第二章 アハトの事情8
時は少し後。
場所はアルスの廃屋――アハト達が居るのとは、また別の部屋。
先ほどの子供部屋と違って、夫婦が使っていたと思われる大きなベッドのある寝室だ。
「最初に聞いておきたいんだけど、いったいどういうつもりだ?」
「そんなの決まってるじゃないですか♪」
と、ベッドに腰掛け、先端ハートの悪魔尻尾をふりふりしているのはアイリスだ。
彼女は楽しそうな様子で、身体を揺らしながらジークへと言ってくる。
「私は魔王様とエッ!な事がしたいだけですよ! さっき言った通り、魔王様が約束してくれてから、ずっと楽しみにしていたので!」
「いや、それはわかってる」
「やだも~~~っ! わかってるのに、女の子の口からこんな事を言わせるなんて……魔王様は本当にいけずですね♪」
「だから、そうじゃない。そもそも、俺が聞いている根本が違うんだよ」
「はて……なにか、聞かれる様な意味深な行動をしましたっけ、私?」
ひょこりと首をかしげているアイリス。
どうやら、今回ばかりは本当にわかっていないに違いない。
故にジークは再度、詳細と共にアイリスへと質問する。
「どうして、あんなにすぐアハトと仲良くする気になったんだ? 人間嫌いのお前が――それもミアそっくりの顔のやつと」
「あは♪ 大人になったんですかね、私!」
「なったとしても、いきなり握手するような性格じゃないだろ、お前」
「え~~、別にたいした理由じゃないですよ?」
その理由が気になるのだ。
もっとも、アイリスのことだ。
どうせアハトを油断させたところで、色々といかん事をしようとしているに違いない。
と、ジークがそんな事を考えた。
まさにその時。
「ジークくん! 大変! アハトさんが!」
などと。
血相変えたユウナが、部屋へと飛び込んで来るのだった。




