさせられない。


「それでね、その時にジークくんってば……アハトさん?」


 と、ふいに聞こえてくるのはユウナの声。

 アハトはそんな彼女へと言う。


「す、すみません。少し考え事を、ぼーっとしてしまっていました」


「ひょっとして、まだ怪我が痛む?」


「いえ、怪我は本当に大丈夫ですよ。今もこうして、おまえが回復魔法を使ってくれているおかげです」


「それならよかったよ!」


 ぱっと嬉しそうな様子の表情をするユウナ。

 ユウナは本当にいい少女だ――冒険者とは思えないほどに、まっすぐな瞳を持っている。


(だからこそ……というのも、ありますね)


 アハトは先ほどから考えていたのだ。

 それはジークが、この部屋を出て行くときに言った言葉について。

 すなわち――。


『アハト、なんにせよお前は少し身体を休めろ。そうすれば次――お前が地下実験施設の住民を助けに行くとき、俺達も付き合ってやる』


 任せられるわけがない。

 当然、ジーク達の力を軽視しているわけではない。

 ジーク達の力を借りれば、住民達を助けられる可能性は格段にあがる。

 それほどまでに、ジークの力は絶大だった。


(しかし、本当にジーク達を頼ってしまっていいのでしょうか?)


 答えは否だ。

 ジーク達は本来、この街とは無関係。


 そもそも彼等に、今日会ったばかりのアハトを助ける義理など存在しない。

 そんな彼等を、危険に巻き込んでいいはずがない。


(そうです、そんな事はわたしの正義が許せない)


 それに先ほど思った事がある。

 それは――。


「そ、そんなに見つめられると、照れるんだけど……」


 と、なにやらもじもじしているユウナ。

 アハトはこの少女を特に、巻き込んだりしたくなかった。


 どうして、彼女がジークと行動を共にしているのかは不明だ。

 けれど、アハトの目に映るユウナは、どう見てもただのか弱い女の子。


(回復魔法は使えるようですが……少なくとも、魔王と行動を共にするような大いなる力も、宿命も持っていないはずです)


 そんな純粋で優しいユウナに、ミハエルという醜悪を近付けさせたくない。

 方針は決まった――あとは行動あるのみだ。


「ユウナ。頼みがあるのですが、聞いてくれますか?」


「うん、もちろん! あたしに出来ることなら、なんでも言って!」


 と、相変わらず可愛らしい笑顔を見せてくれるユウナ。

 アハトはそんな彼女へと言う。


「実は少し喉が渇いてしまいまして。外の井戸水でいいので、持ってきてもらえると助かるのですが」


「そんな悪そうに言わなくていいよ! 今のアハトさんは、あたしの患者さんなんだから! 大丈夫、あたしに任せて――それじゃあ、行ってくるね!」


「はい、本当にごめんなさい」


 その好意を利用するような真似をしてしまって。

 アハトが心の中で、そんな事を呟いている間にも、ユウナは部屋の外へと出て行く。


「…………」


 ジーク達が戻ってくる気配はない。

 ユウナもこれで、少しの間は戻ってこないに違いない。

 要するに現在、アハトはこの部屋に一人。


「本当に……ごめんなさい」


 アハトは再度呟くと、ベッドから静かに起き上がるのだった。


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。


あと……。

五月一日発売の『常勝魔王のやりなおし』2巻を予約してくれたりすると、ものすごく嬉しかったりします。

そしてこちらも、すでに予約してくれた読者様はありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ